「木吉さん……ですか?」
「このー木なんの木、気になる木〜〜の「木」に、大吉の「吉」で木吉だ」
「あ、はい」
「んで、鉄アレイの「鉄」に、平社員の「平」で、鉄平だ」
「あ、はい」
しん、と沈黙が下りる。
何となく、変わった人だと思った。
「あの…何かご用ですか?」
「ん? ああ! ねぇよ」
「そうですか」
ないんだ。
「来週で退院すっから、ちょっくら学校に挨拶に来ただけだよ」
「………ケガか何かですか?」
「まあな。んで、ついでに体育館覗いてみたら、なんか悩める若者がいたもんだから、ついな。まあキミの悩みなんぞ知ったこっちゃないわけだが」
確信した。変わった人だ。
「けど、期待もしてる。君は面白い」
木吉さん……木吉先輩曰く。
バスケは万能型選手のスポーツで、言ってしまえばパスを出せるスコアラーが5人そろえばいい。
実際は得意不得意があるから役割があり、専門的な選手は六人目に置く。
「が…キミほど極端なスペシャリストは見たことがない。あそこまで徹底して一つのことだけ極めたのは驚異的だ」
ヘイ、と木吉先輩が兄さんに声をかける。
兄さんがパスを出すと、彼はシュートの構えをとった。
「けど…そこが限界って、自分で決めつけてねぇか?」
兄さんの、限界。
兄さんが今のスタイルを使うようになって、もうだいぶたつ。
パス回しに特化したスタイル。シュートやドリブルは専門外。それが兄さんだ。
けれどもし、兄さんがこれ以上成長できるとしたら。
木吉先輩がシュートする。ボールはリングにはじかれた。
「そんだけ自分を客観的に見て、割り切ってプレイしてるのは大したモンだよ。けど、割り切り過ぎかもよ? オレらまだコ―コーセーだぜ、もっと自分の可能性を信じてもいーんじゃねーの」
兄さんの可能性。
今まで誰も、そんなことを言った人はいなかった。
先を見通すことができた、かつてのキセキの世代のキャプテンの、彼ですら。
「…とか、ひとり言言ってみたりしてな。また来週会おうぜ、黒子クン」
「あの…木吉先輩」
恐る恐る、声をかける。
「キミがマネージャーの黒子さんか。どうした?」
「ご挨拶遅れてすみません。その…アメ、踏んでます」
「あぁあ!? さっき買ったばっかなのに」
やっぱり、不思議な人だ。
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