受験生として外せないもの、それは勉強だ。
小テストに向けて頑張る一年生三人に交ざって、私も勉強する。
カルタがコロコロ鉛筆を転がしている。久しぶりに見たなそんなの。
「「ペリー」…」
「今数学だろう。数学にペリー出てこないだろう」
カルタは勉強苦手なのかな。
頭は悪くないと思うし、ちゃんと勉強すれば分かると思うんだけど。
「じゃあ次は歴史からの出題。大政奉還を行った徳川十五代将軍は誰?」
「3」
「3!?」
「カルタ、コロコロ鉛筆を作るなら、教科ごとに作った方がいいと思うわ」
「そうじゃないだろう!」
怒られてしまった。何でだろう。
「む、ここは……」
「見せて。……ああ。これね」
「すまない。ここの公式がいまいちよく…」
「これはこの公式の応用。こことここがイコールなのよ」
「ほう…。さすがだな、龍泉さん」
「ふふん。これくらいならね。私が居ないときは双熾に聞くと良いわ、彼も勉強できるから」
「そんな、滅相もありません」
謙遜している。
でも双熾は、確か義務教育まで通った後も勉強していたと聞く。違ったかな。
「ただ、勉強はしておりました。学がない自分では、華火さまに恥ずかしいと感じていたので……」
「別に恥ずかしいことはないと思うけど」
「そーだよそーたん。じゃあボクもついでに、若者達に為になる知識を授けてあげちゃお〜かな?」
「勉強させてくれ…」
カルタがぱちぱちと拍手している。ノリがいい。
残夏が取り出したのはいつもの紙芝居だ。何を教えてくれるんだろう。
「信じればいつかきっと為になる雑学ー」
「いつかじゃなくて明日のテストに役立てたいんだよ…」
「まずカマキリを用意して下さい」
「カマキリを急に用意できません!!」
「水面器にお水を張って、そのカマキリを浸けてみようね」
「えっ!? やめて!?」
「そうしたらどうなるでしょ〜?」
「死ぬだろ!!」
なんというか、随分グロテスクな問題だ。
虫はあんまり得意じゃないんだけど。
「カマキリの体内から寄生虫が出てくるんですよね」
「は?」
「さてさてどーかな、正解は−? つづきへGOー」
残夏が紙芝居をめくる。途端、私は反射的に目を背けた。
「さっきの続きです」
「急に実写!?」
「水に浸けてみました」
「ひいいいいいいいい」
「正解は「寄生虫のハリガネ虫が出てくる」でしたー。さすがそーたん」
「……」
聞くだけで嫌。不快感をこの上なくあおってくる。
目を背けたままで居れば、残夏がくすっと笑った気がした。
「あれ? 華たんどーしたの?」
「……虫は苦手なの」
「カマキリ可愛いよー?」
「やめて……」
「ほらほら〜。怖くない怖くない」
「っ……」
ぐいぐいと近づけられる何か。恐らくカマキリの紙芝居だ。
思わず目が潤む。瞬間、ぐしゃりと音がした。
「……」
「わーお……」
「華火さま、もう大丈夫ですよ」
「……双熾?」
双熾が、そう言うなら。
恐る恐る振り返る。そこには、双熾の手の中に、それはもうちっちゃく丸められた紙きれがあった。
「……何これ」
「紙芝居です。見えないよう、丸めておきました」
「……ありがと、双熾」
「いえ」
双熾が優しく微笑む。助かった。
ところであの紙芝居、結構丈夫な紙で出来ていたはずだけど。気のせいかな。
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