
運命のひと 03
「炭治郎、今日さぁ」
「ごめん善逸!」
「いやまだ何も言ってねぇわ! 炭治郎ぉぉ、せめて最後まで言わせてくれよぉぉ! 付き合い悪いよぉぉぉ!」
鼻水を垂らしながら抱き着いてくる善逸の頭を撫でて、「明日ならいいか? 予定空けておくよ」と言うと渋々離してくれた。
そうしている間に、視界の隅にハルが見えて、自然と顔が綻んだ。
善逸がギロリと睨んで「約束破るなよっ!」と言い残し、廊下を走って煩くしている伊之助の所へと行ってしまった。
教室に残っている他の生徒も、炭治郎とハルが隣に並ぶ事も、向かい合って笑い合う事も、もう見慣れているであろう。
二人が付き合いだした後、その噂は一気に広まったが、隠すことなく炭治郎自ら周りに伝えていくことで、好奇の目は少しずつ消えていったのだ。
「さ、行こうか。ハル」
「うん」
ハルの手を握ると、顔が赤くなっていく。
温かくて幸せな匂いを感じて、炭治郎の胸は熱くなった。
◇
ハルの部屋は、女の子らしい部屋だった。シンプルなのかと思ったが、ファッション雑誌も置いてあり、聞いてみたら「最近ね、勉強してるの」と恥じらいながらも答えてくれて、それが自分の為なのかと思ったら余計に愛おしく感じた。
「かま……た、炭治郎!」
「ハハ、まだ緊張してるのか」
「うん、緊張する……でもね、なんか…名前で前にも呼んだことあるような気がして、しっくりくるの。何でだろうね」
その言葉に、胸が熱くなる。
ハルには前世の記憶はないはずなのに、細胞の記憶なのだろうか。恐らく前世の記憶が微かに残っているのだ。
別に前世ことは知らなくていい。こうして、今世でハルと出逢えたのだから。
「ハル」
隣に座る彼女の手の上に、そっと自分のを重ねた。
名ばかりになりそうなテスト勉強だったけど、せっかく二人きりになれたのだからと、抑えていた欲を少しだけ解放した。
「好きだよ、ハル」
「私も……炭治郎が好き」
どちらともなく近づいた唇が優しく重なり合う。
長男だし、色んな事に我慢することには慣れているし苦ではないのに、ハルのことになると無理なんだと知った。
この甘い味を知ってしまったら、もう戻れない。
「もう、離さないから」
恐る恐るベッドに押し倒すと、ハルが微かに笑った。
ハルから聞こえる緊張と期待の匂いに、甘さが加わって炭治郎の脳を刺激する。
二人の重みでベッドが沈み、初々しくも甘い吐息が部屋いっぱいに広がっていった。
―Fin―