インターハイ予選、突破。
その後に待っていたのは、当然と言えば当然、学生の本分である勉強だ。
とはいえ、ずいぶん疲れているのだろう。兄さんも火神君も、授業中までぐっすりだ。
だけど明後日は実力テスト。科目は全教科。大丈夫かな。


「…ったく、いつも急になんなんだあのカントクは。中間テスト全部持ってこいとか…また妙なこと考えてんじゃねーだろーな」
「むしろ、すごく当然のことが起きそうな気がするんですけど」


中間テストの結果をもって、兄さんたちとともに体育館へと向かう。
途中で降旗君、河原君、福田君と合流し、向かっていく。


「それより持ってきたか、テスト」
「ああ」
「つかなんで今なんだ? 赤点取るとインターハイ行けないとか聞いたことはあるけど…実力テストって成績には関係ねぇんだろ?」
「え? そうなの?」
「じゃあマジで問題ねぇじゃん! 練習した方がいいだろー?」











「問題…大アリよ!」


体育館に行けば、もう二年生は勢ぞろいしていた。


「確かに実力テストは成績には関係ないわ! けど…ウチの学校は一学年約300人、その順位がはっきり出るのよ」
「そして下位100名は来週土曜日に補習。これが問題なんだよ」
「え……あ!」


来週の土曜日、それは。


「決勝リーグ!?」
「そ。だからテスト悪ーと試合行けねーの」
「つーわけで! 中間の結果で危ないと判断したら、今夜からカントクん家で勉強合宿だ」
「カントクん家…?」
「勉強だからね? 言っとくけど…補習で試合に出れんかもしれんバカにウフフな展開なんぞあると思うなよ」


それから一人ずつ、カントク及び先輩達にテストを渡していく。
当然、私もだ。


「ふんふん……よし、千瀬ちゃんは大丈夫そうね。流石、安心感あるわ」
「ありがとうございます」
「あと残るのは…」
「はい」
「うす」


兄さんと火神君。
決勝リーグでこの二人は不可欠だ。


「じゃ、まず黒子君ね」


兄さんの成績は、私も知っている。
基本的にどの科目も可もなく不可もなく。赤点をとるようなことはないだろう。


「わっ悪くないわ! けど特によくもない!!」
「あ、でも…国語はいい!」
「よかった! けどフツーだやっぱ!」
「……」


兄さんが微妙な顔をしている。
兄さんはすごい人だけど、何でもできるわけじゃない。とはいえ国語は得意だ。いつも大体8割はとっている。


「黒子オマエ…そんなに頭よかったのか…」
「…まさか」


兄さんが頭がいい? 国語に関していえばそうだけど、他は平均値だ。
けれどそう言うってことは、火神君は……。

ちら、とテストを見る。
……わー。


「バカだとは! バカだとは思っていたけども!! ここまでか!!」
「うっ…」
「フツーに0点もあんじゃねーか!! すげーよ! 逆にな!」
「うう…」
「しかも英語も悪いって何!? 帰国子女だろオマエ!!」
「日本の英語が細かすぎるんだよっ!! もっとテキトーっつうか通じりゃいんだよ言葉なんて!!」
「開き直んなああ!!」


監督が火神君を背負い投げしている。南無、と拝んでおいた。


「うわちゃあ〜。こりゃオレら全員がかりで教えるっきゃねぇな」
「え…? センパイ達教えるほどみんな頭いいの? ですか?」
「ったりめーだ。とりあえずオマエよりはな」


学年2位の監督に始まり、先輩方は皆成績が良いらしい。
文武両道だ。すごいな。


「バスケできりゃー勉強なんてどーでもいーじゃ…いてぇ!」
「バスケはバカでもできるわ! けどバカじゃ勝てないのよ!」


言いえて妙だ。
先輩方がいるのなら私には役目はないかな、と思ったのに。











「実力テストは主要5科目! みんなそれぞれ得意科目があるから、スペシャルチームを編成したわ!」


理科、水戸部先輩。国語、兄さん。数学、伊月先輩。社会、日向先輩。
そして英語、私。

……なんで?


「あ、あの監督」
「なあに?」
「なぜ私も教師役なのでしょう……?」
「最初は土田君に頼もうかと思ってたんだけど。千瀬ちゃんの英語の成績が思ったより良かったから」
「あ? マネージャー、オマエ頭いいの?」
「滅相もないです」
「英語だけなら学年トップクラスよ」
「滅相もないです!」


たまたま中間の時は良かっただけだ。ぶんぶんと頭を振る。
テストっていうのは問題や先生との相性があるから、たまたま点が良かっただけで威張れたりはしない。


「千瀬は昔から本を読むんです。特に外国の」
「ふーん」
「最初は翻訳版を読んでたんですけど、途中からその国の言語で読むようになったんですよ。だから英語が得意なんです」
「すげえじゃん」
「恐れ多い……たまたま、趣味がそうだっただけで。スピーキングとかは全然なんです」
「すごいんですよ、千瀬は」


なぜか兄さんが得意げだ。
でも私だって国語は兄さんに勝てたことがない。兄さんの方だってすごいのに。


「てか、小金井センパイは?」
「オレは寝そうになった火神をはたく役!」
「小金井君は得意科目も苦手科目もないわ! 寝る間も惜しんででいくわよっ!」
「惜しむっつーかどこにもねぇ!!?」


ばん、と監督が叩いたのは、この2日間の火神君のスケジュール。
これは、確かに……。寝る時間もかかれていない。スパルタだ。


「ちょっ…徹夜とか能率が悪いっ…てゆか…」
「いっちょまえに能率とかぬかすなー!! 人間二日ぐらい寝なくても死なないわよ! まずは数学から!!」
「帰りてぇー!!」


私も実力テストの準備をしよう。ついでに教えてもらえたりしないかな。







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