日曜日は、遅めに起きることにしている。
平日に早起きする分、寝だめするのだ。存分に。
起きたらまずお風呂。部屋の風呂でも良いけど、せっかくなら大浴場が良い。
そう思って、ちょうど上がってきたエレベーターに乗る。中には凜々蝶が居た。
「あら凜々蝶、おはよう。……体調悪そうね」
「ふん……おはようございます。眠れなかっただけだ……」
「眠れなかった? 昨日のことで?」
「そうだ……」
「大変ね、貴方も……」
クマができている凜々蝶に同情しつつ、苦笑する。蜻蛉の婚約者はそりゃあもう大変だろう。
大浴場には自販機がある。温かい飲み物でも買ってあげよう、と思ったのに。
ギギギと刀の擦れる音。
エレベーターが開いた瞬間見えたのは、刀を向け合う双熾と蜻蛉だった。
向け合うというか、双熾が攻撃して蜻蛉が受けているというか。双熾が蜻蛉に馬乗りになっているというか。
「どうかその広いお心で、この弱く微少たる者の願いを聞き届けては下さいませんか」
「何が弱く微少だ、したたかでず太いドSが!!」
「何してるの二人とも!」
ばっしゃんと。それはもう勢いよく、水を二人の上からぶちまける。
凜々蝶が隣でドン引きした目を向けている。気持ちはよくわかる。私も見なかったふりをしたい。
でももめ事の仲裁もSSの役目だから仕方がない。
「おはようございます、華火さま、凜々蝶さま」
「おはよう我が肉便器達よ!」
「挨拶してる暇があったらそこどいて頭冷やしなさい」
ずぶ濡れになった二人は、刀を向け合ったまま挨拶してくる。そんなのいらん。
はぁ、とため息をついた。もめ事にならないよう祈ったばかりだというのに。
「とりあえず、何かあるなら口で話しなさい。双熾、刀を収めて」
「はい」
「で? 今日は何したのよ、蜻蛉」
「私が加害者か? 悦いぞ悦いぞー」
「どう見たってそうじゃない。ねえ凜々蝶」
「そうだ。御狐神くんが理由もなしに人を傷つける訳がない」
「随分信用しているのだな。この男も私と同類だというのに。……いや、同罪というべきか?」
「?」
なんとなく察した。この三人の間には、もめ事があるようだ。
となれば私が居る意味はない。一応また乱闘になったとき対処できるよう、端に寄っておく。
「直接聞いてみるといい。その男、他人を化かすのが得意だが、貴様に嘘はつけないだろう」
「…御狐神くん…?」
「嘘ぐらいつけます。…その方が良いはずですから。ずっと隠していくつもりでした。……でも、他人の口から明かされるなら、自分で言った方が良い…」
凜々蝶に向けられた双熾の視線は、いつになく真剣で。彼女が肩を揺らす。
「凜々蝶さま。蜻蛉さまの言うとおりです。僕は貴女を騙していた事になります」
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