乗り気だった紫原君に、氷室さんが声をかけた。


「敦!! 悪いが出番はもう少し待ってくれ。即席チームだから役割をハッキリさせよう。敦はDF、OFはオレが点を取ろう」
「うん、よろしく」
「ってええ!? アイツ攻めねぇの!?」
「ああ、大丈夫。あれが敦のスタイルだから。…それに、オレ一人で十分だ」


氷室さんの目つきが変わる。静かだけれど、熱い闘志を秘めているように。
火神君との1対1。氷室さんは一瞬抜こうとして、それにつられた火神君から身を引き、シュートをした。
それはなんら特別じゃない、普通のシュート。
けれどあまりにも、驚くほど美しいフォームで。観客どころか選手まで見とれてしまった。


「降旗、ボーッとするな! リスタート!!」
「あっっ…はいっっ!!」
「うっ…おっ…おおおお!!!」
『思わず実況も沈黙ー!! 超美麗シュート!!』


緑間君みたいに長い距離の3Pとか、青峰君みたいに型にはまらないシュートとか、そういうわけじゃない。
けれど信じられないくらいの努力を重ねてきたんだろう、修練の凝縮されたシュートだった。

兄さんがパス。それを火神君が受け取る。


「勝負だ紫原!!」
「暑っ苦しいなぁ、もー。そんなウキウキ熱血しないでよ。ヒネリつぶしたくなる」


と、そのときだった。
ぽつ、と頭に何かが当たる。
雨だ。


『中断!! 一時中断にします!! 選手及び審判もテントに入ってください!!』
「…フウ。まいったな…残念だけど、勝負はおあずけだな」
「待てよタツヤ!」
「オレも続けたいのはヤマヤマだが、この雨だとじきに中止のアナウンスが出るだろう。それに滑る地面でバスケは危険だ。…特に、センパイが古傷を再び痛めたらコトだろう?」


氷室さん、木吉先輩の怪我のこと知ってるんだ。


「とは言え、せっかくの再会だ。これで終わりじゃ味気ないな。土産をおいてくよ、タイガの知らない技だ。好きに守っていいぞ」


氷室さんがかがむ。それは普通のジャンプシュートに見えた。
けれど火神君のブロックを、そのボールはすり抜ける。


「なっっ!?」
『本日、大会はここで中止とします。つきましては…』
「じゃあな。次会うとしたら、」
「冬だな。次はお互いユニフォーム着てやろうぜ」
「こりないなー。前あんだけやったのに…」
「…まあな」


紫原君は、多分木吉先輩とは相性が悪いだろうな。
プレイスタイルと言うより、性格が。

紫原君が兄さんの頭をなでる。


「じゃーねー、黒ちん」
「やめてください」
「あ、ゴメン。怒った?」
「紫原君。…今でも、やっぱりバスケはつまらないですか?」
「その話、それ以上するならヒネリつぶすよ、黒ちんでも」


……そうか。
紫原君の考えは、変わってないんだ。


「楽しいとか面白いとか、そーゆーカンカクわからない。けど勝負に勝つのは好きだし、向いてるからやってるだけじゃダメなの?」
「……」
「ま、反論あるなら聞くよ。ウインターカップで。千瀬ちんも、またね〜」
「……はい」








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