03
広がる街並みに私はいよいよ別世界に来てしまったのだと実感した。これまでの体験でわかっていた事だがいよいよ目が逸らせなくなる。
並ぶ建物や行き交う人々の雰囲気はとても日本だとは思えない。そもそもフレンにしたってそうだ。
彼のフルネームはフレン・シーフォと言うらしい。名前も日本人のものではないし、彼の容姿も日本人のそれとは似つかない。金色の髪に蒼色の瞳。何処の国の人かと言われると何処とも答えられない不思議な雰囲気があった。
此処に来るまで教えて貰った事を頭の中で反芻する。
フレンは騎士団に身を置く騎士であるらしい。
巡回中に偶々襲われている私を見つけて助けてくれたそうだ。
私を襲っていたのは魔物で、珍しい物ではなく人を襲う獰猛な物も多いそうだ。なので魔物が襲ってこないように個々の街には結界が施されていて、その中では安全に暮らせるとの事だった。
騎士はともかく、結界や魔物が身近に在るだなんて漫画やゲームの世界じゃないか。
外国に飛ばされたのならまだ帰る手段はあったかもしれない。でも、恐らく此処はそんなのじゃなくて。全く別の世界にしてしまったのだと頭が痛くなった。
簡単な説明を終えるとフレンに促される。
次は私が説明する番だ。でも、こんな事どう伝えればいいんだ。
別の世界から来ましたなんて信じられない話だ。フレンは私が今唯一頼れる人で、こんな話をして見捨てられるのが怖かった。恐らく魔物に襲われたのに無傷である事も知られている。フレンは騎士だしこんな怪しすぎる人間、捕まえて檻に入れられるかも知れない。フレンかしなくても他の騎士はわからない。この世界の常識がわからないのだからあり得ない話ではないと思う。
しかし話さなければ対処の仕様もない。
助けを求めるのだから事情は伝えなければならない。
少し考えて、異世界から来たかも知れないと言う事だけを避けて説明をした。
「…多分、私は凄く遠い所から来たんだと思います。何故あそこにいたかはわかりません。それから、記憶喪失とかじゃないんですけど、魔物とか結界とか、此処での常識が一切わからないです。…それから」
破れた制服に手を当てる。傷のないなだらかな肌の感触が掌に伝わった。
受けたはずの傷や痛みが無いことはまだ私の中で飲み込めなくて、説明はそこで切り上げた。
不恰好な苦笑いを貼り付け目を逸らす。追及されないように、と願った。
「…そうだったのか」
フレンを見上げると複雑そうな顔をしていた。
同情と、私の扱いについて困っているらしい。
私は騎士団に連れていかれるのだろうか。さっきの説明で怪しさが増しただろう、保護ならまだしも詐欺師だとか言われたらどうしよう。普通に考えて信じられない話だ。フレンは信じてくれたのかな。
沈黙の時間が続く。街は人で賑わっているのにすごく静かに感じた。
先に声を発したのはフレンだった。
「君に会ってもらいたい人がいるんだけど、いいかな?」
行く当てなどないので首を縦に振った。
微笑んだフレンはその前に、と前置いた。
「いつまでもその格好のままじゃ危ないし、服を買いに行こう」
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