期末テストが終わり、木吉先輩も復帰し。
誠凛高校バスケ部は、少しずつ敗戦のショックから立ち直りつつあった。
そんな中、練習終わりに監督が告げたのが。
「今年は夏休みの始めと終わり、海と山で合宿2回よ!」
そうか、合宿か。
となると気合を入れなくちゃならない。合宿では一日中練習する分、マネージャーの仕事も多いのだ。
「合宿は主に予選およびこの前の練習試合で感じた、弱点克服が目的よ。さらにウチは小人数だから体力向上は不可欠。通常練習は今まで以上に走るわよ」
「夏休み明けたら、ウインターカップ予選はすぐそこだ。この夏休みをどこまで有効に使えるかが大事だ。気合入れていくぞ!!」
日向先輩の言葉で、皆の顔に気合が満ちる。
「以上! 解散!!」
「っつかれしたあぁ」
「そだカントク、武田先生が練習後来てくれってさ」
「あ、そう? じゃゴメン、先上がるわ。おつかれー」
「いてっ」
すわケガか、と目線を向けると、兄さんが得点盤を火神君の足にぶつけたところだった。
「あ、すいません」
「ってーなー。ちゃんと前見ろよ!!」
「なんか最近また口きくようになったけど、前よりケンカ増えてね?」
「大丈夫かあいつら…」
確かに喧嘩は増えている。けれど、あれは雨降って地固まるというやつだろう。
「いや…大丈夫だろ」
「木吉…けど今日の練習も、火神、全然パスとかなかったけど?」
「まあ今だけだって。冬にはまたやってくれるさ」
木吉先輩は、兄さんと火神君のことを信じているようだった。
誰よりも付き合いが浅いのに、誰より信じている。そういうところが木吉先輩の美徳なのかな。
「ま…それはいいとして、全員! もっかい!! 集合――う!!!」
「!?」
もう一回?
何かあったのかな。
「いいか…さっき合宿の話が出たが、それにあたって…。オレ達は今…重大な危機に直面している」
「!?」
「今年、合宿を2回やるために、宿は格安の民宿にした。よって食事は自炊だ…が、問題はここからだ。カントクがメシを作る!」
……あらま。
「…え? ダメ…なんですか?」
「あたり前だ! レモンはちみつ漬けとか見たろ!! つまりその…察しろ!!」
「…!!」
「料理の域はもはや完全に超えてたな」
確かにあのまるごとレモンはすごかった。
私も一口もらったけど普通にすっぱかった。はちみつの意味がない。
「じゃあ自分らが作ればいいんじゃ…?」
「そうしたいのはヤマヤマなんだが…練習メニューが殺人的過ぎて、夜は誰もまともに動けん!!」
「あ! じゃあマネージャーは!?」
「レモンはちみつ漬けも美味かったし、料理得意だろ!?」
「え」
視線が大量にこちらを向く。びく、と肩を震わせた。
とはいえ料理。普段しているとまでは言えないけど、時々は作る。
「ばっか、選手が大変ってことはマネージャーも大変ってことだ! へとへとになったコイツに料理作らせんのか?」
「あ、えっと……皆さんがおっしゃるなら、私は別に……」
「よく考えろ。こいつは黒子の妹だぞ。つまり体力がない!」
「う」
それはその通り。反論できない。
スコア表を書いて、試合の様子を見て、洗濯を回し、ドリンクを作り、タオルを配り、それから料理。
……やってやれないことはないか? 一人だとそりゃあ大変だけど、二人なら。
「……監督と共同でなら、なんとか……頑張ります」
「というわけだ。つまりカントクの手が入ることは必然と言っていい。つーわけでな…」
→
back
top
ALICE+