ざわめく周囲、背の高い人が多い。
練習の休みの今日、私はストリートバスケの会場に居た。
「おー、けっこうでけーな規模」
「ところで、なんで?」
火神君が振り向く。そこにいたのは木吉先輩だ。
息抜きに一年だけでストバス大会にでも。良かったら私もどうかと誘われたのは、昨日のこと。
なのになぜ木吉先輩がいるのかといえば、それは。
「てゆーか河原は?」
「あ、カゼだそうです」
「はあ?」
「ま、楽しくやろーぜ」
つまり、代理である。
エントリー受付に向かうと、見知った顔が合った。
「およ?」
「正邦ー!?」
「誠凛ー!?」
鉄壁のDFを誇る、正邦高校だ。
「いや〜、キグウだね〜い。てかなんでこんなトコいんのよ? 練習は〜?」
「今日は休みです」
「アンタらこそいいのかよ練習」
「なんだそれ、イヤミ!?」
「は?」
火神君……。いや、彼のことだ、イヤミとかじゃなくて知らないのかも。
「津川はともかく、オレ達三年は引退だ」
「…え? ちょっ…ウインターカップには出ねーのかよ?」
「なんだお前、知らんの〜? オレらはウインターカップ予選は出れん。都代表2校を決めるウインターカップ予選に出れるのは、インターハイ予選上位8校だけだ」
つまり、私たちのAブロックで言えば、誠凛と秀徳まで。
「つーわけで〜。誠凛に負けたおかげで自動的に引退。今日は受験勉強の合間の息抜きってトコだ」
「今日もし当たれば去年流れた勝負ができそうだな。お手柔らかに」
「てゆか人間そうそうスッパリと忘れることもできんし〜。まだくすぶりが残ってた時に、このグーゼンはありがたい」
「フルメンバーじゃないのが少し物足りないがリベンジさせてもらって、心おきなく受験に集中させてもらおーかな」
そう言って、正邦は去って行った。
私は今日応援しに来ただけだけど、できれば皆には勝ってほしい。応援頑張ろう。
と、そのとき火神君が何かを考える目つきになった。
「……? どうしたんですか、火神君」
「うぉわっ! おどかすな!」
「す、すみません」
「別に……ちょっとアメリカにいた頃を思い出しただけだよ」
「アメリカ……」
火神君が、ふとリングをいじる。なんだろうと思っていれば、兄さんが口を開いた。
「それってそのリングと何か関係あるんですか?」
「はっ!? なんで……」
「さっきからイジってるじゃないですか。ねえ千瀬」
「はい。……それ、いつもつけてるリングですよね。お気に入りですか?」
「お気に入り、っつーか……」
ちり、と火神君のツメにはじかれて、リングが鳴った。
「これは向こうでいつも一緒にバスケやってた、仲間との思い出だ」
「…仲良しだったんですね」
「…一言じゃうまく言えねーなー。仲良かったかもしんねーし、ウマが合わなかったかもしんねー。バスケを教えてくれた相手でもあるし、教えた相手でもある。そんで、もう一度なんとか戦いたいけど、もう二度と戦いたくねえ」
……よくわからない。抽象的だ。
けれど多分、火神君には何か訳があるんだろうと思った。
そうでなきゃ、こんな顔はしない。
「正邦の戦いはもうすぐだと思います。行きますか?」
「あ、ちょっと待て。オレ腹減った」
「え」
火神君のご飯を買って、正邦の会場へと向かう。
大分混んでいる。間に合うかな。
「やっべー、遅くなった」
「もう正邦勝っちゃってるんじゃねーの?」
「なんか騒がしいな」
ざわめく観衆の先、背伸びした視界でとらえたのは。
「すげぇ…なんだアイツは…」
正邦が、19点差をつけられて負けているところだった。
「そんな…正邦があんなあっさり…」
「…なんで。なんで…ここにいやがる…」
火神君の言葉に、もう一度会場を見る。
正邦のその向こうに見えた、その人は。
「氷室…辰也…!!」
「タイガ…!?」
片目を隠した男の人。
そして火神君と同じリングを、首から提げた人だった。
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