練習が始まった。
インターハイ予選後、初めての練習だ。皆気落ちしているように見える。
だけどここからどれほど頑張れるかが、次へとつながるのだ。
皆、分かっている。分かっていてもきついものはきついが。
練習量もきっと増やすだろうな、と思った。
1.5とか、2倍とか。その分タオルも準備しておかなきゃ、と思ったんだけれど。
「3倍、逝っとく?」
「死んじゃう」
「3…3倍!? ちょっマジで!? いやあの…試合終わったばっかなのに…」
「え…4?」
「やります!!」
流石監督、容赦がない。
いい笑顔でさらっととんでもない練習量を課している。
監督のことだから、これも皆を思ってのことなのだろうけど。
「ホラやるぞ練習!! 落ち込んでても何も始まんねーだろ!」
「ウィス!!」
「集合…って黒子は? サボりか!?」
「サボッてません」
「おおっよし!! てか久しぶりだなこのカンジ!!」
皆、いつも通りに見えて元気がない。
予選であそこまで圧倒的に負けたのだから無理もない。
だけど日向先輩の喝で、皆何とか頑張っているという感じだ。
「集合ー!」
練習後、監督の号令で皆が集まった。
「みんな…入部の時やったこと覚えてる?」
入部の時。
思い出して、サッと私は青ざめた。
――今年の目標を宣言してもらいます!!
――できなかったら全裸で好きなコに告ってもらいます!!
「あれっ…!?」
「やるの!?」
「次はもう負けられないわよ、わかってる? 冬は…寒いわよ〜」
「……え……冬…!?」
高校バスケットボールは三大大会と呼ばれる大会がある。
夏のインターハイ、秋の国体、冬の選抜。
その中で高校の頂点を決めるのはインターハイ、そして冬の選抜だ。
12月に東京で開催されるその大会は、通称――
「ウインターカップ! 全てをぶつけるのはそこよ!!」
もう後がない。
皆を信じていないわけじゃないけど、屋上からの告白なんて絶対嫌だ。メンタルが死ぬ。
「そうか…そこで勝てば…」
「最後のチャンスだぞ」
「今までも必死だったけどな、これで冬も駄目だったら、全裸やるぞマジで、あの女は」
監督のいい笑顔が怖い。
私も告白したくないし、兄さんを全裸にさせたくもない。
マネージャーのできることなんてたかが知れている。それでも一生懸命やるだけだ。
「つーわけで、まだ今年は終わってねぇ。むしろこれからが本番だ」
「けどインターハイと同等レベル…だろ?」
「やっぱ正直…キツい…よな」
部員の声を聴いて、私はうつむいた。そうだろうな、と思う。
誠凛は決して弱かったわけじゃない。でも他の学校が強すぎたのだ。
青峰君にもああ言われてしまったし、火神君だって。
……あの言葉は、決別にしか聞こえなかった。
「それなんだけど、日向君。もうすぐ帰ってくるわ、鉄平が」
「え……マジ?」
「心強い…けど、こりゃあ、ちょっと色々あるかもな」
鉄平、とは。誰だろう。
「センパイ、あの…鉄平…さんて?」
「ああそうか、一年はまだ会ってないか。ウチは7番いないだろ。そいつの番号なんだ、誠凛のエース」
「えっ…」
今誠凛のエースと言えば火神君と兄さんだ。
けれど誠凛は去年、決勝リーグまで勝ち進んだチーム。
当然、前のエースがいたはずだ。
「…あ、ヤバイっ、もう体育館閉める時間だわ。その話はまた今度ね」
「おーし、じゃあ上がんぞ」
「ウィス」
私も片付けに入ろう。
それにしても鉄平、さん。
……どこかで聞いたことがある気がするんだけどな。気のせいかな。
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