「凜々蝶ちゃんの歓迎パーティーをしましょう!」
「歓迎パーティー?」
言い出したのは、野ばらだった。
「凜々蝶ちゃんが引っ越してきてから少し経つじゃない? お互いのことも知れたし、もっと仲良くなるために歓迎パーティーするの」
「素敵ね」
「今度の日曜日なら予定もあいてるみたいだし。カルタちゃんに食事買ってきてもらおうかと思ってるの」
「ええ、いいと思うわ」
「……」
「なあに、野ばら」
「華火ちゃん、何かあった?」
ぎく、と肩を揺らす。
そんなにもわかりやすいだろうか。確かにポーカーフェイスはできていないかも知れない。
「……まあ、ちょっとね。双熾……新しいSSと色々あって、自信なくしてるとこ」
「新しいSSって男でしょ? そんなのにかまって自信なくすなんてもったいないわよ」
「相変わらず男には厳しいこと。……まあ、彼が悪いわけじゃないわ」
そう、双熾が悪いわけじゃない。
護れなかった私が全部悪いのだ。
自分にイライラしているだけ。あれから双熾とも碌に話せていないし。
「じゃあなおさらパーティーしなきゃね」
「どうして?」
「楽しいことをすると、気分も明るくなるからよ」
「野ばららしいわ」
その提案に乗ることにした。
野ばらの言葉も一理ある、と思ったからだ。
いつまでもイライラしているのは、精神衛生上よろしくないし。
そして、日曜日。
「ただいまー」
凜々蝶を誘導する役目を任された連勝が、帰ってきた。
「何故ラウンジ?」
「いーからいーか、ら」
「あら」
がん、と野ばらの開いた扉に連勝が挟まれる。
一反木綿の姿だったから支障はないが。
「おいおい挟まれてペラペラになっちゃったじゃん」
「連勝、」
「お兄様」
「っ」
双熾。
踏み出しかけた足を止める。
まだ彼と、面と向かって話す勇気が出ない。
別に双熾が悪いんじゃなくて、思い出してしまうから。自分の失態を。
「つっこまないわよ。それどころじゃないの。カルタちゃんにおつかい頼んだんだけど帰って来ないの。もう逢魔が時よ…何かあったんじゃないかしら」
「……」
「私のカルタちゃんがどこかで触手責めにあってるかと思ったら…こうしちゃいられないわ!」
「めがねくもってんぞ」
通常運転の野ばらは放っておいて、窓の外を見る。
確かに夕暮れだ。早く探した方がいい。
どろんと連勝が人型に戻った。
「行ってくるわ」
「一人じゃなんだろ。俺も探しに行く」
「凜々蝶さまはここでお待ちを」
「言ってる場合か。早く済ませるぞ」
……双熾も来るのか。気まずいな。
「多分帰り道にはこの公園を通るはずだ」
「広いから手分けしようぜ、初携帯の番号教えろよ」
「ふん、最初の使い道がこれとはな」
「あら、凜々蝶携帯持ってなかったの」
「お友達いなかったもんね……」
「それはもういい!」
番号を交換し、きびすを返す。
「華火様、」
「凜々蝶、連勝。貴方たちは双熾と一緒に探してちょうだい」
「君はどうするんだ!」
「私は一人で平気」
私がいても、双熾の護る対象が増えるんじゃ、お荷物なだけだ。
「俺も一人でいい」
「は? ちょっと連勝……」
「お一人で大丈夫ですか」
「大丈夫、飛ぶから」
「おい、外だぞ」
連勝が再び、一反木綿の姿になる。
外では少々目立つのに。
「大丈夫、風に飛ばされてる紙キレのフリするから〜〜」
「おい、フリじゃなくなってるぞ!」
強い風に吹かれて、一反木綿状態の連勝が飛んでいく。
「ああもう、全く……」
「馬鹿が、行方不明者を増やしてどうする」
私と凜々蝶が踏み込んだのは、同時。
瞬間、黒い何かに飲み込まれる。
やらかした、と気づいたのは、すべてが手遅れになった後だった。
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Wisteria
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