「弱点…!?」
「なんだよ、そんなのあんなら早く…」
「いや…正直、弱点と言えるほどじゃないんですけど…」


黄瀬君の弱点。それは重要だ。
けれどこの試合において、それより問題なのは。


「……兄さん」
「はい」
「もうそろそろ、ですよね」
「そうですね」
「もうそろそろって、何が?」


監督の疑問に、兄さんが目を向ける。


「予想外のハイペースで、もう効力を失い始めてるんです」
「…!?」


そう。兄さんのミスディレクションは、40分全部通用するわけじゃない。
別に魔法なんか使ってない。消えているわけじゃない。
だから使いすぎれば相手は存在感のなさに慣れて、効果はどんどん薄まっていく。


「そーゆー大事なことは最初に言わんかー!!」
「すいません、聞かれなかったので…」
「聞かななんもしゃべらんのかおのれはー!!」
「か、監督、兄さんの首が……」
「やかましい! あんたも言いなさいよねちゃんと! マネージャー!」
「す、すみません」


ごもっともである。私は小さくなるしかない。
兄さんが伝えていると思っていた。否、言い訳に過ぎない。
ふう、とため息をついたところでタイムアウト終了の合図が鳴った。


「あー! 黒子君シバいて終わっちゃったー!!」
「このままマーク続けさせてくれ…ださい。もうちょいでなんか掴めそうなんス」
「あっちょ待っ…火神君! もう!」


いつまでもベンチにはいられない。
去っていく選手たちの背中に、監督が指示を飛ばす。


「とにかくDFマンツーからゾーンに変更! 中固めて黄瀬君来たらヘルプ早めに! 黄瀬阻止最優先!!」
「おう!」
「あと黒子君はちょっとペースダウン。思い切り点差引き離されない程度に。できる?」
「やってみます」


再開された試合は、思っていたより苦戦した状況だった。
とにかく黄瀬君を止めようとする誠凛。それに対し、海常高校の笠松選手がスリーを決める。
海常は黄瀬君だけじゃない。他も強いのだ。
火神君を黄瀬君が止め、ほかの選手も兄さんのミスディレクションにだんだんと慣れてくる。
じわじわと、差が開いてきた。

それなのに。


「クックック…ハッハ、ハハハハハ……!!」


火神君が突然、笑い出した。
何事か黄瀬君と話していたようだったけれど、内容までは分からない。
でも瞳を見て分かった。彼はこの状況を、楽しんでいるのだ。
そして、もう一つ。彼には分かったようだ。黄瀬君の弱点が。


「いくら身体能力が優れてるオマエでも、カゲを極限までウスめるバスケスタイルだけはできない。つまり」


そう、黄瀬君の弱点、それは。


「黒子だろ! オマエの弱点!」


兄さんのプレイスタイルだ。





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