兄さんのパスが通じるようになり、火神君のダンクで誠凛が盛り返す。
差はついに、2ゴール分となった。
「まさか、ここまで追いすがるとはな…」
「緑間君は昔、ダンクを2点しか取れないシュートと言ってました。キミの3点は…確かにすごいです。けどボクは、チームに勢いをつけたさっきのダンクも、点数以上に価値のあるシュートだと思います」
伊月先輩のボールを兄さんがパスして、水戸部先輩がシュートを決める。
残り二分。1ゴール差。
秀徳高校のタイムアウト後、ボールは緑間君へと向かう。
「そうくると思ったわ! 黒子君が機能した時の凄さは、チームの攻撃力アップの他にもう一つある…」
緑間君の目前で、兄さんがボールをはじいた。
「スティールも増えるのよ」
最後はどうしても、緑間君にボールは集まる。火神君のガス欠がバレればなおさらだ。
けれどそれは、兄さんにとっても有利なこと。
「うわああ誠凛カウンターだ!!」
「もら…」
日向先輩がシュート、しようとして大坪さんにはたかれる。
「うおっ!?」
そうだ。緑間君がシュートを担うなら、他の四人は徹底的にDFに来るだろう。
王者の名は、伊達ではない。
緑間君の3P。残り一分もない中で、5点差に開く。
日向先輩が3Pで返すも、残り15秒。
ボールはコートの外に出て、誠凛ボールとなる。最初で最後の、逆転のチャンス。
誠凛が勝つには3Pしかない。その時、大坪さんが日向先輩のマークについた。
ここで決められたら、誠凛の勝ち。そんなのは相手もわかっている。
分かっているから、止めに来たのだ。
日向先輩が走る。水戸部先輩から伊月先輩にボールが渡る。
大坪さんを火神君がスクリーンでガードする隙に、日向先輩は3Pからはるか遠くへ。
けれど諦めたわけじゃない。日向先輩は、まさか、そんな遠くから、3Pを投げて。
シュートが決まった。
「……逆転!?」
「うわああ信じらんねぇ!! 残り数秒で誠凛が勝ったぁ!!」
誰もが誠凛の勝利を確信した、その時。
「勝ってねーよ、まだ!」
高尾君が緑間君へ、パスを出した。
「緑間!?」
「なぜオレが遠くから決めることにこだわるか教えてやろう。3点だからというだけなはずがないのだよ」
バスケットの試合で残り数秒、そんなタイミングでの逆転劇は珍しくはない。たとえ苦し紛れの、入るかどうかわからないシュートだったとしても。
そんなまぐれを、緑間君は嫌っている。
「だから必ず、ブザービーターでとどめを刺す。それが人事を尽くすということだ」
「まずい!!」
全員が虚を突かれた。こんなタイミングで反撃だなんて誰も思わなかった。
緑間君がシュートの態勢に入る。
「ああああ!!」
火神君が飛んだ。
けれど、緑間君は飛ばなかった。
「…!?」
「だろうな。信じていたのだよ、たとえ限界でもオマエはそれを超えて跳ぶと」
「しまっ…」
「決めろ緑間ァ!!」
百戦錬磨。その言葉が似合う彼は、まさしく「キセキの世代」。
火神君ですら予測できなかった、その行動。
「ボクも信じてました。火神君なら跳べると、そして、それを信じた緑間君が一度ボールを下げると」
ばちっと、音を立てて。
兄さんが、緑間君のボールを叩き落とした。
試合終了のブザーが、なった。
「試合終了! 82対81で誠凛高校の勝ち!!」
「ありがとうございました!!!」
皆の顔は、全てを出し切ったと言わんばかりに、満足げだった。
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