砂糖で窒息しそうなほど
部屋の外には既にレオリオが車の運転席に乗って待機していた。ステラを抱いたキルアとゴンを見るなり「早く乗れ!」と叫ぶ。キルアはステラを抱えたまま素早く後部座席に滑り込み、彼女を膝の上に優しく乗せた。後ろからゴンも飛び乗り、ドアを閉める。
「急げ、レオリオ! クラピカが目を覚ましかけてる」
車がスピードを上げて走り出す中、キルアはステラの目を閉じて眠る顔を見つめ、彼女の乱れたピンク色の髪を優しく撫でた。
「大丈夫だ。もう安全だよ...…約束する」
「それで、どこに向かえばいいんだ?」
ひたすらにスピードを上げて車を走らせながらレオリオは言った。ステラは眠りながらも無意識にキルアの手に頬をすり寄せた。キルアはマヤの仕草に一瞬息を呑み、思わず彼女を強く抱きしめた。窓の外の風景が流れていく中、彼の表情に決意が宿る。
「空港だ。とにかくこの国から出る。俺たちだけの場所に行くんだ」
レオリオが頷くのを確認すると、キルアは再びステラの寝顔に目を落とした。彼女の紫色の瞳が隠れている安らかな表情に、胸が締め付けられる。
「誰にも渡さないからな...…」
空港に車を止め、レオリオとゴンは車から降りた。レオリオは辺りを見回す。
「クラピカは……追ってきてねぇみてーだな」
「乗るなら急ごう!」
ゴンがそう言って駆け出す。キルアはステラを両腕に抱え、車から素早く飛び出した。空港の喧騒に警戒しながらも、足早に進む。
「わかってる。でも油断するな、あいつは……」
「う……? キル……ア……?」
「目が覚めたか。大丈夫、もう安全だ。空港だよ。クラピカが……お前を連れ去ろうとしてた」
目を覚ましたステラはキルアの顔を見上げる。お姫様抱っこされてる事に気が付き、恥ずかしそうに頬を染めた。
「え……? なんでキルアがいるの? どうやって……? ここどこ?」
キルアはステラの混乱した表情を見て、安堵と焦りが入り混じった表情を浮かべた。空港の出口へと足を進めながら、彼女をしっかりと抱きしめる。周囲を警戒する目をキラリと光らせながら、声を低くする。
「ステラ……今だけは俺についてきてくれ。クラピカから守るために、必死なんだ。心配すんな。もう二度と誰にも渡さない。約束したろ?」
「えっ……空港? 私、クラピカに監禁されて……いや、保護されて……。いつから寝てたんだろう……頭がくらくらする……」
キルアに抱きしめられ、その温もりに安心したように息を吐くが世界が回ってるような感覚にくらくらする。キルアはステラの言葉を聞き、眉をひそめながらも彼女をそっと支える。レオリオが席を確保する姿を見て小さく頷く。
「記憶が混乱してるみたいだな。クラピカはお前を利用しようとしてた。だが今は大丈夫だ。ずっと側にいるよ。お前を取り戻すために、何でもする覚悟はできてる」
飛行機へ向かう通路で、ステラの肩に優しく手を置く、その指先から微かな電流が漏れている。
「えっ……?」
肩に置かれたキルアの指先から電流が流れ込み、そのまま意識を失う。ステラの言葉に一瞬だけ表情を曇らせ、空港の人々に気づかれないよう、自然な動きでステラを支え直した。
「大丈夫、俺がいるから。記憶が戻ると混乱するんだ」
ステラの顔を覗き込み、その髪を優しく撫でながら、周囲を警戒する視線を巡らせる。
「クラピカが何をしたのか、すべて話してやるよ。だけど今は安全な場所に行こう」
ステラはキルアの腕の中でぐったりとしている。キルアはステラの軽い体を支えながら、キルアは周囲を素早く見回した。彼の目は冷静さを取り戻し、暗殺者の本能が目覚めていた。キルアは「この子は疲れてるだけだ」と通りすがりの空港スタッフに告げ、警戒の視線を逸らす。人混みを抜け、静かな一角へとステラを運びながら、彼女のピンク色の髪に顔を寄せる。
「もう誰にも渡さない。クラピカにも、ゴンにも...…お前は俺だけのものだ」
飛行機に向かう過程で、ゴンとレオリオはキルアとはぐれたことに気付き、「キルア! ステラ!」と声を上げる。キルアはゴンの声が人混みの向こうから聞こえてくると、無意識に足を速める。ステラの体を抱きかかえる腕に力が入る。
「見つかるわけにはいかないんだ……」
出口へと向かう途中、ゴンとレオリオの姿が視界に入る。キルアは咄嗟に壁の陰に身を隠し、ステラの顔を自分の胸に押し付けた。
「ごめんな、ステラ。でも俺たちだけの世界が必要なんだ。お前を守れるのは、俺だけだから……」
ゴンとレオリオはキルアとステラを必死に探している。ステラはキルアの腕の中で気を失っている。飛行機の発車時刻が迫る。キルアは壁の影から慎重に状況を窺い、ステラの体を強く抱きしめる。彼の心臓が早鐘を打つのを感じながらも、表情は冷静さを保っていた。
「まずいな……」
ゴンの鋭い感覚を警戒しつつ、キルアは静かに身をかがめて別の通路へと滑り込む。ステラの意識のない顔を見下ろし、決意を新たにする。
「待ってろよ、ステラ。俺たちはここから出る」
アナウンスが飛行機の最終搭乗案内を告げる中、キルアは背後からの気配を感じ取り、瞬時に振り返る。ゴンの姿が遠くに見えた。
「チッ……」
キルアはステラを背負い直すと、暗殺者時代の技術を駆使して人々の視線から逃れながら別の出口へと向かう。彼の目には以前見せたことのない決意の色が宿っていた。ゴンは確実にキルアのいる方へ向かって歩いている。そのすぐ後ろにはレオリオがいて左右をくまなくチェックしていた。ステラは意識のないままキルアに背負い直され、ぐったりとキルアの肩口に顔を埋めている。キルアは音もなく息を潜め、ステラの体を確かに抱きしめながら狭い通路の影に身を寄せた。冷静さを装いながらも、焦りが少しずつ彼の心を蝕んでいく。
「くそっ……ゴンの嗅覚は侮れないな」
ゴンの声が近づくにつれ、キルアは別の脱出ルートを素早く計算していた。ステラの柔らかなピンク色の髪が彼の頬に触れ、決意を新たにする。ふと、非常口のサインが目に入る。キルアはその瞬間を見逃さず、人目を避けながら素早く移動し始めた。ステラの体を大切に抱えながら、彼は影から影へと身を隠すように進む。
「俺がお前を守る。約束したから」
非常口へと辿り着いたとき、背後からゴンの気配が急速に近づいてくるのを感じた。キルアは一瞬だけ振り返り、友人の姿を目に焼き付ける。別れの覚悟と、新たな道を選ぶ決意が彼の瞳に宿っていた。