君の香り
テーブルに置いた小さな小瓶を手に取り軽く揺らすと、中の液体はもう中身も少なくて音もたてずに底に沈んでいるだけだった。夏が終わり秋の始まりに買った金木犀の香り。好きな香りだったが、最近はもう朝は冷えてコートを引っ張り出す季節になってしまった。
すると不意に背後から伸びてきた手が私の髪の毛を撫でて、思わずビックリして瓶を落としてしまいそうになった。
「香水、もう無くなりますね。今回の香りの貴女も好きだったので、残念です。」
首だけで振り返ると七海さんが立っていて、私の手元の小瓶を覗き込んでいる。触れられる事も、何気ない時に褒めたり好意を伝えてくれる所もいつまで経っても心臓に悪い。赤くなった顔を誤魔化すように俯くと、彼の指先が私の首元の毛を掻き分けるように撫で曝け出されたうなじに吐息がかかる。
「また次の香りの貴女も楽しみです」
小さなリップ音と、首元にかかる吐息がくすぐったい。その声色は楽しそうで全てが確信犯なのは明確で、私は暫く香水をつける度に七海さんのこの行為を思い出して赤面してしまいそうだ。
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