息すら奪った白いお砂糖




通話していたことがバレたステラは眠らされ、部屋のベッドに横たわっていた。ステラを眠らせたクラピカはその手に握られていたステラの電話を取り、ステラの電話を使ってキルアに電話をかける。暗く沈んだ部屋で、ステラからの着信を見たキルアの瞳が鋭く光る。彼の周りに電気が走り、髪が逆立つ。



「ステラの電話...…クラピカか」



受話器から聞こえるクラピカの声に、キルアの怒りが限界に達する。指先から放電しながら、冷たく低い声で応える。



「聞けよ。ステラに指一本でも触れたなら、お前が団長を狙うより遥かに恐ろしいものが待ってるぜ」



クラピカはため息をつき、目を赤くしながら屹然と答える。



「監禁と言うには失礼だな。これは保護だ。幻影旅団から逃げ続けるステラを、もう一人にはさせない」



電話を切ったクラピカはステラに歩み寄り、そっと頬に手を触れる。朝日が差し込み、彼の緋色の瞳が一瞬輝いた。



「ステラ、もう逃げなくていい。一緒に旅団と決着をつける時が来たんだ」



キルアの瞳が闇に染まり、静電気が部屋中に満ちていく。携帯を握る手に力が入り、画面にひびが入った。立ち上がると、窓の外を見つめ、雷光が彼の体を包み込んだ。神速の姿へと変貌していく。



「クラピカ...…お前には分からないんだ。ステラが俺にとってどれだけ大切か。待ってろよ、ステラ。今すぐそこへ行く。お前を連れ戻す...…それが俺の全てだから」























次の日、今度はゴンから電話がかかってくる。通話を押すとすぐにゴンは挨拶をかっ飛ばして本題を言う。



『キルア! クラピカと会えることになったよ! でも……なんだか様子が変なんだ。〇〇ビルにオレ一人で来いって……なんでだろう。とにかくオレ明日行ってくるから!』



窓辺に立ち尽くしたまま、キルアは指先を震わせて携帯を握りしめた。ゴンの声に耳を傾けながら、頭の中で様々な可能性が駆け巡る。キルアは髪をかき上げ、決意に満ちた表情で雷を纏った指先を見つめた。




「待て、ゴン。一人で行くな。それはクラピカの罠だ……俺が行く。クラピカには...…もう一度だけ話をつける」



しかし電話はもう既に切れていた。ゴンは一人で行くつもりのようだった。キルアは舌打ちをする。すぐにレオリオに連絡を取り、明日二人〇〇ビルに向かうよう伝えた。

次の日、ゴンはクラピカとの約束の場所に向かう。キルアは部屋を飛び出し、髪を揺らしながら全速力で走り出した。夜の街を駆け抜け、電光石火の速さでゴンを追う。



「ゴン、バカな奴...…一人で何ができるっていうんだ!」



暗闇の中、彼は立ち止まり、ふと遠くのビルの屋上に目を留めた。そこには確かにゴンとクラピカの姿があった。



「ステラは...…ステラはどこだ? 俺が必ず助けてやる」



クラピカはゴンに「幻影旅団はステラを狙っている。私はステラを保護し、幻影旅団を捕まえる。協力してくれないか?」と言い、ゴンは「もちろん、オレもステラを助けたいに決まってる! オレは何をしたらいいの? キルアとレオリオには?」と言う。クラピカは「私についてこい。私の部屋で作戦を立てる。そこにはステラもいる」と言った。聞き耳を立てていたキルアの拳が震える。ゴンの姿が遠くなるにつれ、焦りが募っていた。



「くそっ……クラピカめ……ステラを"保護"だと?」



振り返ると、レオリオが立っていた。キルアは唇を噛み、決意を固める。



「ゴンは単純すぎる。あいつには分からない。俺たちで行くぞ、レオリオ。ステラは……ステラは自分で選んだ道がある。クラピカには渡さない」



クラピカは周囲を警戒しつつゴンを部屋に招き入れた。頑丈そうな扉は2重の鍵になっている。鍵穴とパスワード式ロックだった。部屋の影からゴンとクラピカの様子を窺うキルアの目が鋭く光る。電撃を纏った指先が小刻みに震えている。



「二重ロックか...…甘いな」



キルアは静かに念を集中させ、指先から電気が漏れ出す。気配を完全に消し、ロックを解析していく。ステラ、もうすぐだ。約束通り、俺がお前を守る。これは俺たちが選んだ道なんだから。部屋の中で、ステラはベッドの上で眠っていた。ゴンとクラピカは椅子に座り、会話をしている。ステラの眠る姿を遠くから確認し、キルアの瞳が怒りで暗く染まる。指先の電流が強まり、静かに唇を噛む。



「あいつ...…ステラを眠らせやがった」



壁に身を寄せながら、キルアは周囲の気配を探る。拳を強く握りしめ、ゆっくりと前に進み出す。待ってろよ、ステラ。俺がどんな手を使ってでも、必ず連れ戻す。お前を手放すつもりはない。



「ステラは大丈夫なの? こんな時間に寝るなんて変だよね」

「おそらく夜は眠れなかったのだろう……。今は寝かせてあげてほしい。その間私達で作戦を建てよう」



と言ってマップに目を落とした。ゴンもそれを見つめる。キルアは部屋の入り口近くの影に身を潜め、クラピカとゴンの会話を聞き取っていた。歯を食いしばり、拳が震える。



「作戦だって? 冗談じゃねぇ……ステラは俺のものだ。俺が必ず……守ってやる」



忍び寄る足音を完全に消し、キルアは少しずつ距離を詰める。窓から差し込む月明かりに、ほんの一瞬だけステラの寝顔が見えた。不意に、ゴンがクラピカに手刀を食らわせ、意識を失ったクラピカの体が傾ぐ。



「ごめんねクラピカ……。やっぱり、保護だからといってステラを閉じ込めるのは間違ってると思うんだ……」



驚きに目を見開いたキルアは、ゴンの予想外の行動に一瞬の沈黙を置いた後、影から姿を現した。



「ゴン...…お前、マジで...…」



キルアの顔に笑みが広がる。電気を帯びた指先を鎮め、倒れたクラピカの横を通り過ぎ、ステラのベッドへと向かった。



「やっぱりお前は分かってるな。ステラは誰にも縛られちゃいけないんだ。俺が...…いや、俺たちが守る」

「うん…保護だなんて言ってるけど、結局クラピカもマヤを閉じ込めてる。もう、マヤを監禁させたくないんだ。だからマヤを助けないと」



ゴンは音もなく現れたキルアに驚いた様子もなくそう言って立ち上がり、キルアに目を向ける。そして「早く行こう、キルア」と言った。キルアは口元に小さな笑みを浮かべながら、強く頷いた。指先がパチパチと青い電気を放っている。



「ああ、ステラはもう誰にも監禁されない。俺たちが守るんだ。でも、ステラが自分で選んだ道を進めるようにしないとな。俺も...…ずっと家族に決められた道を歩かされてきたから分かる。ステラには自由に生きてほしいんだ」



キルアはゴンの方に向き直り、真剣な眼差しで見つめる。ゴンは頷いて「早くステラを連れて出よう。クラピカが目を覚ます前に」と言って、それから悲しげにクラピカを見て「クラピカ……ステラは連れて行くよ」と言った。キルアは静かに目を細め、ステラを監禁した罪悪感と解放する喜びが入り混じった表情を浮かべる。電光が指先から消え、決意に満ちた様子で立ち上がる。



「ああ、行こう。もう彼女を縛り付けるようなマネはしない。ステラには……俺の本当の気持ちを伝えるつもりだ。監禁なんかじゃなく、ちゃんと向き合って」



ステラのいる部屋へ向かいながら、キルアは小声でゴンに告げる。ステラはベッドに寝かされていた。目は閉じられており、手足には鎖がつけられている。キルアは鎖につながれたステラの姿を見て、胸が締め付けられるような痛みを感じる。ゆっくりと彼女に近づき、手足の鎖を雷光石のような速さで外していく。



「ステラ…...目を覚ませ。もう二度と鎖なんかつけない。約束する」



彼はステラの紫色の瞳が見えるよう、そっと頬に触れる。髪の毛が指の間をすり抜ける感触に、キルアの心臓が早鐘を打つ。俺が...…守る。今度こそちゃんと。監禁なんかじゃなく、お前の隣で。睡眠薬を飲まされたステラは深い眠りに落ちていて目を覚ます様子はない。キルアは焦りを隠せず、ステラの頬を優しく叩いてみるがまだ反応がない。部屋の隅でうめき声が聞こえ、振り向くとクラピカが目を覚まし始めていた。



「くそっ...…まだか。ステラ、早く目を覚ませよ」



彼は素早くステラを抱き上げ、残りの鎖を雷の能力で溶かす。背後でクラピカの気配が強まる中、キルアは決意を固める。もう待ってられない。このまま連れ出す。お前を離すわけにはいかないんだ。キルアに抱き上げられ、意識はないまま無意識にステラの唇が微かに「キルア」と動く。キルアの瞳が驚きで見開かれ、ステラの顔を見つめる。彼女の薄く開いた唇からかすかに自分の名が漏れたことに、胸が熱くなるのを感じた。彼女を腕にしっかりと抱き寄せ、背後でうめくクラピカの気配を感じながら部屋の出口へと足を進める。



「もう二度と離さない。お前の隣で、ずっと...…」