緑間君は答えが半分だといった。
火神君の高さは紛れもなく武器になる、はずだ。けれどそれだけじゃ足りないということか。


「10本だ。オマエが攻撃、オレが守備。一本でも取れたらオマエの勝ちだ」
「あ? どーゆーつもりか知んねーけど、10本連続で防げるつもりかよ? 止められるもんなら止めてみやがれ!」
「安心しろ、オレの負けはない。今日の占い、かに座はしし座に順位も相性も完全に上位だ」


そして始まった、火神君と緑間君の1対1。
それは想定以上に、緑間君優勢だった。


「くっ…」
「心外なのだよ、まさかオレが3Pしか取り柄がないとでも?」


緑間君はDFだって強い。それは知っている。
けれど。


火神君が高く飛ぶ。ダンクだ。それを決めようとして、またもボールは緑間君に弾き飛ばされた。


「なっ…」


空中戦なら火神君の方に分があるはずだ。
けれど何回やったって、必ず緑間君が活。
見ていて気付いた。おそらく、その理由は。


「くそっ」
「……。やめだ、このままでは何本やっても同じなのだよ」
「なっっ、テメェ…」
「いいかげん気づけバカめ。どれだけ高く跳ぼうが止めることなどたやすい、なぜなら、必ずダンクがくるとわかっているのだから」


そう、火神君はダンクしかしていない。
意図的にというより、そうにしかできないのだろう。


「いくぞ高尾」
「あり? バレてた?」


近づいてきた緑間君が、ちらりと兄さんに目を向けた。


「…WC予選でガッカリさせるなよ」
「…はい」


緑間君達が去っていく。
私たちも行かなきゃ、と思ったのに、兄さんはくるりと玄関とは反対の方を向いた。


「兄さん?」
「……すみません。ちょっと先に行っててもらえますか」
「え?」


ごはん、食べないのかな。
そう思って一瞬首をかしげるも、すぐに頷いた。
兄さんが理由もなく、こんなことを言うわけがない。


「わかりました。火神君の分も、ごはん取っておきますね。冷めちゃうから早めにお願いします」
「はい」


そう言って、私は食堂へと向かう。
兄さんの足音も遠ざかっていった。






火神君が負けた理由、それはダンクしかしないからだ。
いつもは左足で跳んで、右手でボールをもった状態でシュートする。けれど今日は右足で跳んでいた。
右足で跳ぶというのはつまり、ボールは左手にあるということ。
けれどたぶん、火神君の左手はまだ、ボールを上手に使えるくらいのレベルには達していない。
きっとそれは火神君もわかっている。これから挑戦すべきこと、それは。
足腰を鍛えてジャンプの回数を増やすことと、左手のボールハンドリングのスキルアップだ。









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