妖館の大浴場は地下から温泉を引いている。
入居者は無料で利用できるから、私もよく利用しているのだ。


「ふー、今日は疲れた…」
「まったくだわ」


お湯につかりつつ、ため息をつく。
あの後ラウンジに来た野ばらが蜻蛉に対して吹雪を巻き起こし、一波乱あったのだ。


「寒かった…」
「うん…」
「風邪を引かないといいけれど」
「やーん、三人共許してぇ」
「ふははは、悦いぞ、私は寛大だからなー!!」
「男風呂をスケートリンクにしてやりましょうか…」
「ほんとに仲悪いわね貴方たち……」


男風呂から聞こえてきた声に、野ばらが苛ついた表情を見せる。
まあ蜻蛉はあんなだし、野ばらはこんなだし。馬が合わないのも無理はない。


「蜻さま楽しそう……」
「君はあの男にうんざりしてないんだな…」
「? 蜻さま、好き…」
「カルタちゃん何かあの男に弱みでも握られてるの?」


随分な言いようだ。野ばらはよっぽど蜻蛉のことが嫌いなんだな。


「蜻さま好き…。野ばらちゃんもちよちゃんも華火ちゃんも…渡狸も夏目も反ノ塚も好き…」
「ま」
「御狐神はちょっと怖かった…。でも華火ちゃんの恋人になってふんわりになった…。好き…」
「ふんわり…?」


そう、だろうか。
私にはよく分からない。でもカルタが言うなら、きっとそうなのだ。
彼女は本能でそういうのを嗅ぎ分けるから。


「あたしも三人が好きー!」
「!」
「ありがとう野ばら、カルタ。私も好きよ、妖館の人は皆」


だからこそ、護りたいと思うのだ。
SSを続けるのはそのため。
この先もずっと、続いていくと思っていた。







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