がー、がー、とコピー機が音を立てる。
音が終わって、私は印刷されたばかりでまだ温かい紙を手に取った。
キャプテンから頼まれた、IHの予選トーナメント表だ。
体育館に向かい、キャプテンへと声をかける。
「キャプテン」
「……」
「あの、キャプテン」
「うわっ!? あ、マネージャー!」
「驚かせてしまってすみません。トーナメント表、コピーしてきました」
「お、おう。さんきゅ。みんなに回してくれるか?」
「はい」
部員全員に手渡し、一人分余る。私の分だ。
「キセキの世代」、東京の高校に進学した人は二人。
その中でも同地区で、最強最大の敵と呼べるのは秀徳高校の緑間君だ。
彼と対戦するには、決勝まで駒を進めるしかない。
予選は4ブロックある。各ブロックで勝ち抜いた一校のみが決勝リーグに進出し、そこで上位3チームに入って初めてインターハイへの出場が認められる。
倍率1%。選ばれた高校生しか立てない舞台だ。
そこを勝ち取るために、皆努力している。
「ただいまー」
「カントク帰ってきたな」
「海常の時はスキップしてたけどしてねーな」
「カントク、今日はスキップとか…」
「するか!!」
「公式戦でもヘラヘラしてるワケねーだろ」
それにしても、監督のご機嫌は斜めのようだ。
話を聞くところによると、どうやら厄介な選手がいるらしい。
監督のケータイを借りて拝見した、その選手とは。
「名前はパパ・ンバイ・シキ。身長200p、体重87s。セネガル人の留学生よ」
セネガル人。セネガルって、確かアフリカの西の方だったはず。
しかも200pとは。見上げるだけで首が痛くなりそうだ。
「このパパ・ンバイ…なんだっけ?」
「パパ・ンバ……」
「話が進まん! 黒子君、なんかアダ名つけて」
「……「お父さん」で」
「何そのセンス!?」
パパだからお父さん。安直だがわかりやすい。
兄さんのネーミングセンスは独特だけど、悪くはない。
「特徴は背だけじゃなくて手足も長い。とにかく「高い」の一言に尽きるわ!」
戦力アップに外国人選手を入れる学校は増えている。
どうしてもバスケでは、体格の良さがある程度ものを言うからだ。
世界的に見ても日本人は小柄。そこに身長の高い外国人選手が加われば、一気に強くなるのも無理はない。
「次の相手の新協学園も、去年までは中堅校ってカンジだったけど…たった一人の外国人選手の加入で、完全に別物のチームになってるわ。届かない…ただそれだけで、誰も彼を止められないのよ」
「………」
「……あのね、だからって何もしないワケないでしょ!! ってわけで……火神君と黒子君、二人は明日から別メニューよ。千瀬ちゃんも、協力お願いね」
「はい」
「予選本番は5月16日!! それまで弱音なんてはいてるヒマないわよ!!」
「おう!!」
その日から決勝本番まで、恐ろしく早く時は過ぎた。
毎日練習、練習。当然使うタオルの洗濯や掃除、ボールの管理、ドリンクづくりなどマネージャー業務も忙しい。
とはいえ、選手の方が大変なのは火を見るよりも明らかで。私は精一杯やるだけだ。
そして、5月16日。
「行くぞ!!」
試合会場に向けて、足を踏み出した。
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