青い空。白い雲。きれいな春空を見上げ、ふと思い出す。
あの日も、三年前の四月も、こんな空だった。
中学に入学した、あの春も。
今はもう、昔のこと。










「ラグビー興味ない!?」
「将棋とかやったことある?」
「日本人なら野球でしょ!」
「水泳!! チョーキモチイイ!」


新入生を勧誘する部活動の群れの中、人の隙間を縫うように歩く。
はぐれてしまった背中を追いかけるように、きょろきょろと辺りを見回すも、いかんせん人が多くて何もできない。
メールを送ったけど帰ってこない。それに、私は大きな声を出すのが苦手で、呼びかけて探すのもできない。どうしよう、と思ったとき。


「千瀬」
「!」


後ろから、ぽんと肩を叩かれた。


「探しました、千瀬」
「兄さん」
「迷子になっちゃダメじゃないですか」
「ご、ごめんなさい」


兄はいつも通り涼しい顔をして、片手には文庫本を携えて。それでも彼なりに、探してくれていたらしい。
謝罪をして、隣を歩く。兄さんは文庫本を開いて読みながら。なんで転ばないんだろう。
双子でも、運動神経には差があるんだろうな。
兄さんは私なんかより、ずっとすごい人だから。


「兄さん、入る部活は決めましたか?」
「はい。千瀬は?」
「私は……」


ふと、兄の向こうに掲示板が目に入る。
バレー、弓道、美術、吹奏楽。様々な選択肢があるけれど。
でも、私はやっぱり。


「バスケ部にします。バスケ部の、マネージャー」
「そういうと思っていました」
「兄さんは……」
「ボクも同じです。マネージャーじゃないですけど」


そういう兄に、笑みが漏れる。
一時はバスケを嫌いになったとまで言っていたのに。やっぱり兄さんはバスケが好きらしい。
そしてそれは、私も同じ。
私もやっぱり、バスケが好きだ。するのじゃなくて、見る方だけど。


「入部届、書きにいかないとですね」
「バスケ部の場所はあっちです」
「はい、兄さん」


兄の先導について、人ごみの中を進む。
人を避けた先、机の並ぶ一角にあったのは、きれいな女子生徒とメガネの男子生徒が並んだ机。
「男子バスケットボール」と書いてある。目的地だ。


「あの、すみません」
「それにしても集まらないわね、人」
「そうだな」
「あの……」
「マネージャーも一人くらい来てくれないかなー。女の子ほしいわ」
「……」


声をかけても対応されないのは、もう慣れている。
慣れている、けれど。
やっぱり悲しいな。私は肩を落とした。


「千瀬、入部届です」
「! ありがとうございます、兄さん」
「備考のところにマネージャー希望と書いておいた方がいいと思います」
「はい」


兄が持ってきてくれた入部届に、文字を書く。
習字を習っていたわけではないからきれいな字ではないけれど、丁寧に。
「黒子千瀬」と記入した。


「行きましょうか」
「はい、兄さん」


兄の分と一緒に机に置いて、その場を去る。
兄――黒子テツヤの、涼やかな色の髪が風になびいていた。
空みたいだと思った。









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