合宿が終わり、皆で民宿の前に整列する。
「よーし、全員いるな。じゃあ行くぞ」
「ありがとうございました!!」
「しゃー、生きてるオレっっ」
「何度も死ぬかと思ったよ」
「早く家のフトンで寝てー」
わいわいとにぎやかに騒ぎつつ、合宿が終わったことへの解放感を存分に堪能する彼ら。
そのまま駅に向かおうとしたとき、監督が言った。
「ちょっと、どこ行くのよ?」
「へ…? いや駅…だけど」
「なんのためにここで合宿したと思ってるの? 今年はここで開催でしょーが!」
ここで開催。そうか、そういえば。
「今日は準々決勝…組み合わせは…」
「……!?」
伊月先輩のケータイの画面をのぞき込んだ皆が、絶句する。
「このまま見に行くわよ、インターハイ」
今日の試合は、海常高校対桐皇学園。
つまり、黄瀬君対青峰君だ。
ざわめきが反響するほどの、大きな会場。
歓声だけでなく普通の会話すら、大きな声を出さなければ聞こえない。
今迄に行ったどの会場より大きい。流石は全国大会だ
「すっげー!! これがインターハイ!!」
「カントク、お目当ての試合は?」
「この試合のアト…ちょうどもうすぐよ。あと15分ぐらいね」
黄瀬君と青峰君、か。
違うチームになったキセキの世代同士が戦うところを見るのは初めてだ。
「黒子、マネージャー…どっちが勝つと思う?」
「……どちらも「キセキの世代」のスタメン同士です。確実にどちらが勝つ、負けるなどとは言えません」
「…ただ、黄瀬君は青峰君に憧れてバスケを始めました。そしてよく二人で1対1をしてました。…が、黄瀬君が勝ったことは一度もありません」
どちらを応援しようなどという気持ちはない。
しいて言うならどちらも頑張ってほしい。かつてのチームメイトと言えど、応援する気持ちはある。
……ただ、やっぱり二人が本気で戦うのを見るのは緊張して、そして少しだけ、寂しい。
もうチームメイトじゃないということを、突きつけられる気分だ。
そして、試合が始まった。
最初は海常ボールから。ボールをとった笠松さんが、黄瀬君にボールを回す。
「いんだよ、細けーことは。それでもうちのエースは黄瀬だ!」
黄瀬君が青峰君と向かい合う。緊迫した空気の中、黄瀬君が青峰君を抜いた。
かと思いきや、一瞬でボールははじかれる。
「ぐっ」
「相変わらず甘ーなツメが。そんなんで抜けたと思っちまったかよ」
「だめだスティール!」
「桐皇の反撃!」
桐皇の6番と海常の8番が向かい合う。8番のDFが強い。
6番が桜井君にボールを回し、そのままシュート。3Pだ。
「桐皇先制ー!!」
そしてボールを持ったのは、またも黄瀬君。再び青峰君と向かい合う。
そのまま黄瀬君が3Pの体制。これ、さっきの桜井君のシュートと同じだ。
「人マネは相変わらずうめーな!! …が、それじゃ勝てねーよ」
青峰君が素早く反撃、黄瀬君の投げたボールに触れ、ボールはゴールとはならない。
このままじゃ流れが桐皇に持って行かれる。
と思ったとき、桐皇の今吉さんのボールを笠松さんがとった。
「そんなカンタンに流れをやるほどお人好しじゃねーよ!」
そのまま3P。同点だ。
「よしDF!! 一本止めんぞ!!」
「おう!!」
流れはまだ、どちらにも動いていない。桐皇に行きそうだったのを、笠松さんが切ったのだ。
「フォローぐれぇいくらでもしてやる。ガンガン行け!」
「センパイ…」
「けどガンガンやられていいとは言ってねぇ!!」
「スンマッセン」
笠松さんの言葉で、海常のテンションが上がる。
だけどいくら言葉で発破をかけたって、青峰君を止めないと流れは切れない。
「ハッ、なるほど。頼りになるセンパイだな。「一人じゃダメでもみんなでなら戦えるっス」ってか。テツみてーなこと考えるようになったな。負けて心変わりでもしたか? ねむたくなるぜ」
「ハァ? 一言もそんなこと言ってないっスよ?」
黄瀬君のDF。隙がないフォーム。
彼らが向かい合っていると、中学時代を彷彿とさせる。
けれどかつてのそれより、格段にレベルが上がっているのが解る。
「まあ…確かに、黒子っちの考え方も認めるようになったっス。海常を勝たせたい気持ちなんてのも出てきた。けど何が正解かなんて今はどーでもいいんスよ。オレはアンタを倒したいんだよ」
黄瀬君が、青峰君に向かって好戦的に笑った。
「理屈で本能抑えてバスケやれるほど、大人じゃねーよ!」
「…やってみな!」
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