「男子バスケ部カントク、相田リコです。よろしく!!」
そう告げたのは、ヘアピンを付けた女子生徒。入部届を出す机にいた人だ。
二年生のはずなのに監督。そんな人もいるんだと、感嘆の息を漏らす。
私はマネージャー志望なので選手と同じ側にいていいのかわからず、けれど先輩たちに並ぶのも失礼かと思い、一人離れた場所にいた。
「じゃあまずは、シャツを脱げ!!」
「えええ〜〜!?」
シャツを、脱ぐ。
え、私もだろうか。違うよね? 男の子だけだよね?
そう迷いつつも、皆がシャツを脱いでいるのに私だけ着ていていいのかと迷う。
「千瀬?」
「しゃ、シャツを脱ぐ……」
「選手だけです。脱いじゃだめですよ」
「は、はい」
そ、そうか。兄が言うならそうなのだ。
制服にかけた手を外す。
皆がシャツを脱ぎ、それを監督がチェックし。一人ひとりアドバイスを行ったところで、彼女があれ? と声を出した。
「黒子君、それと黒子さんってこの中いる?」
「あ! そうだ帝光中の…」
「それとマネージャー志望の」
「え!? 帝光ってあの帝光!?」
「それにマネージャー!?」
はい。と手を上げたのに、気付いてもらえない。
それは兄も同様で。兄は監督の近くまで向かい、「あの…スミマセン」と声をかける。
「黒子はボクです」
「きゃあああ!?」
「うおっ!? いつからいたの!?」
「最初からいました」
いつもの流れである。
私はこのやり取りを聞くたびにしょんぼりするのだが、兄さんはもう慣れた様子で平然としている。
やっぱり兄さんはすごいのだ、私と違って。
「じゃあ黒子さんって」
「妹ならここに」
「は、はい。すみません……います」
「うわあ!? こっちも!?」
「えっちなみに君も……」
「えっと、はい。最初から……」
「そうなんだ……ていうか妹?」
「双子です」
「双子どっちも影薄いんだ……」
驚かせてしまうのが申し訳ない。存在感を高める方法とかないかな。
私は兄同様影が薄く、今まで声をかけずに気付いてもらったのは家族を抜けば一人だけ。
……ああ駄目だ、思い出してしまう。ぶんぶんと首を振って記憶を葬り去る。
シャツを脱いで体を見せている兄の横で、私はため息をついた。
「じゃあえっと……黒子さん」
「はい」
「マネージャー志望ってことでいいのね?」
「はい、よろしくお願いします。監督……相田先輩?」
「監督でいいわ。黒子さんだとお兄さんと名前が被るから、えーっと……千瀬ちゃん、て呼ぶわね」
「はい」
ぺこりと頭を下げる。彼女はにっこり笑った。きれいな人だ。
「帝光でもマネージャーをしていたの?」
「はい、そうです」
「なら仕事の要領は大体分かってるわね。洗濯とかドリンク作りとか。ちまちましたことはやりながら説明するわ」
「よろしくお願いします」
「うん。歓迎するわ。ようこそ、誠凛へ」
差し出された手のひらに、そっと手を重ねて握手する。
冷え性の私の手と違い、温かかった。
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