ギリギリ第3Qが始まる前に戻ってこれた。
飲み物を配って席に座る。開始のブザーが鳴った。

最初は桐皇ボール。かと思いきや笠松さんがボールを奪い、そのまま黄瀬君へ。


「うおっっ!」
「いきなり速攻!!」


今吉さんが立ち塞がる。
すると黄瀬君は、一瞬ボールをバウンドさせて放ち、そして勢いよく今吉さんを抜いた。
……この動き。まさか、青峰君のコピー?

今吉さんが黄瀬君に向かう。ファウルだ。


「ファウル、ホールディング。黒4番!」
「ああー惜しい…!!」
「それより今の動き、青峰っぽくなかったか!?」


多分今の今吉さんのファウルは意図的だ。そうしないと止められない。
黄瀬君が、青峰君の動きに近づいている。


黄瀬君がボールを持って飛ぶ。また、青峰君の動きだ。
桐皇の7番が黄瀬君に当たり、ファウル。一度目のシュートを決める。


「すっ…すげぇえ黄瀬…! てゆーかカンペキ青峰みてーじゃん!!」
「…いえ、たぶんまだ不完全よ」
「え!?」
「その証拠に、速攻とかで青峰君以外がマークに来た時しかやってない。きっと本人の中でまだイメージとズレがあるのよ」
「つまり…黄瀬が青峰に再び1対1を仕掛けた時が、コピー完成した時だ」


黄瀬君が二度目のシュートを決める。
と、そのときボールがゴールに入った。
誰も予測していなかったそれは、青峰君が投げた球。


「う…」
「うわああ決まった!? つかシュートだったのか今の!?」
「メチャクチャだアイツ!!」


差は、14点。海常にとって今のゴールは痛い。


「タラタラしてんじゃねーよ、黄瀬。別に間に合わなきゃそれまでってだけだ。テメェの準備が整うまでおとなしく待ってやるほど、オレの気は長くねーぞ」


黄瀬君がどんなにすごくても、コピーの完成までに盛り返せるだけの点差じゃなきゃダメだ。
このままだと恐らく、15点差。そこがデッドラインだ。
笠松さんがボールを持つ。今吉さんと向かい合う。
けれど笠松さんの動きは読まれていて、抜けない。

そこで、笠松さんは強引にボールを投げる。入るかどうかさえわからないボールだ。


「これだったら読みもクソもねーだろ。ついでに…オフェンスリバウンドに喰らいつかせたら、早川の右に出る奴ァいねんだよ!」
「んがー!!」


海常のリバウンドが決まり、シュート。点差は12点。
と、ボールが桜井君に渡る。このままだと3Pを決められ、点差が開く。
だけど海常の5番が立ち塞がり、ボールは止められる。


「よしっ!」
「おおお止めたぁ!」
「差は12点のままだ!」
「センパイ…」
「いいからお前は自分の仕事に集中しろよ。そのかわり勝ったら、女の子紹介ヨロシク」


……黄瀬君は、良いチームに恵まれたんだと思う。
巨大な才能を持つキセキの世代は、それだけで尻込みされてしまうことも少なくない。孤独を感じることだってあるだろう。
そんな中、叱ってくれるキャプテンや、信じてくれる仲間が居るのは貴重なことだ。
黄瀬君の、雰囲気が変わった。


ーーオレに勝てるのは、オレだけだ


「じゃあそのオレが相手なら、どうなるんスかね?」


黄瀬君が動く。
その動きは、まさに……青峰君の動き、そのものだった。
青峰君が、抜かれる。


「なっ…」
「ついに黄瀬が、エース青峰を…」
「抜いたあ!!!」


黄瀬君がゴールへまっしぐらに向かって跳んだ。


「おおお!」
「決めろ黄瀬ェ!!」
「調子に乗ってんじゃ……ねェぞ黄瀬ェ!!」
「ダメーッ!!」


跳んだ青峰君が、黄瀬君にぶつかる。
ホイッスルの音と同時、黄瀬君がシュートを決めた。


「ディフェンス、黒5番。バスケットカウント、ワンスロー!!」
「決まった…!? バスカンだ!」
「いや…それより」


青峰君のファウルが、四つ目だ。あと一つしかファウルはできない。


「4つ目…」
「もう思いきったプレイはできないぞ…!!」


思えば、これまでにも青峰君は度々ファウルをとっていた。これがもし、海常の作戦だとしたら。
布石は既に打たれていたわけだ。

黄瀬君がワンスローを決める。これで9点差。
第4Qも丸々残っている中でこの点差は、桐皇にとっては安心できないだろう。

今吉さんが青峰君にパスを出す。けれど青峰君が取り損ね、黄瀬君がボールを取って走った。
桜井君が前に出る。それを黄瀬君が、青峰君と同じリズムで抜く。
最高速は青峰君の方が速いけれど、最低速からの速度差は青峰君そのものだ。


黄瀬君がゴールに向かって飛ぶ。


「おおお!!」
「ぶちこめ黄瀬ー!!」


誰もが海常有利と思ったそのとき、青峰君がボールをたたき落とした。


「なっ!?」
「4ファウルぐれえで腰が引けると思われてたなんて、なめられたもんだぜ。けどなあ、特に気にくわねえのがテメエだ、黄瀬」


青峰君の顔が、怒っていた。


「いっちょ前に気ィ遣ってんじゃねーよ、そんなヒマあったら死にもの狂いでかかってきやがれ」
「いっすね、サスガ。あれで終わりだったら、拍子抜けもいいとこっス」


第3Qが、終わる。
最終Qはたぶん、熾烈な物になるだろう。







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