「っ、くしゅん!」
無事に生徒会長挨拶が終わった後。
私は会場が設けてくれた控え室で、タオルに包まれていた。
「華火さま、」
「! 双熾。凜々蝶は?」
「パーティー会場にいらっしゃいます。ご心配なさっていらっしゃいましたよ」
「そう。後で謝らなくちゃね」
ふう、と息をつく。
双熾が言っていたように、凜々蝶は繊細だ。私が水をかぶったことで、いらない自責の念を抱くかも知れない。
そうならないように、後で話をしないと。
「……会場の方で、着替えを用意してくれるそうです。着替え終わったらお知らせください、お送りいたします」
「いらないわ。一人で帰れるもの」
「いえ、させてください」
「結構よ。貴方は凜々蝶と一緒に帰りなさい」
「……では、凜々蝶さまがそうしたいとおっしゃったら」
「は? ……それは、……」
「解りました。後ほどお話を通しておきます」
「こら!」
凜々蝶のことだ、双熾の提案に乗るに決まっている。
全く。全てが彼の手のひらのような気がしてならない。
昔はもっと、私の意思で振り回していたんだけどな。いつの間にこんなにしたたかになったんだか。
「……華火さま、本当に、……申し訳ありません」
「貴方に謝られることじゃないわ。私が勝手にしたことだもの」
「そんな……。……っ、」
ざば、と。
双熾が勢いよく、お茶をかぶる。
入れ立ての熱いそれ。唐突すぎて、止める暇もない。
「は、な、何してるの貴方」
「……僕の気が、すまなかったので」
「火傷するじゃない!」
「……はい、ですが……」
「……もう。……馬鹿ね、貴方って」
「はい」
「凜々蝶とは、仲直りした?」
「はい。再び、SSとしての契約を結んで頂きました」
「そう。何よりね」
凜々蝶と双熾が仲直りしたなら、何も言うことはない。
双熾は凜々蝶のことを好ましく思っているようだったし、凜々蝶の誤解も解けたようで。後はなるようになるだろう。
……私は気持ちに気付くのが、少し遅かったみたいだ。
凜々蝶のことを思う双熾の言葉に、失恋を自覚したのだから。
馬鹿ね、私も。人のこといえないわ。
「……双熾。体を拭きたいの、出て行ってくれる?」
「かしこまりました。凜々蝶さまにお話を通しておきますので、終わりましたらお呼びください」
「はいはい」
ひらひらと手を振って、双熾を追い出すように外に出していく。
彼が出て行ったのを確認し、ずるずるとソファーに倒れ込んだ。
「……っ……」
今ならば。
誰もいない。濡れ鼠で、多少他の水分が混ざっていたって気付かれない。
ぽたりと手に落ちた涙に、自嘲するように笑った。
失恋って、意外とつらいんだな。知らなかった。
知らないままで、いたかったな。
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Wisteria
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