第1Qが終わり、四点差。
そして、第2Qからは、


「黒子君と火神君を中心に攻めるわよ! ぺーぺーが二人もいて助かったわ」
「は?」
「情報ってのは多いほど精度が上がるものよ。日向君達二年生は一年分多く研究されてるわ。その点二人はまだ情報が圧倒的に少ないし、黒子君は予測困難、火神君は発展途上。桃井のウラをかける可能性があるとしたらあなた達よ」
「よし、ひとまず頼むぜオマエら。暴れろルーキー!」


第2Q早々、兄さんから火神君へのパス。そしてそのままダンク。
……やっぱり、何か変。今一瞬、火神君が眉をしかめた気がする。


「オマエは! ダンクしかせんのか!」
「だがナイスだバカガミ!!」
「決めたのに!?」


先輩達にぼこぼこ頭を叩かれている火神君。気のせいかな。
火神君とは春に出会ったばかりで、すごく仲がいいわけでもない。だから確証が持てない。
今の火神君は、本当に大丈夫なのか。


「情報があるだのねーだの、まどろっこしーんだよ! んなもん全部蹴散らして跳んでやらー」
「二連続!!」
「うおおノッてきた火神! いけるぞ!!」
「いいぞいいぞ火神!!」


……迷っていてもしょうがない。判断を下すのは私じゃない。


「……監督、」
「緊急事態だわ。小金井君、至急アップよろしく!」
『誠凛、メンバーチェンジです』


どうやら、監督も気付いていたらしい。だったら本当に本調子じゃないのだ。
最初から言えばよかった。分かっていたのに。


「火神! 交代!」
「は!? ちょっ…なんでオレなんだよ、ですか! これからって時に…」
「いーから戻れってば! カントク気づいてるぞー」
「!」
「千瀬ちゃん、テーピングはしたことある?」
「はい、中学時代に」
「じゃあお願いするわ」


火神君がベンチに戻ってくる。
監督は眉をしかめて立ち上がった。


「痛めた足…完治してないわね?」
「え…!?」
「…大丈夫…っすよ! まだ全然…」
「病院でも異状なしだったし、別に出るなとはいわないわ! とにかくテーピングするわよ! 千瀬ちゃん!」
「はい。火神君、座ってバッシュを脱いでくれますか」
「……ああ」


バッシュを脱がせ、汗を拭いてからテーピングを行う。
私がもっと早く気づいていればよかった。そしたらもう少し、火神君の負担を減らせるかもしれないのに。

試合は続いている。
日向先輩がシュートをするもそれは外れ、ボールは桐皇に取られてしまう。
そのままカウンターに持ち込まれ、桐皇は一気に駆け出した。

桐皇の6番と7番の人はどちらもかなり長身だ。おそらく190はあるだろう。
そんな中、火神君の抜けた穴は大きい。
それにさつきちゃんの情報がきいてくる。先輩達の動きが読まれているのだ。
点差は、じわじわと開き始めている。


「くっ…まだかマネージャー!」
「もうすぐです」
「落ちつけ火神! もっとみんなを信じろよ」
「…分かってる、ますよ…! 桐皇は、全員一丸で倒す! …んでしょ?」
「テーピング、終わりました」
「見せて。……うん、よし。綺麗にできてるわ。とりあえずこの試合はこれで問題ないはず…行っていいわよ!」
「っし…!! サンキューマネージャー!」
「いえ」


火神君が勢いよく立ち上がる。着ていたTシャツを預かった。


「…すまないわね…。本当は万全でない選手を出すなんてやりたくないけど…火神君がいないと勝てないわ…」
「……」
「全員一丸のバスケって言ったけど、そもそもそれはある人が教えてくれたスタイルよ。私だけの力じゃまだ未完成で、みんなの力を引き出しきれてない…。あげくケガしてる火神君に頼る始末…。自分の無力さに腹が立つわ…!」
「………。え…と、誰? すか?」
「は?」
「らしくなさすぎ! マネージャーと一緒にとはいえ、練習メニュー作ってスカウティングして、ベンチで指示出して、マッサージにテーピング…。むしろちょっと仕事しすぎ。なあ?」
「! はい、その通りです。……それに、火神君の無理を見抜けなかったのは私も同じです。ごめんなさい」
「いやオマエが謝ることじゃねーし。…ともかく、カントクはドーンと構えてくんねーと!」


監督の仕事は多岐にわたる。普段なら大人がやるはずの仕事を、17歳の女子高生がやっているのだ。負担だって大きいはず。
私がもっと役に立てればいいのに。そしたら、監督だって少しは楽になるはずなのに。


「つかそもそも、「すまない」で送り出されてもテンション上がんねーから。です」
「…生意気言ってくれるわね…! バカガミが! 行ってこい!」
「ウス!」


火神君はすごいなあ。本当に光のような人だ。
足だって痛いはず。プレッシャーだってすごいはず。
なのにあんなにどんと構えてられるなんて、すごい。流石兄さんが見出した人だ。
そう、まるで青峰君のよう。


「そーそー、張り切ってくれよ。少しでもオレを楽しませられるようにさ」
「………!! テメェ…青峰!!」
「あお、みねくん……!」
「よ、千瀬」


突然後ろから現れた青峰君が、こちらに目を向ける。
久しぶりに見た。
青峰君は相変わらず背が高くて、そして……最後に見た時と同じ、冷たい目をしていた。


「やっと来たかまったく…早よ準備して出てくれや!!」
「えー? つか勝ってんじゃん、しかも第2Qあと一分ねーし」
「だめです、出なさい!」
「ま、いーけど……。じゃあ…ま、やろーか」


兄さんと火神君、そして青峰君は半ば因縁めいたもので繋がっている。
彼らはいつになく、鋭い視線を交わしていた。







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