Walkure


ミッドナイト・ブルー





ミッドナイト・ブルー


ワンライ再掲


3月31日、23時57分。生ぬるい空気がシーツ越しに伝わるような夜だった。
「ねぇ硝子」
「どうしたの」
ごろりと寝返りを打って隣で横になっている硝子に声を掛けると彼女の温さが私を包み込んだ。
高専で呪術師としての基礎を4年間学び、モラトリアムとして与えられた最後の1年の最後の1日が終わる。授業と任務で忙しくて恋愛らしい恋愛もしてこなければ青春なんてしている暇もなかった、そんな日々。高専生として最後の一年で、私はもしかしたら10代という大切な時間を棒に振ってしまったのではないかと、今更ながら自覚して、でも認めたくなくて。
「わがままを聞いてほしいの」
「いいよ」
硝子はふふっと笑って枕に顔を当てなおした。
「あのね」
キスしてほしい、と耳元で囁けばなんだそんなことか、と彼女は言う。最後の一年を一緒に過ごして自然とそんな仲になって、悪くないじゃんとここまで続いてきたけれど。高専生としての最後の瞬間は、彼女と一緒にいたかった。
「明日から大丈夫かな」
「残念ながら保証はできない立場にあることは確か」
「知ってる」
くすくすと二人で笑っていると、どちらともなく近付く互いの影。柔らかい感触が唇をそっと包み込んだ。
「これで満足した?」
「とても。ありがと」
朝目覚めたら、私たちの新しい世界が息吹きはじめる。思い出も後悔も不安も全部胸に仕舞って、今日も眠りに落ちるのだ。4月1日、午前零時。花冷えをくぐり抜けた季節の話。







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