凜々蝶が慌てて逃げ出してから、約一時間。
周囲はだんだんと暗くなり、黄昏時になってきた。
こんな時間に外に居るのは危ない。SSとして見逃せないと、私は立ち上がる。


「どーしたの華たん」
「凜々蝶のこと、探してくるわ。帰ってきたら連絡ちょうだい」
「りょーかい。行ってらっしゃ〜い」


残夏に手を振って、その場を離れる。
行き先に見当なんてつかないので、とりあえず適当にぶらつくことにした。
着いたのは、以前歓迎パーティーの時にカルタを探しに来た公園だ。ここにいるかは知らないけど。
さて、と辺りを見回した、その瞬間。
私は目を見開いた。


「双熾……と、凜々蝶……」


双熾が跪いて、凜々蝶の手を取っている。
凜々蝶は照れくさそうに、けれどわずかに笑っていて。
その雰囲気はまるで、恋人同士のようで。


「……そう、そういうこと」


あんなに慌てていたから何かと思った。恋文だったのか。
そしてそれを双熾が読んだのだろう。結果、二人はくっついたというわけだ。

双熾が着いているなら心配ない。私は踵を返して、妖館へ戻る。

知っていた。二人が思い合っていることくらい。
知っていた。私に望みがないことくらい。
それでもまざまざと見せつけられると、心にくるものがある。


「あれ、お帰り華たん。早かったね」
「……ええ、ただいま残夏」
「……何かあったみたいだね」
「そうね。……貴方なら、逐一私に聞かなくてもわかるでしょう」
「……」
「部屋に戻るわ」
「華た……」


エレベーターに乗って、押し慣れた階のボタンを押す。
自室の階に到着して、部屋に戻って。扉を閉めた瞬間、私はずりずりと座り込んだ。


「……っは、馬鹿みたい……」


まだ、希望が捨て切れていなかったみたいだ。
こんな事で泣くなんて、馬鹿らしいと思うのに。


「っひ、う……っく」


ボロボロこぼれる涙は、私の力じゃ止められない。
拭っても拭っても、ひたすらに出てくる涙。
私はしばらく、そこで泣き崩れた。








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Wisteria
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