「いやいやいや何言ってんのダメ! ケガ人でしょ! てかフラついてるじゃない」
「?」
「兄さん、頭のけがなので、じっとしておかないと……」
「今行けってカントクが…」
「言ってない! たらればがもれただけ!」
「…じゃ、出ます」
「オイ!」


こういう時の兄さんは頑固だ。
頑固っていうのは、言い換えれば芯がまっすぐで、貫き通すってこと。つまり長所にもなりうる。
でも今回の場合は短所だ。限りなく。
頭をけがしてるのに、それでも試合に出るだなんて。


「ボクが出て戦況を変えられるなら、お願いします。…それに、約束しました。火神君の影になると」
「……」


でも兄さんは、こうなってしまうと人の話に耳を貸さない。
私が何を言ったって、考えを変えようとはしないのだ。


「わかったわ…! ただしちょっとでも危ないと思ったらスグ交代します!」


そうして始まった第4Qは、再び兄さんのパスが火を放った。
慣れかけていた海常チームも、時間が空いたことでまた兄さんを認識できなくなる。
兄さんがパス、火神君を含めたほかの選手がシュート。それを繰り返し、ついに82対82、つまり同点へと追いついた。


「同点だぁー!?」
「誠凛、ついに追いついた!!」


だけれども、その時。ふと黄瀬君の雰囲気が変わった。

兄さんを黄瀬君が抜く。先ほど同様後ろからボールに手を伸ばす兄さん。
けれどその瞬間、黄瀬君がボールを左手へと持ち替えたことで、兄さんの手は空を切る。
ゴールポストにボールが入る。再びの追う展開だ。


「オレは負けねぇスよ。誰にも…黒子っちにも」


そのあとはもう完全に第1Qと同様、点の取り合いが始まった。
終了のブザーが鳴るまで、差を広げようとする海常と追う誠凛。
残り15秒。再びの同点。


「時間ねぇぞ!! 当たれ!! ここでボール獲れなきゃ終わりだ!!」
「おお!!」
「守るんじゃダメ!! 攻めて!!!」


あと7秒。笠松さんがシュートしたボールが、火神君にはじかれる。


「うわぁあ獲った!! マジかよ!?」


走る火神君、兄さんを待ち構えていたのは黄瀬君のガード。
火神君と黄瀬君の一対一になるかと思われたその時、火神君が兄さんにパスを出す。
兄さんがゴールへとボールを放つ。残り一秒。


「パスミス!?」
「……じゃねえ!! アリウープだ!!」
「させねぇスよ!!」


そこで奇妙なことが起こった。
同時に跳んだ火神君と黄瀬君。けれど先に落ちたのは黄瀬君で。


「テメーのお返しはもういんねーよ!! なぜなら……これで終わりだからな!!」


ブザービーター。同時に決められた、火神君のゴール。
誠凛の、勝ちだ。






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