青峰君と黄瀬君が対峙する。
右に行くか、左に行くか。多分二人は頭脳を回して考えている。
けれど手の内を互いに知っている以上、それはあまり意味がない。
なら。
黄瀬君が、勢いよく跳んだ。
「いきなりフォームレスシュート!?」
青峰君も跳ぶ。速い。止められる。
そう思ったとき、黄瀬君はボールを下げてパスをした。
その先に居たのは。
「笠松!!?」
いくら青峰君でもこれは反応できない。そう思ったのに、青峰君の手はボールを止めた。
「止めたぁあ!?」
「海常痛恨の無得点、千載一遇のチャンスを逃したー!!」
黄瀬君は速かった。多分、青峰君は後出しで反応したんじゃない。
黄瀬君の動きを読んだんだ。でも、どうやって。
「ここまでよくやったが、最後の最後にヘマしたな。あのまま1対1だったらお前にも勝つ可能性はあったかもしれねぇ。が、オレならあの場面で目線のフェイクはしねぇ。つまりパスは一見意表をついた選択だが逆に言えば、オレの動きにない一番予測され易い選択だ。オレのバスケは、仲間を頼るようにはできてねぇ」
青峰君の言葉に、黄瀬君が呆然とする。
最後に黄瀬君は、黄瀬君のバスケをしたんだ。だから。
「切りかえろ! 試合はまだ終わっちゃいねーぞ!!」
笠松さんが、黄瀬君に活を入れる。
短くなる残り時間、縮まらない点差。
「オレの勝ちだ、黄瀬。らしくないことしたせいで、あっけない幕切れだったな。結局敗因は、最後の最後に仲間に頼った、お前の弱さだ」
「そうかも…しんないっスね」
青峰君の言葉は、その通りかも知れない。
でも、仲間に頼るのが悪いことだなんて、きっと今の黄瀬君は思っていない。
青峰君がダンクをしようと跳んで。
黄瀬君が、それに食らいついた。
「だから負けるだけならまだしも、オレだけあきらめるわけにはいかねーんスわ。敗因があるとしたら、ただ、まだ力が足りなかっただけっス」
「フン、当たり前なこと言ってんじゃねーよ」
青峰君が、シュートを決める。
試合終了のブザーが鳴った。
「両チーム整列!」
転んだ黄瀬君が、立ち上がろうとして失敗する。
足だ。キセキの世代、それも青峰君のコピーをしたんだ。
黄瀬君の体には、並外れた負担がかかっている。
笠松さんが、手を差し伸べた。
「立てるか? もう少しだけ頑張れ」
「センパイ…オレ…」
「お前はよくやったよ。それにこれで全て終わったわけじゃねぇ。借りは冬、返せ」
冬。
ウインターカップだ。
礼をした二チームに、会場から拍手が巻き起こった。
冬に戦うのは、誠凛も同じ。皆にプレッシャーがかかったのか、しばしの沈黙が起こる。
と、監督が席を立った。
「いつまでも呆けてらんないわ! 帰って早く練習するわよ!」
「…え? あ…帰んの…!? ですか。この大会、他の「キセキの世代」も出てるんじゃ…」
「そりゃあできれば最後まで観たいわよ!」
「いやだからホテルとか見っけて…」
「ハハハホテルか。おい火神」
日向先輩が、火神君の両頬をつかみ、思い切り引っ張った。
「どこにそんな金あんだ!!」
「いでででで」
「ボンボンか!? お前実はちょっとボンボンか!? ついでにそんな何泊も増やしたらカントクのパパにブッ殺されんだよ」
席を立ち、通路へと向かう。
他のキセキの世代、か。
それはあと、二人。
「! 兄さん、靴紐がとけてます」
「あ、どうも」
「アーララ〜? なんか前ここ通ったような…どこだここ?」
それは、聞き覚えのある声だった。
「あーいた!! ったく…」
「てゆーかあー…やだやだバスケとか…つかれるし…ってアララ…この新味は…いいぞう」
「いっつもすぐ迷子になるんじゃねーよ! 紫原!!」
むらさき、ばら。
そんな名字、あまり聞かない。
反射的に振り返る。通路の角を曲がる、背の高い人が見えた、気がした。
「おい何してんだ、置いてくぞー」
「どうした黒子、それにマネージャーも。おんなじ格好で固まって」
「……すみません、何でもありません」
「…ちょっと挨拶し損ねただけです」
「のんびりしてるヒマねぇぞ! 帰ったらすぐ練習だ!」
「おお!」
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