
プラムのルージュとヘアミスト
どうしてこうなったのだろう。
私は今、級友に組み敷かれている。どくどくと高鳴る鼓動と目の前の級友―硝子の憂いを帯びた艶やかな視線に息を呑んだ。
「名前は恋とかしないの」
「どうしたの急に」
とある平日の放課後、珍しくお互い時間が空いているからと硝子の部屋で勉強していた時のことだった。知識よりも実践が物を言う世界だからか勉強といってもさらりとこなせてしまうもので、暇を持て余し始めた頃に硝子が口を開いたのだった。
「まぁ、今は自分のことで手一杯だから必要ないというか」
「こんなに可愛いのに?それはもったいないね」
硝子が髪にそろりと触れる。そのまま頭をくしゃりと撫でられたのが擽ったい。新しく使い始めたヘアミストの香りがふんわりと漂った気がした。「見える子」として生まれて、周りの女の子よりもほんの少しだけ強くなってしまった私が唯一自分でいられる場所が高専で、硝子は心を開ける一人であった。
「そう言う硝子はどうなの」
「私のことはお構いなく。悟とか傑とかはどうなのさ」
「いや、別に...」
五条悟と夏油傑。彼らも級友であることに変わりはないが、異性として特別意識したことはなかった。寧ろ年頃の男子の会話を遠目で見ながら呆れたり、ふざけているところをさっさと逃げたりと硝子と似た立ち位置で見ていたはずだ。
「本当に?奴らもあんたのこと、だいぶ可愛がってたと思うけど」
妬けるなぁ、硝子はそう言って指で唇に触れた。硝子の濡れた目が瞳を捉えた瞬間、部屋の温度がぶわりと上がった錯覚を覚える。
「そんな」
「名前のこと、もっと可愛くしてあげる、」
ゆっくりと押し倒されて視界が天井と硝子で覆われた。これから起こることを想像してひゅっと声が出そうになるのを必死に抑えた。
「こういうの、はじめてでしょ?優しくするから」
硝子が相手なら。高鳴る鼓動を抑えてこくりと頷いた。
「んっ…...ふ、ぁ」
「そ。力抜いて。舌出せる?」
はじめてのキスは少しだけほろ苦かったけれど、優しかった。硝子の舌が歯列をなぞる度にじくじくと快感が全身を襲う。腰が浮く度にそっとさすられて、ゆるゆると緊張が解けていくのが自分でも分かった。硝子が唇を離すとつう、と銀糸が垂れた。硝子が褒めてくれた私のプラム系のルージュと交じり合って、同性の自分でもぞくりとするほど色っぽい。
制服のボタンが硝子の手によって恭しく外されていく。いつも更衣室で着替えるときは一緒なのに、緊張で息が詰まりそう。そのままブラも外されて、肌に直接触れた空気と硝子の視線に震え上がった。
「み、見ないで」
「何を今更怯えているの?」
硝子はいささか楽しそうだった。抵抗も虚しく胸を隠していた腕を外されて、上半身が露わになる。
「さすが良い身体してるじゃん、これを知らない男がいるなんて本当にもったいないねぇ」
そのままちう、と膨らみの先端を口に含んでころころと舌で蹂躙した。あまりにも唐突で自分でも聞いたことのないような甘い声が漏れ出る。
「っんぅ...」
「声抑えなくていいよ、聞かせて」
勃っている先端を摘ままれて堪らずびくんと跳ねる。ああはしたない、こんな姿を見せて嫌われないだろうか。そう思いながら視線を下げるとこれまた硝子も恍惚とした表情で愛撫を続けていて、その様子にショーツがじんわりと濡れた。
硝子の手がするりと下着越しに秘部に触れた。撫でられる度に大きな染みを作っていき、卑猥な音が部屋に響いて顔から火が吹き出そうだ。言われるがままに腰を浮かすとするりとショーツを下ろされて、指が直接触れた。
「ひ、っあ゛」
「大丈夫、最初は外だけにするから」
硝子の細くて長い指がクリトリスに触れていく。じんわりと溢れる愛液が塗りたくられて、次第にむず痒くなっていくのを我慢できずに腰が動いてどうしようもない。
「可愛いあなたはどこがお好みかしら」
「...ぁあっ、や、」
なるほどそこね、とぬちぬちと執拗に攻める。快感の波が迫ってきて視界がちかちかして、声が抑えられない。
「んぅ…゛ぁ」
「いいよ、いきな」
「っ〜〜〜〜〜」
そのまま爪を立てられて呆気なく達してしまった。
はぁはぁと息を上げていると間髪入れずに膣内に違和感を覚えた。
「ひっ...」
「ここからが本番みたいなもんじゃん」
そのまま指を曲げてGスポットに当たった。とんとんと刺激されて、じりじりと下半身が甘く痺れていく。硝子は動きを止めず、その時を今かと待ち望んでいる。
散々焦らされたそこが明確な刺激となって頭に上り詰める感覚に襲われて、いつの間にか硝子の名前を呼ぶことしかできなくなっていた。
「...ん゛しょうこ...っ」
「はは、やっぱりあんたが一番可愛いよ」
頭がぼうっとする中で呼吸を落ち着かせているとちりっと鎖骨に痛みが走った。
「いっ...」
「ちょっとした独占欲みたいなものさ、」
硝子の瞳を覗くと黒曜石のようなそれが寂しく揺れるのを見逃さなかった。すかさず起き上がってがばりと抱きしめた。硝子のいつもの匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。私が落ち着ける、大好きな匂い。
「硝子〜〜〜〜〜そんな寂しい顔しないでよ」
「名前だって泣きそうじゃん。疲れてない?」
二人で顔を合わせてくすくす笑う。少しの沈黙の後、今度は硝子が抱きしめた。
「頼むから、死なないで」
「もう、硝子ったら心配性なんだから」
翌朝。教室で悟と傑が二人してきょとんとした顔で此方を見た。
「あら〜〜〜〜何か雰囲気変わりました?」
「ちょっと可愛らしくなったんじゃない?元々可愛かったけど」
「そ、そう? 悟が遅刻しないって珍しいね」
「虫の知らせ的なので目が覚めたみたいだよ」
昨日のことを思い出すだけで顔が真っ赤になりそうになるのを必死に抑えてごまかしていると、遅れて硝子がやってきた。
「硝子今日遅くない?」
「珍しいねぇ」
「私がギリギリなのはいつものことさ、まぁ昨日は名前の寝相が悪くてなかなか寝付けなかったっていうのもあるけど」
な?と目配せされて、一気に耳まで熱くなるの感じた。
「は」
「え」
そこには鳩が豆鉄砲を食らった悟と傑を横目に、したり顔の硝子。
昨日の硝子の言葉と鎖骨の痛みが、こびりついて離れなかった。