あっという間に日は暮れて、兄さんと並んで帰る。
途中で兄さんがふと立ち止まった。目線の先には、よく立ち寄るファーストフード店。
「兄さん?」
「……」
「入りますか」
「入ります」
兄さんはここのバニラシェイクが好きなのだ。私はいつも通りコーヒーを頼む。
四人席で向かい側に座っていると、ふいに隣の椅子が引かれた。
「?」
「……」
「火神君」
「……」
そこにいたのは、先ほど体育館にいた、私たちと同じく新入部員の火神君だった。大量のバーガーを抱えている。
何か考え事をしているのだろうか。話しかけても返事がない。
……否。私は話しかけても気づかれにくいので、それかもしれない。
しばらく待っていると、火神君が兄さんを見て目を見開いた。
「ぐおっっ!?」
「どうも…育ち盛りですね」
「どっから…つか何やってんだよ?」
「いや、ボクたちが先に座ってたんですけど」
「あ? ボクたち?」
「隣。千瀬……妹がいます」
「は? うわっ!」
「す、すみません。います」
「いや謝んなくていいけどよ……それより、ちょっとツラ貸せよ」
「え」
「火神君。ナンパは駄目ですよ」
「ちげーよ兄の方だよ!!」
いきなり喧嘩を売られたかと思った。死ぬかと思った。
ツラを貸せ、は兄さん相手だったらしい。
……大丈夫かな。
「千瀬。先に帰っていていいですよ」
「え、えと……心配なので、私も残ります」
「は?」
「分かりました」
私がいれば、喧嘩にはならない……と思いたい。
火神君は好戦的に見えるから、殴り合いが始まったら兄さんじゃとても対応できない。
私がいても何の役にも立たないけど、こう……防犯ブザーを鳴らすとかして、人目を集めるくらいなら。
「確かめさせてくれよ。オマエが…「キセキの世代」ってのがどんだけのもんか」
「奇遇ですね。ボクもキミとやりたいと思ってたんです。1対1」
ど、どうしてこうなったんだろう。
今目の前では、兄と火神君がバスケで勝負をしている。
火神君はどうやら、私が考えていたよりもよほどバスケに真剣なようだった。疑ってしまい申し訳ない。
でも兄と火神君では、勝負になっていない。兄さんはそういう戦い方はしない。
「ふざけんなよテメエ!! 話聞いてたか!? どう自分を過大評価したらオレに勝てると思ったんだオイ!」
「まさか。火神君の方が強いに決まってるじゃないですか」
それはそう。うんうんとコートの隅っこで頷く。
火神君はかつての、兄さんの相棒を彷彿とさせる。
才能がある。恵まれた体格をしている。
兄さんとはまるきり違う。でも。
「ボクはキミとは違う。ボクは――影だ」
兄さんは、バスケ選手としては異質で。
それも一種の才能であると、私は思うのだが。
兄さんにそれが通じているかは、微妙なところである。
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