昔の話

自分には不思議な力があると幼い頃から自負していた。
何も無い空間から波紋が広がり、そこから物を出し入れできる力が。収納に困らなくて便利だが、明らかに普通ではないため誰にも見せなかった。
ゴーストが見える云々なら不思議ちゃんで通せるが、これは何かの才能なのか。

頑なに人に見せないよう努力した結果、特に問題なく平和な日々を過ごしている。いや、過ごしていた。

仕事からの帰宅途中、ギャングの抗争に巻き込まれた。銃が鳴り響き身動きが取れず、姿勢を低くして辺りを伺った。横断しようと路地の影から道路に飛び出そうものなら流れ弾を喰らうだろう。今は静かにやり過ごすんだ。緊張が高まり心臓の脈がハッキリと感じた時、後ろにギャングの1人が居たことに気づかなかった。
「お前もあいつらの仲間なのか!」振り向くと銃口が私を捉えていた。今にも引き金に力が入る指を見て、怖くて目を閉じた。瞬間、波紋を出した感覚。

何かが放たれた音、コンクリートにぶつかる音、男の勢いを抑え込まれたような声。再び目を開くと男は壁に槍のような棒に突かれていた。ふと横に目をやると見慣れた波紋が広がっていたが、いつもと違うのは波紋から槍の先端が顔を出していたところだった。
槍なんて波紋の中に収納した覚えはないのに。何故此処から出てきたのか。
驚いてすぐ力を抑えた。刹那男を突いていた槍も消え、支えを無くした男の体は地面に落ちた。嗚呼これは私がやったのか。男の下から血が広がっていく。
男が来た方向から声がする。仲間だろうか敵だろうか。それよりもこの状況はまずかった。勢いに任せ道路に飛び出した。ギャング達は自分達の事で手一杯のようで、私には目もくれず抗争を続けている。脚の速度は落とさず家路に急いだ。

家に入り、足取り重くベッドへ向かった。着替えるのも化粧を落とすのもかまわず布団を頭から被り、先程起きた事を思い出してみる。鼓動が早く、心臓が飛び出してしまいそう。
明日になったら、いつもの自分でいようと願い瞼を閉じた。
何もかも変わってしまったぞ。本当の気持ちは隠した。

翌日、見知らぬ人が家に来た。
背は低く初老の男性で、品があり紳士的な印象を受けた。察した。
嗚呼この界隈は情報共有が早いのだなと感心したと同時に、これまでの人生なんだかんだ良いもんだったなと振り返る。
本日で自分の命は終わるものだと思ったが、彼は私に選択を促した。
20何年の刑期か我々に協力するか。身元全てを握られており、果たしてこれは選択を与えられているのだろうか。

今まで努力した成果である平和で何事も無い生活は見事に崩れ去ってしまった。それでも自分の命を優先してしまうのは仕方のない事だと思う。

覚悟を決めた私に彼は表情を変えずに応える。入団試験の事や今後の生活。力、スタンドについても。

「まぁ…わしにはスタンド能力はないがね」

ペリーコロさんは表情を変えずに答えた。