「へ? 黒子君先発?」
兄さんもカチンと来ていたのは間違いないようで。
彼にしては珍しく、好戦的な顔をしていた。
「黒子君には時間制限があるでしょ? 控え選手として戦況見て出してくって言ったじゃない」
「お願いします」
「なんでそんな血走ってんのよ? …ま、初っパナからカマすのも嫌いじゃないし…いーわよ! …ただし、いきなり切り札見せつけるんだから、中途ハンパじゃ逆効果よ。第1Qで最低10点差はつけなさいよ!」
頑張って、と小さく囁くと、兄さんはこちらを見て頷いた。
その瞳に映る自分の顔も、兄さんと似たり寄ったりな顔をしている。
つまりは二人とも、少しイラっとしていたのだ。先ほどのお父さんの言葉に。
「それではこれより、誠凛高校対新協学園高校の試合を始めます!」
「しゃす!!!」
始まった試合は、予想外だけれどある意味想定内の展開から始まった。
火神君が高さで押し負け、新協ボールから始まったのだ。
やはり身長200p、只者ではない。
お父さんのシュートを火神君が止めようとして、高さが足りずに先制点を入れられる。
日向先輩がゴールを決めようとして、やはり高いジャンプで止められる。
「デタラメだろあんなの…やっぱりズリーよ外国人選手なんて」
隣のベンチから聞こえてきた声。言いたいことはよくわかる。
でもルール上違反でない以上、文句など言えない。
「誠凛さんってアレ? スポ根系?」
「は?」
「いるんだよね、よくさ〜。「助っ人外国人ズルイ!」みたいな? 別にルール違反とかしてねーし。強い奴呼んで何が悪いの? 楽だぜー、アイツにボール回しゃ、勝手に点入ってくし。楽して勝つのがそんなにイヤかね? どう?」
「………楽かどうかは知んねーけど、そのポリシーなら逆に文句言うなよ? とんでもねー奴らなら誠凛にもいるし」
聞こえてきた日向先輩の言葉に、そっと口元を緩める。
外国人選手は確かにすごい。でも兄さんたちだって、負けてはいないのだ。
この日のために頑張ってきたことを、私は知っている。
「落ちた!! リバン!!」
急に、お父さんのシュートの精度ががくっと落ちる。
投げてはいても入らない。その理由は。
「火神君が、お父さんに自分のプレイをさせてないからね!」
「自分のプレイを…?」
「届かなくても、やり方はあるのよ! 水戸部君直伝のね!」
5月16日までの期間。特別練習メニューとして火神君がしていたのは、水戸部先輩から学ぶDFのやり方だ。
水戸部先輩は火神君より身長が低い。けれどDFとしての能力は、火神君より上だ。
自分より大きい相手を封じる方法。シュートを防ぐのはブロックだけではない。
水戸部先輩は、インサイドで相手のシュートを落とさせる方法を知っていた。
相手の行動を封じ、苦手な体制に追い込み、プレッシャーをかける。楽にシュートをさせない。
そうすれば、たとえ届かなかったとしても。
シュートを、落とさせることができる。
「また外した!!」
「ナんだヨもうっ! ムカツク!!」
「クサるなよ。ブロックされてるワケじゃねーんだ。DF!!」
火神君だってストレスがたまるだろう。彼はこういうプレイスタイルは好みそうにない。
それでも効果は出ている。だけど彼は、多分もっと、スカッとしたわかりやすい倒し方をやりたいのだ。
「ヘイ! 2つ言っとくぜ。1つは、この試合中にぜってーオマエのシュートたたき落とす!」
「ソんなの…ナいじゃんでキるワケ! 子供がイるチームなンかに負けなイ!」
「もう1つは…」
ばちっと。お父さんのもとに来たボールを、兄さんが弾き飛ばした。
それを火神君が、ゴールへと叩き込む。
「子供もけっこーヤバいかもよ?」
「てゆーか子供で話進めるのやめて下さい」
ごもっともである。
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