ふと、昔のことを思い出す。
初めて会った青峰君は、きらきらした笑顔でバスケをしていた。
そしてそれは、他の「キセキの世代」も同じはずだった。


最初はただ、周囲より少しだけ優れている。その程度だった。
最初に開花したのは、青峰君。一試合で50点入れるのは当たり前になるほど、急激に成長して。
その成長に、彼は最初は喜んだ。けれど。


『頑張ったら頑張った分だけ、バスケがつまんなくなってくんだよ』


そう、言っていた。
バスケが好きな青峰君は、自分と対等かそれ以上に強い相手を求めている。
だけど才能が開花した彼についていける人は、いつの間にかいなくなっていた。
本気の青峰君は本当にすごい。本物の才能を前にして、それでも諦めずに勝負できる人なんていなかった。
兄さんがとがめても、さつきちゃんが激励しても。
彼はただ、バスケに絶望していった。








そして、決勝リーグ当日。


「…そろそろ時間よ。全員、準備はいいわね!?」


もうすぐで試合開始。監督が皆に激励の言葉をかける。


「大事な初戦よ!! 何度も言うけど、インターハイに行けるのは4校中3校! 小金井君も前に言ってたけど、一見難しくなさそうにも見えるわ…けど」
「んっ…!? えっ!? 何!?」


水戸部先輩と伊月先輩が、小金井先輩の両腕を抑える。


「なめんなー!!!」
「へぶっっ」


監督のハリセンが、小金井先輩の頬を打った。


「リーグ戦だから一敗までは大丈夫…とか、そんなこと少しでも考えたらおしまいよ。大事なのは今! この試合よ!! 「次頑張る」は決意じゃなくて言い訳だからね! そんなんじゃ次もダメよ!!」
「絶対勝つぞ!! 誠凛――ファイ!!」
「オオ!!!」


円陣を組んで、気合を入れて。コートへと足を踏み入れる。
ここまで進んできただけあって、注目度は並じゃない。
大きな歓声が、会場を包んでいる。

ちらりと桐皇学園の方を見て、思った。青峰君がいない。
火神君も気付いたようで、相手チームの人に声をかけに行く。


「あの、青峰は?」
「あ? 遅刻だよ、あの自己中ヤローは」
「なっ…!?」
「すまんのー。アイツおらんとウチも困るんやけど…後半あたりには来るて。せやからウチらはまあ…前座や。お手柔らかにたのむわ」


メガネの先輩が答える。桐皇のキャプテン、今吉さんだ。
けれどなんだか、この人は油断できない気がする。


「それではこれより、誠凛高校対桐皇学園高校の試合を始めます」


ベンチに座って、スコア表を手に取る。
青峰君がいないとはいえ、ここまで勝ち進んできた強豪だ。
頑張って、みんな。


スタートから全開だ。
誠凛ボールかと思われたが、今吉さんがそれをスティール。
素早い動きに、選手たちがうろたえているのが分かる。

青峰君がいないなら、今のうちに点をとっておきたい。それなのに。


「さすが、戻り早いの。しゃーない、ほなら…」


ボールが後ろにパスされる。それを受け取ったのは、


「とりあえずまずは、ウチの特攻隊長に切り開いてもらおか」
「スイマセン!!」


見事な3Pを決めた、一年生の……ええと、桜井君だ。
モーションが並大抵の速さじゃない。
それに彼だけでなく、他の四人もそうだ。油断していたわけではないけど、彼らは強い。


「タチ悪いぜマジ、前座なんてウソつくなんて」
「は? ウソなんかついてへんよ。青峰が来たら分かるわ、オレらなんてかわいーもんやでホンマ。……言うたやろ、前座やて」


嫌な予感は、当たったようだった。






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