二年生であることを示す色の上履き。指定の紺色のスクールソックス。
女子生徒であることは分かったものの、顔は用具の陰に隠れていて見えない。


…………まさか、死んどるんちゃうやろな。


期待半分不安半分――というより正確には好奇心八割心配一割あとはその他と言った方が正しい――で、オレは倉庫の奥へ歩みを進めた。

モップやらスコアボードやらに肘や頭をぶつけながら見に行くと、そこには一人の女子生徒が、天窓からの陽だまりの中ですやすやと寝息を立てて運動用マットの上に横たわっていた。

彼女の肩には少し大きめのジャージがかけられている。胸元を見てみると、“宮”と刺繍が入っていた。オレのジャージだった。

なぜオレのジャージを彼女がタオルケット代わりにしているのかは分からないが、とりあえず返してもらわなければ、と思い、オレはマットの上に膝をついた。彼女の顔がより近く迫り、息を呑む。

セミロングの光を浴びて輪を作る黒髪と筋の通った鼻梁、少し開いた血色の良い薄桃色の唇。伏せられた長い睫毛。少し力を込めれば折れてしまいそうな細い手首。

眠っている彼女はまるでビスクドールのようで、あまりに人間味を感じさせなかった。

こんな可愛ええ奴、同級生におったんか。思わず呟いてまじまじと彼女の顔を眺めてしまった。彼女は深く眠っているのかオレが声を出しても起きる気配がない。

早く教室に戻らなければいけないというのは頭では分かっているのに、視線は完全に彼女に釘付けになってしまっていた。

気がつけば、手を伸ばしていた。
彼女が人間かどうか確かめたかったのかもしれない。いやに心拍数が上がって、ばくばくと耳元でうるさく響いている。
傷一つない少し上気した頬に指先が触れようとしたその瞬間。

ピピピ……という電子音が倉庫中に大音量で響き渡ったので、ハッと我に返ると慌てて手を引っ込めた。

音のした方を見れば、彼女の枕元(枕はないが)のそばに、小さな目覚まし時計が置いてあった。おそらく音の正体はこれだろう。

「びっくりさすなや…………おかげで未遂で済んだんやけど…………」

無憂病



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