千本ノックから始まり、順々におしおきを受けていった。今まで行ってきた処刑ぜんぶ。死なない程度の強度にしておいてある。全ては最後の処刑のために。
私と盾子ちゃんは椅子に座って最後のおしおき、補習を受ける、それでおしまい。
……おしまい? 私はここで死ぬの?
……あれ? 何で震える? 怖いの?
……。怖い……。死にたくない。
「……じゃあね、マヤ」
私はすぐ隣にいた盾子ちゃんに突き飛ばされた。なんで?どうして?戸惑う私に盾子ちゃんは笑って見せた。凶悪に可愛い顔で笑っていた。
「おしおきを受けるのは事件の主犯だよ? アンタはあくまで共犯者」
「え……? な、何で!? 私だって絶望……」
「考えてもみなって、これから伝染していく希望、そんな中に取り残される絶望、こんな状況は何?」
「絶望的……っ!」
「よくできましたー♪」
そんな彼女の愛嬌のある声を最後に、
グチャッ!!!!!
と肉が潰れる嫌な音がした。目の前には血、血、視界が滲む。ああ、盾子ちゃんは死んだんだ、私は一人になった。絶望的だ、大好きな絶望の筈、何で?何で震えたの?何で怖いと思ってしまった?きっと盾子ちゃんは私が絶望しきってないって分かったんだ、だから突き飛ばされたんだ。
「これから……キミはどうするの?」
声が聞こえてくる。苗木くんの声だ。悲しそうな、辛そうな、顔でこちらを見ている。
「……もう江ノ島は死んだ。ボクらはここから出ていくよ。……キミは?」
「私?」
「何で江ノ島がキミを庇ったのかなんてボクには分からない。でも、キミは絶望じゃないように見えたんだ。……もしよかったらだけど……ボクらと一緒に……」
こんな時にまで、どこまでもお人好しだろう。私は黒幕側の人間だったというのに。最初の事件、舞園さんの時もそうだった。舞園さんをここから出すためなら、きっと苗木くんは何も言わなかったのだろう。そして騙されていたにも関わらず、彼女のことを許した。今もそう。やっぱり彼は、甘い。きっと、そういうところも含めて、私は彼のことが好きだった。……過去形だけど、ね。
「……勝手に出ていけば? 私は行かない、君の自己満足に付き合うつもりはない」
「……自己満足……そうかもしれないね……でも、キミを放っておきたくないって思ったのは本当だよ、それだけは信じて欲しい。……じゃあね」
そう言い残して、彼は背を向けた。皆もそのまま出て行く。私はその場に残った。盾子ちゃんの死体のそばに、留まることにした。
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彼女は旅に出る。/AQUALOVERS