勉強の息抜きに、ラウンジに行ったとき。
珍しく人が集まっていて、卍里が紙を持っていた。


「またいたずらかしら。しょうがないわね……」
「華火さま」
「! 双熾、凜々蝶」
「……お分かりかと思いますが、」
「はいはい、実験台にはならないわよ。……それでいいんでしょ?」
「はい」


双熾がにっこり笑う。何だか彼の手のひらの上で転がされている気分だ。


「第一問。東京都の形を描け」
「東京都?」
「何ソレ、今度はクイズ?」
「誰のイタズラだろ〜?」
「正解者にはブルーレイレコーダー」
「ちょっと誰か紙ちょーだい」
「やるんだ」


てっきり私は残夏のイタズラかと思っていたんだけど。
今の彼の言葉は嘘じゃない。じゃあ他の誰かなのだろうか。


「東京てどんな形…?」
「芋虫に例えられているのは聞いた事が…でも似てるか…?」
「芋虫…昨日見た…」
「っ!?」
「芋虫をこんな都会で…?」
「金曜ロードショーで見たの…」


なんだ、実物じゃないのか。びっくりした。
というか金曜ロードショー? なら映画?
芋虫の出てくる映画なんてあったっけ。


「できた」
「君が何を見たか解った。」


カルタの示したイラストは、確かに芋虫に見えなくもない。
でも多分、彼女の見たのは芋虫じゃない。風の谷の話だ。


「東京がそんな形な訳ないだろう…!」
「えー違うだろ、もっとさぁ…こうじゃね?」
「本題を思いだせ!!」
「連勝絵うまいわね」
「そうだろ」


虫は苦手だけど実写じゃなければ大丈夫なので、私はまじまじと連勝の絵を見る。
これはなかなか。彼の意外な特技だ。


「第二問、対義語の対義語は?」
「?」
「対義語の対義語? なら……」
「華火さま」
「んむ」
「「同義語」だろう」


双熾に口を塞がれる。別にこの問題に答えたからと言って何があるわけでもないと思うんだけど。
その間に凜々蝶が正解してしまった。どうなるんだろう。


「なおこのクイズに関しての商品は…蜻さまと行くハワイ7日間の旅…」
「ええぇえぇぇ!?」
「蜻さま、って……」
「ふははは! そうだ、この私だ!!」
「蜻蛉!」


登場したのはまさかの蜻蛉だった。
いや、まあこんなイタズラをするなんて暇人しかいないから、不思議ではないけれど。


「やっと気付いたか肉便器ども! 意外な犯人に驚きを隠せないでいるな!?」
「…これを書いたのは君だったのか」
「いかにも!」
「でもこれ字が……」
「蜻蛉、貴方もっと字汚くなかった? 上達したわね」
「ふっふっふっふっふ…そうだろうそうだろう! こっそり通信講座で練習していたのだ! 赤ペン先生も私の成長ぶりに畏れ戦いていたぞ!」
「カゲタンがんばったね!」


蜻蛉のいたずらは、昔からよくあったことだ。
でも字が汚いからすぐ解ったし、誰も本気で取り合ったりなんかしなかった。


「しかし今日は誰一人私だと気付かなかった! これが結果だ!」
「蜻蛉さま、そろそろ働かれては如何でしょう」
「さあ許嫁殿! 今こそ愛の文通を交そうではないか!」
「蜻さま…ケナゲ…」
「淋しいんじゃないのか?」
「何事かと思ったわよまったく」


人騒がせなことだ。
ま、今に始まったことじゃないけど。







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