果てしない平行線
ひざしさんと付き合い始めて2週間が経った。毎日じゃないけど、ひざしさんが
ラジオ終わりや仕事の合間に家に来てくれたり、先週の日曜日は彼女になって改め
て 【デート】にもお出かけした。連絡は今まで通り最低1日1通はとっているし、
何を言いたいかというと、最高で最大級に幸せなのである。
「何よ、調子良さそうじゃない」
「ひゃあい!」
思い耽って無意識にだらしなく口元が緩んでいると、耳元で声が響いて思わず大
きな声が出てしまった。隣のデスクの同期が何事だという目線で振り返って見てき
たが、すぐに私のオーバーリアクションなだけと気付くと気にせず前を向いた。月
末前のオフィスはみんなが忙しそうにしていて、パソコンのキーを叩く音が個人の
会話よりも目立っている。バクバクと煩い心臓を息を吸いながら落ち着かせてから
後ろを振り返ると、驚いた様に目を開く先輩が立っていた。
「もう先輩、背後にいきなり立つのやめてください・・・」
138 「あんたがボケーっとしてるからでしょ」
先輩は呆れたように溜息を吐き出して、さぞお間抜けな顔をした私の頭を持って
いた書類の束で叩かれた。そのままその書類を私のデスクに置いて、まとめておい
てと指示を受けた。頷いて一枚手にとって目を通してみると、最近社内でも話題に
なっ いる案件のプレゼン案でマーカーや付箋が所々についていて殺風景な書類を
彩っていた。
「思ったより落ち込んでなくてよかったわ。プレゼントマイクは卒業した?」
集中して読み込んでる最中に、いきなり出てきた意中の名前にドキリとした。思
わず反射で勢いよく顔を上げると、先輩はそんな私の様子に笑っていて額を人差し
指で突かれる。
「アンタ最初ゾンビみたいに出勤してきた時は、何事かと思ったわよ」
「う…すみません・・・」
確かに、最初にひざしさんがグラドルとスキャンダルが発表された時はオーラが
だだ漏れで誰でもわかるくらいの酷い有様だったと思う。周りも触れないで遠回し
に気を使ってくれたし、先輩もプリンをくれたし今思えば本当申し訳ない気持ちで 10

いっぱいで項垂れる。自分の失態に脳内反省会を行っていると、視界の中に白いカ
ップがずいっと侵入してきた。その手の先はやっぱり先輩で、自分の分のカップに
口付けている。
「でも、ヒーローと付き合うのって現実的に考えて大変よね」
珈琲の香りで疲れた脳みそが冴わたる感覚が広がって、小さくお礼を言ってから
カップに口付けようとしたけれど、次の言葉に動きを止めてしまった。
「え、なんでですか?」
「なんでって…だって、何処にいても《ヒーロー》じゃない」
思ったより食い気味な反応の私に驚いたのか、少し身を引きながらもデスクに腰
掛け変わらず珈琲を啜りながら先輩は天井を見上げる。その回答にもピンとこなく
て、眉寄せていると先輩は何か言いたげに口を開くけれど、同じタイミングでゴロ
ゴロと転がる音で遮られた。
「わかりますー!メディアとかファンにバレたら、一般人にとって生活って絶対大
変ですもんね!逆恨みしてストーカーするファンの人とかもいそう!」
140

「大切な約束とかデートがあっても、
一般市民のためにいつでもヒーロー活動しな
きゃいけないだろうし、恋人なんて守る物の中のほんの一つなんじゃない?」
隣のデスクの後輩と同期が椅子のまま体をスライドさせて私たちの方にやってく
ると、頷きながら話に参戦してくる。多分、話が聞こえてきたから集中力が切れて
しまったんだろう。うんうんとオーバーにリアクションして頷いて、2人は顔を見
合わせて肩をすくめて芝居がかった様子でわざとらしく溜息を吐き出した。
「そう考えると、サラリーマンとかの方が無難ですよねぇ」
「付き合うだけならまだしも、結婚とかだとねぇ」
「誰かを救うために、恋人が怪我したり死んじゃうなんて、私耐えれないです!」
お互い共感しあって、まるで近所のおばさま達の井戸端会議のように盛り上がり
始めている。私が参戦しないでいると、ふと後輩が思い出した様に自分のチョコの
お菓子を私たちに配ってくれた。コロンと手のひらに転がるチョコを見ても、すぐ
に喜んで食べれなかった。
「ま、私たちには一生関係のない話でしょうけどね」
「もしもあるなら、ベストジーニストさんがいいなぁ」
141

「オールマイトって恋人とかっているんですかね?」
「はいはい、雑談はその辺にして仕事に戻るわよ」
勝手に盛り上がり始めた2人を珈琲を飲み終わった先輩が手を叩いて制した。散
れと指示されて渋々デスクに戻っていく様子をただ見てると、先輩も私の肩を軽く
叩いてから立ち去ってしまった。
そうか、ヒーローと付き合うって、そういう事なんだ。考えてなかったわけでは
い。特に、彼はラジオDJとしても活躍しているから、私みたいにそっち枠のフ
ァンだっているはずだ。ひざしさんがオンオフ切り替えているからあんまり外で一
緒にいても気付かれないけれど、きっと私みたいなコアなファンやマスコミの人だ
ってすぐわかるはず。そう考えると、この間デートしたのだってスキャンダル後だ
から軽率な行動だったかもしれない。 付き合い始めたからって、浮かれてた。
「…美味しい。」
悶々と考えていると珈琲の味が余計に苦く感じて、チョコの包み紙を破いた。手
の中のチョコは、少し周りが体温でじんわりと溶けていて口に放り込むと余計に甘
Th
142

い。そうしていると携帯が震えてメッセージの通知を知らせていて、画面を開くと
まさに今考えている人からだった。
『今日はテストの採点があるから遅くなるかも』
まるで、今の会話を聞いていたみたいなタイミングで愛おしい彼の名前と言葉が
画面に表示された。 一瞬、返信に悩んだけれど、少し遅れて指を滑らせる。
『ご飯食べてきますか?お家で食べます?』
今日はひざしさんが私のお家に来る予定の日だ。まだ、ひざしさんのお家には行
ったことないけど、それこそマスコミなんかにこんな一般女性がお宅訪問したなん
てバレたら大変なんだろうなぁ。そんな事を頭の片隅で考えながら返事を待ってい
るとすぐに通知が届いた。
『迷惑じゃなければ家で作ったご飯が食べたいんだけど、いいか?いつも仕事終わ
りにサンキューな!』
考えれば考えるほど、モヤモヤは深く黒くなっていく。そんな私の心とは裏腹
に、ひざしさんは可愛いスタンプと一緒に可愛らしい言葉をくれる。ちょっと前の
私だったら、キュンキュンしてだらしなくにやけてしまっていたかもしれない。
143

プロヒーロー、名門校の教師、そしてラジオDJ。彼はみんなの注目の的で、私よ
り高くて遠いところにいる存在。ラジオから好きになったから、ヒーローについて
あんまり考えた事なかったけど《プレゼントマイク》として活躍してる時は、彼は
きっと優しいから自分を犠牲にしてでも沢山のものを守るんだろう。気持ちを振り
払いたくて、少し冷めてきたコーヒーをグイッと全て胃の中へと流し込んだ。
[......3]
「なんかあったか?」
「へ?」
普段は平気なのに、チョコレートを食べた後だから後味も凄く苦く感じた。胃に
錯覚だろうけど重たさを感じて、まるで我儘な私の心みたいだなんて思えた。
仕事終わりで家にきたひざしさんと夕飯を食べていると、急に問いかけられて思
わず変な反応で返してしまった。ただ普通にご飯を食べていただけなので、何の事
144

かわからなくてパチパチと瞬きをして返した私の様子を見て、ひざしさんは困った
ように苦笑いして一度箸を置いた。
「なんかさ、仕事中に嫌なことあったとか、今日星占いが最下位だったとか。」
「えっと、特には…」
「そうか?元気ねぇなー、と思ってさ」
いまだに質問の意図がわからないでいる私に、ひざしさんはテーブルに肘をおき
頬杖をついてまるでクイズのヒントを出すようにもう片方の指先を折りながら言葉
を紡ぐ。そこでやっと自分が仕事場で抱えたモヤモヤが顔に出ているのに気付い
た。私が答えに辿り着いたのを悟ったのか、彼は言葉の続きを待ってくれているけ
ど躊躇って上手く声が出ずに押し黙ってしまった。
「…あんまり言いたくないこと?」
「…ひざしさんの迷惑になっちゃうので・・・」
大人じゃない、子供のような傲慢な感情は彼の負担でしかないだろうから。私も
食べかけのお茶碗をおいて、俯きがちに答えると視界の端に見える彼の長い指先が
コンコンっと私を呼ぶように机を叩いた。おずおずと顔を上げるとひざしさんがそ 46

「きゃっ!」
のまま手招きしていて、立ち上がって招かれるままテーブルの向かい側のひざしさ
んの方へ歩いていけばそのまま手を引かれて体がぐらりと傾いた。
「愛しのハニーが困ってるのに、俺が迷惑なんて言うやつに思う?」
「は、ハニーって…」
まるで海外映画のようなその呼び慣れないそのワードに困惑してしまったけれ
ど、ひざしさんは普段から英語を使っているからなのかスルーされた。それより
も、引き寄せられて腰を抱かれている事の方が私にとっては大事件だ。彼が座って
いるせいもあっていつもの身長差が逆転して、私の胸元にひざしさんの顔があり若
干上目遣いなのがなんともズルい。無意識なのか策略なのか、その様子に意思がグ
ラグラしていたけれど、彼の無言の最後の一押しでぎゅっと抱き締められてしまえ
ば心の中で降参の白旗を上げた。
「…ひざしさんは有名人で、魅力的な人だから私なんか不釣り合いだなー…と思い
まして...」
「・・・なんか誰かに言われた?」

「いや、別にそんなわけでは…」
素直に白状すると、真っ直ぐな瞳に見つめられて言葉に詰まりそうになる。誰か
に何か言われたわけではないけれど、ただ心の底で思っていた自分の不安がまるで
波のように押し寄せてきただけ。どうしていいかわからない気持ちでいっぱいだけ
ど、それはひざしさんも同じようで抱きしめる力を強めた。
「じゃあ俺がこんなに好きで堪らないのに。なんで俺の大切なハニーはそんなブル
ーな気持ちなんだ?」
弱い私が欲しかった言葉を、簡単にくれるひざしさんは本当にずるい。私が一番
自分の気持ちがわからなくて、どう言葉を返していいか見つけられずにモゴモゴと
言葉を濁しているとふと腰に巻きつく腕の力が弱まった。
「…わかった。そしたら、不安になられたら俺が500円貯金するわ」
「え!私がじゃなくて、ひざしさんがですか!!」
呆れて嫌われてしまったのかと思って胸にヒンヤリとした感覚が広がっていたけ
れど、予想外すぎる言葉に思わず大きな声が出てしまった。私がネガティブ発言し
たら罰金で貯金、とかならわかるけれど、それをひざしさんが行うのは少し訳がわ 4

からない。どういうことか理解出来ないでいると、先程まで抱きしめてくれていた 468
両手で頬を包まれた。
「それで、お金が貯まったら美味しいお菓子食べてもらって、美容室に行ってショ
ッピングしに行ってもらう。」
きっと、私は呆けて変な顔をしていると思う。それに加えて、プニプニと両手で
私の頬の肉を寄せたりして感覚を楽しんでいるひざしさんは小さく笑った。その顔
はとても優しくて、眩しかった。
「それで、少しでも君が君を好きになれるようになってもらう。俺はそれだけで幸
せなんだ。あ、あとまた一緒に笑ってもらうのが条件だな!」
彼の意図がわかって、グッと息を呑む。少しでも耐えていないと、緩んだ涙腺か
ら簡単に涙が溢れてきそうだった。頑張って耐えている顔は酷く滑稽だろうに、ひ
ざしさんはそんな顔に近づいてリップ音を控えめに鳴らしてキスを落とした。
「お互い幸せになって、名案だろ?」
折角耐えていたのに、最も簡単に涙は溢れてきて彼の手を濡らした。 暖かい指先
が優しく涙を拭ってくれて、まるでおまじないをかけてくれるように目尻に何度も

からない。どういうことか理解出来ないでいると、先程まで抱きしめてくれていた 468
両手で頬を包まれた。
「それで、お金が貯まったら美味しいお菓子食べてもらって、美容室に行ってショ
ッピングしに行ってもらう。」
きっと、私は呆けて変な顔をしていると思う。それに加えて、プニプニと両手で
私の頬の肉を寄せたりして感覚を楽しんでいるひざしさんは小さく笑った。その顔
はとても優しくて、眩しかった。
「それで、少しでも君が君を好きになれるようになってもらう。俺はそれだけで幸
せなんだ。あ、あとまた一緒に笑ってもらうのが条件だな!」
彼の意図がわかって、グッと息を呑む。少しでも耐えていないと、緩んだ涙腺か
ら簡単に涙が溢れてきそうだった。頑張って耐えている顔は酷く滑稽だろうに、ひ
ざしさんはそんな顔に近づいてリップ音を控えめに鳴らしてキスを落とした。
「お互い幸せになって、名案だろ?」
折角耐えていたのに、最も簡単に涙は溢れてきて彼の手を濡らした。 暖かい指先
が優しく涙を拭ってくれて、まるでおまじないをかけてくれるように目尻に何度も

A
キスをしてくれる。
まるで海外ドラマのワンシーンみたいなその仕草も、大好きな 彼がすると何だって様になって本当にズルい。
「...ひざしさんには敵わないです。」
「オイオイ、まだ俺たち始まったばかりなんだから、こんなんで根を上げられたら 困るんだけどなぁ。」
ようやく涙が止まってきて、小さく口を開くと目の前のひざしさんは楽しそうに 笑う。太陽のように眩しい彼の元だと、私の小さな暗い感情なんて簡単に吹き飛ん でいくようだ。改めておいで、と両手を広げてくれるひざしさんに誘われるままそ ろりと距離を近付けると強い力で抱き締められる。その胸の中はとても暖かくて、 安心して肩の力が抜けるようだ。
「で、貯金箱はどうする?」
私の頭に顎を置いて、ひざしさんが問いかけてくる。もう答えがわかっているよ うな声色に、ちょっぴり悔しくなってその広い背中に両手を回して力強く抱きしめ 返した。
「いらないです。その代わり、また今日みたいにしてください。」
149

顔は見えないけれど、ひざしさんが笑う気配がする。
「お安い御用だぜ、マイスイートハニー」
本当に彼には叶わない。このネガティブになってしまうことも、そして彼の恥ず かしいくらい真っ直ぐな愛情表現にも慣れていかなければと胸の奥で強く思った。
150

「え!」
私の恋人はとても可愛い
「うおっ!どうしたんだこれ!!」
チャイムが鳴った音でいつの間にか約束の時間になっていたのに初めて気付い て、玄関を開ければ待ち人のひざしさんが立っていた。もう季節は冬が訪れていて 扉の外から冷たい空気が暖房で暖まり切った部屋に流れ込んでくる。彼の指先はそ れに負けないくらい冷たくて、短い廊下を温めるように手を繋いだままリビングに 入ると不意に大きな声で叫ばれ反射的に手を離してしまった。
「...あぁ。いや、明日が締め切りなので・・・」
何の事かわからなくて、改めてリビングを見渡すとやっとその意味が理解した。 「......これって、俺のラジオイベントのやつ?」
これ、というのは今回プレゼントマイクのぷちゃへんざレディオが記念イベント の生ラジオをするので、それの応募特典の為に買ったのど飴の袋たちと応募ハガキ が主に机の周りに散乱しているものだった。あまりにも必死に応募ハガキを書いて
151

「ダメです!」
「あ、はい・・・」
いたし、最近こののど飴と共に過ごしすぎて片付けをするものと認識していないく 162
らい日常に溶け込んでいた。自分が思っている以上に、脳が麻痺しているのかもし れない。
やばい、彼氏が来るのに片付けしてない女に思われただろうかと焦って彼を見る と、ひざしさんは引くというよりも何だか申し訳なさそうな顔で床に転がった飴を 一つ拾っている。
「こんな事しなくても、俺がチケット用意すんのに・・・」
その発言に、思わず大きな声が出てしまった。彼には劣るけれど、そんな声を荒 げたところを見せたことないのでボイスヒーローは私の声にビクリと肩を揺らして 驚いたように目を丸くしている。それでも聞き捨てならない言葉は無視できず、座 って机のハガキを一枚取って彼に見せる。
「いいですか、ひざしさん?こういうのは自分が努力して勝ち取って手に入れるか ら価値があるんです。」

小さく笑ってその残りの距離を詰めて額にリップ音を鳴らして軽めのキスをしてく れた。
「そんなにプレゼントマイクの事応援してくれてんのに、気安くあんなこと言っち やってごめんな?」
不意打ちのキスに、ヒュッと喉が小さく鳴る。もう何度もそういうコトはしたこ とあるのに、未だに慣れることはない。至近距離の顔面の良さに何度も首を振って 見せれば、次は唇に触れる程度のキスされてその体が離れていく。
「...だとしても、この量は...」
「うっ......だって、ラジオのメールフォームからだと1人一通だから・・・集めて応募 のやつだと制限ないですし・・・」
しみじみとひざしさんが足元に散らばる飴をわざわざ拾い集めながら苦笑いし た。年々プレゼントマイクのイベントやキャンペーンは倍率が上がってきていて、 ファンだって大変なのだ。極力買ったものは自分で食べるようにしているけど、最 近食べ過ぎて舌がふやけそうになってしまっているので職場の人や前回一緒に行っ
154

私に釣られるようにひざしさんも座って、何故か二人で正座して向き合うような 体制になった。机に散らばったものは書き終えたものもこれから書くものも合わせ て、十枚は超えている。ちなみにこれは今週のノルマで、何なら今月はもう2回投 函は済ませた。
「それに!本人からチケットもらうなんて不正行為じゃないですか!他のイベント に来てるファンに顔向け出来なくて全力で楽しめません!」
「す、すみません・・・」
私の力説に怯んだひざしさんは小さく頭を下げて謝ってくれた。何だか背の高い 彼が一回り小さく感じて、普段見れない綺麗な旋毛を見てやっと正気に戻り彼の体 を起こす為に両肩を掴んだ。
「いえ、私こそ熱くなっちゃってすみません...」
自分でプレゼントマイクオタクだと自負してはいるが、本人に怒ってはどうしよ うもない。肩を少し起こせばゆっくりと体が起き上がってひざしさんと目が合う。 思ったよりも近かった距離にどきりとしていと、それに気付いたのかひざしさんが
153

「だめ、です。」
た居酒屋にもお裾分けした。ボソボソと言い訳のように言葉を並べていれば、ひざ しさんは困ったように笑ってポンポンと頭を撫でてくれる。
「...チケットはあげないから、せめて飴とかハガキとかこの応募に使った分なんか プレゼントするのもダメ?」
どうにかして代償をあげたいのか、首を小さく傾げながら提案されたが申し訳な いがお断りさせていただいた。流石に諦めたのか飴の包装紙を破いて中身を口の中 へ放り投げて、ソファーに移動して座り直すと背もたれに体を預けながらハガキを 一枚手に取ってしみじみと私の字を眺めている。
「いやー、でも改めてこうやって知り合ってるのに仕事モードの時に会うのって照 れくせぇなぁ」
「そういうものですか?」
「うん、そういうもの。」
あの元気で大声でいかにも陽キャの代名詞と言えるプレゼントマイクが照れてい るところなんて想像できなくて、冗談かと思って床に座ったまま見上げて問いかけ 16

れば意外と本当のようで平然と言葉が返ってくる。確かに、普段の格好は地味な普
通のマンションに来るのは目立つので、オフの姿で来ることがほとんどだからプレ ゼントマイクの姿でお話しするのは職場に社員証を届けてくれた時だけだ。もし 当に照れてくれるなら是非とも見たい。によによと思わず緩む口元に気付かれない ように、彼の長い足に抱きつくようにしがみついて膝下に頬を擦り寄せた。
「でも私は会いたいので、頑張ります。」
「こうやって家で会ってんのに?」
「そういうものなんです。」
「そういうもんかぁ」
顔は見えないけれどひざしさんが笑っているのが声色でわかる。頭を撫でて髪の
間を滑る指の感触が心地よい。もう一つイベントに行きたい理由が増えて、ハガキ をあと十枚追加で買うのを一人心の中に誓った。
156

『Yeahー=リスナーたち、聖なる夜に来てくれてベリーベリーサンキュー!今日 はスペシャルな夜にしようぜ!PresentMIC のぷちゃへんざレディオの時間だァ!』 いつもの聴き慣れたイントロと声が、いつもの違って電波越しでなくて直に聞こ える。そしていつもはない黄色い歓声が湧き上がり、外は寒いのにこの部屋は気温 が二度くらい高い気までしてくる。
「うっう...本当神列だ...」
あれから必死にお便りを書き続けて、それでやっと1枠のチケットが手に入れる ことができた。様々な神様に感謝して迎えた今日はクリスマスイブ。ひざしさんは この日に仕事が入ったことを申し訳なさそうにしていたけれど、寧ろそんな大切な 日にイベントを開催してくれて有難うと大声で叫びたいくらいだ。思ったより席は 前から三番目の列でいい席で、ちょうどひざしさんの顔も見えやすい。天を仰いで また心で感謝を呟いてから、一言も聞きのがさないように集中することにした。 「みんな寒かったり体調が悪い時はスタッフに気軽に声かけてくれよ!それじゃ、 まずは恒例のお悩み解決コーナーからだ!」
157

そういうとステージ脇からスタッフさんと思える男性が白い箱を持って走ってや ってきた。今までお便りは事前に打ち合わせとかで読んでるのかと思ったけど、ど うやらその時にならないと知らない仕様になっているようだった。何だか仕事の裏 側を見ているようで、楽しくて心がワクワクと高鳴る。
「それじゃ、一通目だ!「メリークリスマス!プレゼントマイクはクリスマスもお 仕事で大変ですね!ちなみにこの後はデートですか?」おっと!いきなり初めから ぶっ込んでくるお便りだな!残念ながら今日はリスナー達と過ごす時間の方が大切 なもんでね!特に何も予定はないぜ!」
白い箱からクリスマスのイラストが描かれた封筒が出てきて、その中のお便りを 取り出してマイクが読み上げていく。いつもの高らかな笑い声を上げると会場もド ッと笑い声に包まれた。今日はいつもの午前1時からじゃなくて、イベントの為に 夕方から開催されいて今は5時過ぎだ。イベント終了もまだまだ電車が走っている 時間ではあるが、きっと片付けや打ち上げなどで忙しいだろうから特に約束はして いない。私ももう大人だから思春期の少女のようにクリスマス絶対一緒に過ごした い!というワケではないから全然構わないけど、今日はきっと当たり前のように街
158

はカップルで埋め尽くされているんだろう。帰りの満員電車に嫌気がさしている と、次はクリーム色の可愛らしいお便りが箱から出てきた。
「それじゃ、次のお便りは... 「プレゼントマイクはクリスマスプレゼントは何を用 意しましたか?参考に教えてください!」 オイオイ、俺のスーパースペシャルなサ プライズ作戦を邪魔しようって作戦だな?」
次のお便りもクリスマス関連で、やっぱりイベントらしいなと思う。質問におち ゃらけたように返す彼に、また会場からクスクスと笑い声が聞こえてくる。そんな 様子を眺めていると、ふと彼が何か考える様子で観客席に目線をやる。 出口の扉側 から、ゆっくりと見渡すマイクにどうしたんだろうと思っている時に、一瞬バチリ と視線があった。
「んー......実はオーブンが欲しいって言ってたから明日届くように注文してんだ よ。今日は特別だから教えるけど、明日までみんな秘密だぜ!」
一瞬、本当に一瞬のことですぐに目線を逸らされてマイクは内緒話をするような ジェスチャーでリスナーからのお便りに答える。でもその口調がどことなくいつも よりも早口で、何かを誤魔化すような口調だった。
159

「え...そうなんだ・・・」
「あー...」
思わぬ形で知ったサプライズに、小さく声が漏れてしまったけれど賑わっている 会場ではそれは溶けて誰からも拾われることはなかった。気を取り直すように元気 に箱から手紙を取り出す彼はいつもと変わらない様子だけど、夜空のような色の封 筒からお便りを取り出す時の音がマイクに拾われていてスピーカーからカサカサと 紙が擦れる音が空間に響いた。
「次はー...「噂の彼女さんの好きなところはどこですか?」って...何で今日は俺の 質問ばっかりなんだ!俺はみんなとお悩み相談するのが好きなんだぜ!!」
落ち込んだようにガックリと肩を落とす動きで、また会場が笑い声で溢れる。で も私は一緒に笑うことは出来なくて、ドクドクと煩い心臓を洋服の上から抑えなが ら彼を真っ直ぐと見つめる事しか出来なかった。
彼が、ひざしさんが顔を上げる。綺麗にスタイリングされた髪型を崩さない程度 に首後ろをかいて、言葉を詰まらせて唸り声を上げる。そして、また目があった。 きっと気のせいじゃなくて、こんなにたくさん人がいる中でもちゃんと私の場所が
160

わかっているんだと確信した瞬間、その視線は目の前のお便りに戻っていって降参
するように両手をあげてポーズをする。
「沢山好きなところがあって選びきれねぇけど、一番は笑った顔が可愛いところか な。守ってやりたくなるんだよ」
その答えに、キャーッ!と歓声が沸いてそれで会場が揺れたんじゃないかと錯覚 を起こしそうだった。ファンの中で恋人の存在は地雷なんじゃないかと勝手に思い 込んでいたけれど、周りの人たちは楽しそうにしている。横にいる子は多分お友達 と一緒に来ていて、興奮気味にやばいやばいと何やら連呼したりしている。 「これ絶対スタッフの仕業だろ!もう次のコーナーに行っちまうからな!」
「......かわいい。」
その黄色い歓声に慣れないのか、マイクはスタージ端にいるスタッフに文句を言 うとスタッフたちが数名脇から出てきてケラケラと笑っていた。少しして音楽が変 わって、次のコーナーへ移って新しい企画が始まった。
先程の話題が終わっても、ひざしさんの耳がほんのり赤いのがこの距離でもわか る。ライダースジャケットの下はもしかしたら変な汗をかいているんじゃないだろ
161

うかと心配になりながらも、つい本音が漏れてしまった。彼の反応も、先程の台詞 も嬉しくて、じわじわと胸にいろんな感情が溢れて零れ落ちそうだ。
「もうこれがクリスマスプレゼントだな・・・」
思った以上の収穫に、せっかく楽しみにしていたイベントにあまり集中できずに 過ごしてしまった。後日、ネットニュースで《プレゼントマイク・イベント中に恋 人への愛の告白!》というタイトルの記事が早速アップされていたり。
ちなみに、検索ワードが《プレゼントマイク 可愛い》で溢れていて話題になっ たのは小さな事件の一つだった。
162

あなたと共に生きたいのです
「全寮制・・・ですか?」
くださいね」
お風呂上がりにちょうど鳴り響いた携帯を耳に押し当てて、髪の毛に残った水気を タオルで拭き取りながら先程聞いた言葉をそのまま繰り返して問いかける。 『あぁ、まぁ学校も色々あってさ...』
電話先のひざしさんは少し疲れた様子でそう言葉を濁した。学校も仕事も外部に 話せない事もあるだろうから普段から深追いはしないが、彼の様子からして急にそ の決断になるまではきっと色々な経緯があったんだろう。冷蔵庫から冷えた炭酸を 取り出してソファーに座ると、少し行儀が悪いが足をだらんと投げ出した。
『だから悪ィ、ちょっと準備でバタバタするから今週は家行けねぇかも』
「いや、全然大丈夫です!そんな事で謝らないでください!むしろ、無理しないで
『ん、サンキュー』
163

『ありがとな。』
少し携帯を遠ざけて炭酸を飲むと風呂上がりの体は水分を求めていたようでゴク リと喉が鳴る。電話の向こうではひざしさんが申し訳なさそうに謝ってくれるの で、慌てて携帯を持ち直して見えない向こう側に全力で首を振った。それでもやは り気にしてるのか声にいつもの元気がなくて、ソファーの上に姿勢を改めて座り直 してゆっくり息を吸った。
「私は、 ひざしさんを好きなのと同じくらい、ヒーロー活動してる姿や、教師とし て生徒を守る姿のプレゼントマイクも好きなんです」
私を想ってくれて、愛してくれるひざしさんは好きだ。でも、生徒の事を楽しそ うに話す姿や、ヒーロー活動で出会った人々の事を守るところも負けないくらい大 好きなのだ。
「だから、子供たちの事守ってあげてください。」
勿論、全寮制になると会える機会が今までよりも減るかもしれないから寂しいの もある。けれど、それ以上にそれより大切にしてほしいものが沢山ある。精一杯の 気持ちを伝えると、電話越しの彼が小さく笑った気配がした。
164

そういうひざしさんの声はとても優しい。彼のこの声色が本当に好きで、その余 韻に浸るようにゆっくりと瞬きしていると冷えた炭酸のボトルの表面から水滴が伝 ってテーブルに落ちて小さな水溜まりを作っていた。
『今週は無理だけど、月末の日曜日はどうだ?その時期なら落ち着いてくると思う から、生徒たちが問題行動起こさなければオフになるはずだ』
「月末も予定ないから大丈夫です!」
いつも通りの明るい調子に戻ったひざしさんがそう言ってくれるので、携帯のカ レンダーを表示すると真っ白で予定がないのを知らせてくれた。もう予測変換で出 くる彼の名前で予定を入れるとそこにポツンと色がついて、なんだかそれが嬉し かった。お話し上手の彼と雑談しているのあっという間に時間が過ぎて、壁にかけ ている時計はそろそろ寝る時間を知らせてくれている。
『そしたら、月末に。いい夢見ろよハニー』
そうやって甘く囁いて、ひざしさんは電話を切った。いつも彼はまるで海外ドラ マみたいな歯の浮く甘い台詞を言ってくれる。 付き合ってもう一年経ったけれど、 未だにそれには照れ臭くて慣れることはなかった。
165

「...月にどれくらい、会えるかな・・・」
う。
「よしっ!」
ボスンッとソファーに寝転がって、ふとつい本音が漏れた。今だって教師とヒー
ローとラジオと大忙しの彼とは、きっと普通の恋人同士よりかは会えてはないと思
でもこうやって電話してくれるから全く不安や悲しくなったりはないけれど、
やっぱりちょっとだけこの先予測できない分そわそわしてしまう。
ぼんやりと色々考えながら、ふと思いついたので勢いよく体を起こした。始まっ てもないのにうだうだ考えるのは勿体無い。この一年で、私はメンタルだけは強く はなったと自負してる。とりあえずその名案を頭の隅に秘めたまま、今日は休むこ とにして最後に残りの炭酸を胃に流し込んだ。
「本当に出かけなくてよかったのか?」
166

です。」
「おいで。」
「もう、
言うんですか!いいんです、私はひざしさんとゆっくり過ごしたいん
やっと待ち望んだ月末がやってきて、私の家で何度も確認するひざしさんに笑っ てみせた。彼の事だから、きっとドタキャンした罪滅ぼしに美味しいものや楽しい 場所に連れて行くつもりだったんだろう。勿論彼とのデートは新しい発見ばかりで 楽しいけれど、私はひざしさんと一緒に入れるだけでも十分に嬉しいし、休みの日 くらいゆっくり休んでほしい。
バスケットに盛ったポップコーンとポテトチップスに、氷の入った炭酸を一緒に テーブルに添える。今日は映画鑑賞予定で、準備はバッチリだ。ソファーにいるひ ざしさんの隣に座ると、少し高い位置にある瞳とパチリと目が合った。カーテンの 隙間から差し込んでくる光が反射して瞳の色がとても綺麗で、見惚れているとその 目は細められて両手を広げてくれる。
その言葉に誘われるままその胸元に引き寄せられると、ぎゅっと両手で抱きしめ られ
る。頬を胸元に押し付けていると、触れ合う場所からトクトクと心臓の音が聞
167

「ん?」
こえて心地よかった。私もその広い背中に腕を回すと、ひざしさんの腕の力も少し 強まるのを感じた。
「俺のハニーは良い女過ぎて、会えない時に他の男に攫われないか心配にだぜ・・・」
「ふふっ...こんなプレゼントマイクオタクの私を、他の人に好きになってくれます かね?」
「すげぇ可愛いから沢山いるさ。まぁ、そのヒーロー様が悪い虫は蹴散らしちゃう んじゃねぇの?」
見えないけれど、私の頭に擦り寄せてるひざしさんの顔はきっと悪戯っ子のよう な表情をしているんだと思う。暫くそうやって二人でじゃれついていると、ふと本 題を思い出してもぞもぞと身動ぎして狭い腕の中でどうにか彼を見上げた。
「そうだ、ひざしさんに渡したいものがあるんです。」
至近距離でこてんと首を傾げるひざしさんは、惚れた弱みではあると思うがなん だか無防備でとても可愛い。名残惜しいが体を離すために彼の胸元を軽く手で押す と、ゆっくりと巻き付いた腕の力が緩んで解放してくれた。外はまだ真夏日で、部
168

屋の中は冷房が効いているけどくっついていると少しだけしっとり肌が汗ばんだ気 がする。立ち上がってサイドテーブルに置いてある小さな木箱からお目当ての物を 取り出して、またひざしさんのいるリビングへ戻った。
「あの、嫌だったら、返していただいていいんですけど...」
いざ彼を目の前にして渡すとなると、やはり会わないまでに何回も考えた最悪の 事態を考えてしまい億劫な気持ちが顔を覗かせてくる。やっぱり、メンタル強くな ったと思ったけれど、彼が絡むといつだって心配で不安になってしまう。ソファー に座って私を不思議そうに見上げてくるひざしさんの顔を見て、一度深呼吸した。 すぐ勝手に臆病に不安になるのが私の悪い癖だ。大丈夫、2人で過ごした時間は嘘 をつかない。自分に言い聞かせながら、意を決して彼の横にゆっくりと腰掛けて気 合を入れるためにキンキンに冷えたサイダーを胃に流し込んだ。
「...時々ヒーロー活動で汚れた時にシャワーとか、仮眠とかで使っていただいても いいですし、うん。本当休憩所として、好きに使ってもらって平気なので...」
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改めて大きなひざしさんの手をとって、私の手の中の物を掌に乗せた。冷たい金 属のはずのそれは、私の体温のせいでほんのり暖かかい。
「ひざしさんの心休まる場所の一つになれればいいな、って」
今日この日のために作った合鍵は、ずっと渡せなかったもの。彼の負担になりた くなくて、なんとなくこれがお互いの線引きのような存在だったかもしれない。 今 回言い訳がましくキッカケにしたけれど、ひざしさんの力になりたいと前々から思 っている本心だった。掌に置かれた鍵だけ見てボソボソと言葉を紡いでいたが、一 向に鍵が握られる事は無くて押し込めていた不安な気持ちが込み上げてきた。
「す、すみません!重いですかね!」
「アッ、いや!そんな事ねぇぜ!」
慌てて取り返そうとしたが、それより早くまるで守るようにぎゅっと力強く握り しめられた拳が逃げていってしまった。その言葉に顔を上げると、慌てたように、
でもどこか呆けてしみじみと自分の手を眺めているひざしさんがいる。
「ただ、嬉しくてよ・・・・・・それに、同じことしようと思ってたんだ。」 「え?」
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やっと目があったひざしさんの目元はほんのり赤く色付いていて、私の声を遮る
ように足元にある自分の鞄をガサガサと漁り始めた。
「俺は寮に入っちまうからなかなか帰れないとは思うけど⋯」
そう言いながら鞄から出してきたものは数枚のマンションの入居募集の紙で、採
で使うような赤いペンで印をつけているところもある。差し出された
反射的に受け取って、それをただただ眺めていると紙を持つ手をひざい
きな手で包まれた。
「でも、家に帰ってお前がいてくれれば、どんなツラいことや大変なことがあって
もなんだって頑張れると思うんだ」
の先には真剣に此方を見つめるひざしさんがいて、その瞳の奥はど
と同じように不安で揺らいでいるように見
「俺の想いも、受け取ってくれるか?」
彼も私も同じ気持ちだったんだとやっと理解すると、触れ合った掌から頭の先ま
で熱が伝染するように熱くなってきた。沢山いろんな言いたい言葉があるのに上手
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く出てこなくて、とにかくこの衝動を伝えたくて手をすり抜けるとそのまま勢いよ
く彼の首元に抱きついた。
「どわっ!」
「、いつだってひざしさんの事待ってます!あなたの、帰る場所にな
好きな彼が精一杯ヒーローとして活躍できるように。そして、彼が#
きてまたただいまとおかえりが言えるように。その溢れそうな想いを余すことなく
伝えたくて、ぎゅうぎゅうと抱きつきながら叫ぶと触れ合う胸元からひざしさんの
鼓動が伝わってきた。いつもよりそれはドクドクと早く脈打っていて、それに耳を
澄ませる前にひざしさんの大きな笑い声がドッと部屋に響いた。
「こりや熱烈なプロポーズだな!」
抱きついていたのを引き剥がされるとそのまま両手で頬を包み込まれる。大きな
ら頬というより頭全体が掴まれるような感覚で、いきなりのこと
しさんの顔が今まで見た中で一番赤く色付いていること
「愛してるぜ。」
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いつも見ているエメラルドグリーンの瞳はとろりと溶けてしまいそうで、美味し
品のようにペロリと食べれちゃいそうだ。新しい発見だななんて、呑気に
隅で思った。ひざしさんの両手も私の頬も熱くって、もうどちらの熱なのかもわか
らない。うわ言のように私も好き、と言葉を漏らせば、それを拾うようにどちらと
もなくキスをした。
「よし!そうと決まれば二人の愛の巣探しだ!」
ップの中の氷がカランと溶けた音で、ゆっくりと熱い唇が離れて体を
い雰囲気を打ち破るような元気なひざしさんの声に、思わず笑ってし
も防音仕様は必須項目そうだ。これからの事に胸膨らませながら、
った未来予想図を二人で肩を並べて拾い集めた。
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あとがき
度はランデブーをお手に取っていただきありがとうござ
てこのお話を書き始めたのは4年前で、まだプレゼントマイクの
なかったので、「なんで!かっこいいのに!それなら私が書いてやるぜ!」という
気持ちの勢いで書き始めたのがはじまりでした。サイトで連載していた頃は仕事の
合間に(というかサボって)書いていたので、今回本を作るために読み返したら誤
字脱字も凄いし日本語もおかしいところが多くて驚きでした⋯サイトで連載してい
た時に、沢山の励みの言葉と好きですの言葉をいただけて感謝の気持ちが詰まって
いるお話です。
最初に書いたようにお仕事をサボって書いていたので、このままでは私生活が危
危惧して一度サイトはお休みという形にして夢とは距離を置い
ょした。そして去年、ジャンルは違いますがまた夢界隈へ戻ってきて
々な方とお知り合いになり今回ランデブーの本を作ることになりま
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久々に作品に向き直ると、恥ずかしい気持ちと、それ以上に拙い文にも関わらず
沢山読んでいただけている事、更新を楽しみにしてくださっていた方がいてくれた
好きだと言ってもらえた事など様々な感謝の気持ちです。本当にあり
ざいます!
書き下ろしも今回3作品書かせていただきましたが、欲張ると季節に合わせても
つと書きたかったなと少し悔しいです。締切に追われて出来ませんでしたが⋯また
どこかの場所で書ける日が来ればいいなと思っております。あと、私が最近引きこ
もりがちなのでお家でのお話が多めでしたね⋯。次はちゃんとデートしている描写
が描けるようにお散歩を沢山するを今年の目標にします。
ンデブーは自分でも好きな作品なので、本に出来て嬉し、
本を作るきっかけをくれた方、本を作る事を助けてくれた方、そしてこのランデ
ブーを読んでくださり、お手にとってくれた皆様に感謝です。
この度はありがとうございました!
マツダ。
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