この世界は殺らなきゃ殺られる世界なんだ。ましてや自分の同じような能力、スタンド使いがいるなら尚更だ。
最初は末端のチームに配属された。主に雑用ばかりで縄張りなんてものはない。女というだけで同じチームでも侮辱まがいな事を言われたが、生きてるだけで素晴らしいと思う事にした。
縄張りが無いし末端チームのため小さな争いが時々発生する。
以前、チームの先輩が刺された。
その時私と先輩は依頼で買い物に出掛けていた。今では原因は何だったのか忘れる程、小さな喧嘩が別の組織のこれまた末端チームとで起きた。倒れた先輩を支えたが相手はプッツン状態で、私は担いで逃げる事はできない。どうしたらいいのだろうか。そう思っている内に相手はナイフを構え迫ってきた。
殺らなきゃ殺られるのではないか。此処で死んだらあの時命を優先した意味がないじゃないか。それにもう私はこの世界に足を踏み入れてしまっているんだ。あの時の感覚を思い出していた。
波紋はいつも私の横に発生するが、この時は相手の上に出来ていた。槍を放ちたいと念じると、波紋からヤジリが顔を見せ相手の足目掛けて放たれた。
断末魔が響く中、今のうちにと先輩を支えてその場から去り組織の息が掛かった病院へ向かった。
翌日、チームの私への対応が一変した。女だからだとか弱そうだからだとか馬鹿にされず、まるで怒らせないように丁寧に扱われた。組織は縦社会だが同等の立場なら強い者が得をする。少しは当初よりも過ごしやすくなったと実感した。
あまり戦闘目的でスタンド能力を使わないようにしてはいるが、この世界ではそうも言ってられない。犠牲を最小限に抑えることも出来るし何より己の命の方が大事だ。嗚呼世界に染まってきたな。
スタンドを活用していくに連れ、少しずつ最下層から上位へ所属を移動し、仕事の内容も雑用から情報収集など重要度が高まった。所属が上がれば給料も増え、生活に潤いが出た。平凡な生活を望んでいたとはいえ美味しいご飯やショッピングを楽しめるのも実に良い。
入団当初は雑用で駆け回っていたのに今ではチーム内に後輩が出来、チームメイトに指示をする立場に落ち着いた。
某日、カフェでお茶をしているとガラス越しにある人が目に止まった。
手元を見ながら何やら大事そうに抱えて歩いている。それだけでピンときた。
パッショーネへの入団試験。
審査役であるポルポさんという人物から組織への信頼を得る試験。点火されたライターを消さずに1日過ごす単純な内容だった。
罪状は不明だがポルポさんは刑務所にいるため面会の入退出には身体検査がある。私の時はスタンド能力でライターを点火したまま収納したので看守も試験も問題なく終わった。
万が一消えてしまったらどうなるのか。その時点で終わりなのか自ら再び点火してあたかも守り切りましたと通すのか。
再点火が可能なライターなのかはわからないが、ギャングに入るくらいなのだから被験者はどうにかして火を点けようとするだろう。違反をした場合の細工でもあるのだろうか。
カフェラテをすすりながら被験者を眺めていると、路地から出てきた人とぶつかった。その拍子に彼の手からライターが落ち、地面に何度か打ち付けられ…火が消えてしまった。
ぶつかってきた人は軽く謝ってそのまま行ってしまった。当の被験者は唖然。そりゃあそうだ。見てるこちらも緊張してきた。彼はこのまま諦めてしまうのだろうか。
その場から少し移動した彼はベンチに座った。人通りが少ない場所のため彼の周りにもう歩いてる人はおらず、それが哀愁を漂わせた。此処からだと遠いが目視は出来る。ライターをしばらく眺めそして、火を点けた。
火点けられんのかよ!
思わず素直な感想が出た。ライターを1日守り切るか消してしまい諦めるか再点火という違反をするか。信頼を得るどころが違反者を生み出すシステムになるがこれでいいのだろうか。
試験の内容に悶々していると、視界に何やら異変。彼の近く、日陰から仮装した人が現れた。いつの間にではなく下から出てきたのだ。
あれはもしやスタンド?彼の?でも目の前にいるのに気づいていないようなので彼はスタンド使いではないみたい。再点火出来たことで一瞬驚くもそのまま火を眺めているし…
では今から攻撃されようとしているのでは?周りには人がいないし1〜3mの近距離型ではない。では遠距離型?…もしかしてポルポさんのスタンド?違反、再点火したから出てきたのだろうか。
思考を巡らせていたらスタンドは彼に指を差しそして、口から出た矢で彼を貫いた。地面に倒れ、起き上がる気配はない。
なるほど。小細工は出来ないということか。正真正銘ライターを守り抜いた者だけが合格し…
仕方がないなと無情にも眺めているだけで動かない私は薄情ではないのだ。これは入団試験で本人も同意している。まさか違反した時の対策にスタンドが現れるなんて。
刹那、彼が起き上がった。
矢で貫かれたなんてなかったかのように。辺りを見渡した彼は目の前のスタンドを見るや驚いた表情になる。
まさかスタンドが見えるのだろうか。先程まで見えなかったのに。
私の中で閃があった。あの矢で貫かれたから見えるようになったのではないか。見えるという事は彼はたった今スタンド使いになったのか。スタンド能力を与える事が可能なんて。
そうか、この入団試験は再点火してから本番だったのか。
火が点いたままライターを守れば信頼が生まれ、再点火してスタンド使いになれば組織が強くなる。
もしも私が再点火して矢で貫かれていたらどうなったのだろうか。いやスタンドが現れたら戦うしかないか。
影から現れたらスタンドはいつの間にか消えていた。彼はというと火が点いたライターをじっと見つめており、間を置いて歩き出した。
このまま無事にポルポさんへ届ければ彼は組織へ入るのか。20歳くらいだろうか。私も組織に入る2、3年前はそのくらいだったな。
ライターを持っていたのは勿論、人物像が特徴的だったのでつい見入ってしまった。
長身で綺麗な銀髪に大きな黒目だった。どんなスタンド能力を身につけたのだろう。縁があればまた会えるかな。