白鬼院凜々蝶。それが本日入居するはずの、新しい妖館の一員の名前。
ある程度噂は聞いていたけれど、どんな人かは会ってみなければわからない。
どんな子だろう。年が近いから、友人になれるかも。
そう思ってワクワクしながら見に行った、その子は――
「……落ち込んでるわね」
それはもう分かりやすいほど、ずんと沈んでいた。
何かあったのだろうか。思わず眉根を寄せてしまう。
だけど落ち込んだままではよろしくない。挨拶に行こうと思って踏み出した先、先客がいた。
「おーりりちよ。着いてたのか」
「何だ反ノ塚か。久しぶりだな」
「あれ、今落ちこんでなかった? あいかわらずだな、またムダに悪態ついて自己嫌悪してんの?」
連勝と旧知の仲なのか。知らなかった。
しかも随分と仲がいいらしい。
「荷物運び手伝いに来てやったぜー」
「ふん、結構だ。それと知った風な口を聞かないでもらおうか。僕と君はただ実家が近所というだけの間柄だろう?」
「えー? でも色々知ってるぜ」
連勝曰く。
小6の時、食事に誘われて断った後泣いていた。
子供の頃、喧嘩した後は必ずものすごく丁寧な謝罪文があった。
……まあ、悪い子ではなさそうだ。
「お」
「?」
「華火じゃん。よっす」
「挨拶に来たんだけれど……聞かない方がよかったことまで聞いてしまったみたいだわ。ごめんなさい」
「まあ聞いてた方が話早いだろ」
「違う! 全部誤解だ! というか誰だ君は!」
「あら、挨拶が遅れたわ。失礼したわね」
軽くスカートの裾をつまむ。
片足を下げて、緩やかに笑った。
「龍泉華火。この妖館全体のSSをしているわ。よろしく」
「ご丁寧にどうもだな。白鬼院凜々蝶です。よろしく、とでも言っておこうか。よろしくする気はないがな」
「……? 不思議な人ね。よろしくしたいの、したくないの。どっち」
「ど、どっちって……」
「あー、華火。こいつツンツンしてるけど、その後落ち込むタイプなんだ。素直になれないだけで」
「違うと言っているだろう!」
「……よくわからないから、勝手によろしくするわ。貴方個人のSSもいると思うけど、何かあったら私にも頼ってちょうだい。力になることをお約束するわ」
「生憎だな。僕にはSSはいない。契約していないからな。だがまあ、礼を言っておこう」
「いない……?」
それは妙だ。双熾は彼女のSSとして入居してきたはずなのに。
後で確認しておこう。何かあったら双熾の方から連絡はあると思うけど。
「ま、いいわ。引っ越しの手伝いをしたいところなんだけど、この後用事があって。何かあったら呼んでちょうだい」
「ふん、お節介痛み入るな」
「また話しましょうね、凜々蝶」
「……また」
ひら、と手を振って去る。最後に彼女は、小さく手を振ってくれた。
悪い子じゃない。その予感はきっと当たっている。
素敵な春になりそうだ。
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