三日月の夜に会おう※擬人化
※擬人化表現あり
陽はすっかり沈みきってしまい、代わりに細い三日月が夜空を飾る晩、ナマエはテントの設置に追われていました。
余計な探索さえしなければ次のレンリタウンへすでに着いていたはずなのに…、とナマエは肩を落としました。
しかしあの炭鉱の奥深く…只ならぬ雰囲気を醸し出す存在は恐らく伝説のポケモンと呼ばれるものの存在ではないのでしょうか。
気づけば洞窟の入り口まで引き返してしまっていたうえに、陽も大きく傾いていたので今回は再度探索することは諦めましたが、いつかまたここに来てみたい、とひっそりと思うのでした。
無事火もおこすことに成功し、簡単な食事と手持ち達のご飯も済ませたナマエ。
すりよってくるヒトモシと新しく仲間になったタブランをあやしながら時間を確認すると、もう遅い時間でしたので、テントに入って寝る準備を整えました。
格闘タイプゆえか、一番体温の高いルチャブルを抱き枕にして丸まっていると、ふとヒトツキがテントを出て行く気配がしました。
もちろん、気がついたナマエは慌てて追いかけていきました。
どんどん森の奥深くへ進んでいくヒトツキ。
必死に追いかけても、中々追いつくことはできません。
「ヒトツキ!」
と名前を叫んでも振り返る気配さえありません。ナマエは悲しくなってきました。
涙が視界を覆い尽くした時、ふと開けた場所へ出てきたことに気がつきました。
木々が縁取る空には細い三日月だけが煌々と輝いています。
幻想的な風景に思わず見入っていると、その広場の中央に人影があることに気がつきました。
何故だかその人からよく知る雰囲気を感じ取ったナマエは、ゆっくりとその人影に近寄りました。
近づくほどにドクドクと鼓動が少しずつ上がっていく気がします。
あと数歩のところまで近づいた時、その人もこちらの存在に気がついたのかゆっくりと振り向きました。
逆光で表情は見えませんでしたが、両目を覆う飾りのようなものだけは何故かハッキリと認識することができました。
その飾りにどこか見覚えのある装飾が施されていることに、どこか安心感を覚えます。
その不思議な感覚に思わず黙って顔を見つめていると、ふと彼は腰に携えた剣を地に突き刺し、中世の騎士がそうしたように片膝をついて頭を垂れました。
そしてゆっくりと差し出された右手に握り込まれていた石を受け取ると、その瞬間、意識がどこかへとひっぱられてゆきました。
あぁ、眼が覚める。
と頭のどこかでボンヤリと考えながら目を開くと、ナマエはテントの中で横になっていました。
ナマエの横ではルチャブルが両腕を上げた格好で寝入っています。
先程までの出来事はやはり夢だったのだと思うと同時に、思い出そうとしても上手く思い出せずにいることに気がつきました。
しかし、夢とはいつでもそういうものです。
唯一、ハッキリと思い出す幻想的な風景だけを瞼の裏に描きながら、まだ暗いテントのなかでもう一眠りしようとナマエは眼を閉ざしました。
その手に闇の石が握られていることに気がつくのは、朝日が昇ってからになりそうです。