■ 囚われの数日間について 3

 調子に乗って二本挿しとか異物挿入とかされたらどうしよう。モンスター相手の異種姦とか猟奇系な展開が見えてきたらさすがに殺る気で逃げよう。
 なんていう、当初抱いていた"最悪の事態"への気がかりは今となっては本当にただの杞憂だったと言える。


 むしろ。
 つい「もっと激しく」なんて口走りそうになるくらいに彼らは優しく丁寧だった。


 裂ける破れる刺される。そんな流血沙汰へのフラグなど早々に消え失せていた。
 たっぷりと潤い、刺激を待ち焦がれるほどに慣らされてからの挿入にあられもない声を上げていると、控えめな様子でペニスを顔面に差し出され舐めてもらえないかと下手に出ての"お願い"が降ってくる。
 勿論この状態では体勢的にもキャパ的にも苦しい。
 それでも、欲情した目を揺らしながら律儀に了承を得ようとする男の姿は酷く気分のいいものだったので……。答えの代わりに、少し頑張って上半身を上げて、男の膝に凭れ掛かるように股間に顔を埋めてあげることにした。するとまあ、なんとも気持ちよさそうな声が耳に届きこれまた私の心が満たされる。ちなみに咥えることへの嫌悪は全くなく、むしろ次から次へと唾液が溢れている次第である。さらに付け足すと、この時あぶれた三人目は始終私の胸を触りながら自分の手を私の手に重ねてペニスをしごき続けていた。ごりごりと手を灼く硬さと熱に、これまた嫌悪感など微塵も湧かない。
 もはやもう誰のものかわからない手が、胸から背中から腰から太ももや膝や足の裏まで体中を撫でまわる。その度にぞわぞわと甘い快感に身をよじれば、すかさず別の手が胸を揉みしだき、敏感な先端を刺激し、鋭い愛撫で私からさらに声を引き出そうとする。凶暴な筈のペニスは、けれどもたっぷりと蜜を溢れさせる局部には快感だけを与えていく。
 G.Iに来てから当然ながらそういうことともご無沙汰だった身体にこの刺激は甘美すぎた。思いのほか優しい男たちに、もう随分ほだされていた私がついに観念してしまうには充分すぎるほどに度を越した快楽だった。


 突かれながら口いっぱいにほおばり、熱く硬くなったものを擦る。
 そんな異常な状況に加え、ペニスが触れるそれらの箇所が熱くて気持ちよくて、あっという間に感覚は麻痺して何が何だかわからなくなってくる。朦朧とする意識の中では触れ合う熱の気持ちよさだけが強調される。
 膣への刺激に追い立てられるように口と手の動きも激しさも知らずと増していく。そんな積極的な私に答えるように、彼らのものもより質量を増しやがて各々が限界へと登り詰めていく。
 小さく低い声を合図に口腔にどろりとした苦味が放たれた。反射的に少量は嚥下したものの結局その量にむせて咳き込んでしまう。と、その姿にも興奮したのだろうか。握り直された手のひらにごぷりと熱い放出があった。気がつけば、びくびくと跳ねる先から溢れたぬるぬるが手のひらを濡らすのをうっとりと見つめていた。
 そんなわけで、次第に落ち着きを取り戻す気管と鮮明になるねっとりとした感触に引きずられるように今しがた起こった事態を把握しぼうっと余韻を堪能しかけたのだが──ここでようやく下半身を襲っていた振動が止んでいることに気が付いてしまう。身体の一部を私に埋めていた男は変わらずそこに居る。けれど、微動だにしない男の先端は私の体内でひくんひくんと弱弱しく動くのみであり……。

 ……咳き込んだ拍子だろうか。どうやら、私が夢中になっているうちに中の彼はあっけなく達してしまったようだ。……っていうか、嘘でしょう。なんて勿体ない。おいおいここに来て減点ものの失態じゃないか?

 放出という絶好の瞬間を全く味わえなかったおかげで、私の昂りだけがすっかり取り残されていた。
 まさか襲った女が欲求不満状態にあるなどさすがの彼らも思い至らないらしい。だからだろう、私の内心を知らない彼らはとても満足そうに余韻に浸っているように見えて……それがさらに悔しさを煽る。ちなみにこの不満はその後ずるりと引き抜かれたペニスの、その先の袋に溜まる液量を見て益々強くなった。あれだけの量が奥に出される感覚ともなれば、さぞ気持ちよくなれただろうに……。


「ご、ごめんな、出しちまって。大丈夫か、水飲むか」
 口腔内射精を決めた当人はおろおろとティッシュと水を差し出した。
「うわ、身体にまで飛んじまってる……悪かったな、ちょっとこするぞ」
 手のひらばかりか身体とシーツにも飛沫を飛ばした当人はこすると言いながらも実に優しい力で拭き取った。
「おおーすげぇ量。ふぅ、久しぶりにこんなに出したなー」
 膣内で達した男は、外したゴムを確認して一人満足した後あっさりとゴミ箱へ捨てた。え、そんなあっさり? 捨てちゃうの? それ使ってどうかとかないの?

 渡されたグラスに口をつけてこくこくと喉を鳴らしながら経過を見守るものの、一向にお掃除フェラや二回戦の要求はみられない。

 いや、だからね、あんたらが満足しても私は満足してないわけで。


  ***


 私だってもっとしっかり気持ちよくなりたいわけで。満足したいわけで。

 予想していた凌辱シナリオをどこまでも外してくる男たちの出方を探るべく観察していると、その視線をどう誤解したのかバラが大丈夫かと髪を撫でて案じてくれた。ふむふむなるほど。最初の態度が最悪過ぎたゲンスルーは論外として、残る二人ではバラの方が取り入る隙がありそうだ。なんて打算が働くが、とりあえず今は私自身の快楽を優先させることにする。
 撫でる手の動きに合わせて目を閉じて、くたっともたれ掛り胸に顔を擦り付けるとバラの目が揺れた。汗ばんだ肌は逞しく、しっとりとしていて非常に心地いい。男の汗の匂いを胸いっぱいに感じながらうっとりと見上げる。

「お? どうした?」
「……」

 答えずに、そのまますりすりと身を寄せれば次第にバラの下半身が反応を見せる。まあ、そうでなくては沽券に関わる。裸の女に擦り寄られているのだ。一回出したくらいならまだまだこうなって当然でしょう。
 思惑通りの反応に気を良くして、その筋肉質な二の腕をそっと撫でて甘えるように吐息を漏らす。そのまま傍らのサブへと視線を移してしばし見つめれば……ほら完了。二人ともすっかりその気が戻ってきた。
「あー、オレはいいわ。次はお前らだけで楽しめよ」
 あっさりと手を振り椅子に戻るゲンスルーに遠慮する様子もなく、バラが動いた。相変わらず受け入れ準備は万端の浅ましいそこに彼自身をあてがう。その性急さが好ましい。
「いくぞ」
 腰が砕けそうな低い囁きの後、バラのペニスが肉を掻き分け押し入って来る。先ほどまで入っていたものとは違う長さと当たり方に息が詰まる。これはこれで、いいモノをお持ちでいらっしゃる。期待に胸と膣がじんじん痺れる。だが、そんな一方でサブはどうかというと、空いたお口を狙う事もなく先ほどと同じく胸へと手を伸ばしていた。

 てっきりあのまま激しくなるのかと思いや、バラはすぐに動きを速めることは無かった。突き上げる代わりに後ろから抱きかかえるように私の身体を起こすと、穴を味わうようにゆっくりと埋めた自身で丹念に掻き回したのだ。ああ、これもいいかもしれない。そんな緩やかな刺激で私をすっかり蕩けさせてくったりさせた後、ようやく動きに激しさが見え始めた。
 今度こそ……ああでも、いっそう激しく動かれる前にしておかなくてはいけないことがある。目もくらむような快楽を期待しながらも身をよじり、たぷんたぷんと胸を揉むサブに視線を合わせた。
「……あの、舐めましょうか……?」
 控えめに申し出ると、サブは顔をあげ困ったように口元を歪めた。
「ありがとう、でも、その……オレはいいんだ。……えーと。その、そっちよりこっちの方が……」
 ……ああ、挿入よりもお口よりも胸が好きなタイプというわけか。その歯切れの悪い返事に数秒考え理解する。この手の性癖はお相手したことこそないが聞いたことくらいはある。それならと、おいでと呼び込むように腕を広げれば安堵の笑みを浮かべたサブがいそいそと胸へと戻ってきた。乳房を揉んでいるだけなのに、ペニスはもうはちきれそうだ。
「……最後は、いっぱいかけて下さいね」
 多分こういうのが好きかもなぁと思って囁くと、やはり大当たりだったようで。サブの驚いた顔と一層の隆起を見て、私はまたにっこりと笑みを浮かべる。もういい年の男なのに、こうも素直に求められるとなんだか可愛いなあとか……そんなことを思えてしまうから不思議だ。
「さてなまえ、そろそろいいかな」
 バラの腰がぐいと引かれ先ほどより深く挿入された。漏れ出る甘い声を了承と捉えたのか、次第に腰の動きも激しくなっていく。けれどここに来てもなお、自身の快感を追うだけではなく緩急を付け私のいいところを探り攻略するように腰を使う余裕をみせるのがこの男なのである。おかげで私はもうひっきりなしに甘い声を出し、蜜を溢れさせることしか出来なくなっていた。頭も身体も外も中もぐちゃぐちゃで控えめに言って最高に気持ちがいい。
「……うっ」
 そろそろ、という合図と共に一段と激しくなった動きは先ほどと同じく小さな声と共に終息を迎えた。薄い袋越しにびゅくびゅくと爆ぜる熱い液体と放出に震えるペニスの感触は待ち望んでいたもので、それだけで達してしまいそうになるほど気持ちがいい。……というか、まあ、実際に達したのだけれど。軽くなんてものではなく、しっかり念願の絶頂を味わったのだけれど。

 で、まあそんなこんなで落ち着いたのか、大きく息を吐いてバラが退けば後に残るのは胸を弄りながら自身を擦って登り詰めているサブである。ちなみに一緒に握っていた筈の私の手はずいぶん前にお役御免が告げられている。

 見れば、てらてらと雫が伝うそれは放っておいてもすぐに限界を迎えそうだ。けれど、ここまで胸と手だけできた健気な彼に少しサービスしてもいいかなと気まぐれが顔を覗かせる。達したばかりの重い身体をゆっくりと起こしてそのまま這うようにサブにのしかかった。
 一瞬きょとんと私の顔を見つめたものの、すぐにこれから何をされるのか予想が付いたようで髪にかかる息がいっそう荒くなる。期待の色を浮かべるサブに目を合わせ、えいとペニスに自分から胸を押し当てれば熱いペニスがびくりと震えた。ぐいぐいと押し当てながら次第に谷間へとペニスを誘導し、最後にぎゅっと挟んで動かせば気持ち良さそうに熱く重い息が吐かれる。どうしよう、なんか大きい犬を相手にしているみたいで本当に可愛いぞ。胸だけでここまで幸せそうな顔をされたのは正直初めてだ。女冥利に尽きる反応に気を良くして、脇を締めてぎゅむぎゅむと左右から圧迫したならばすでに限界近く昂っていたペニスはあっさりと精を吐き出した。
 二度目だからか最初よりいくらかさらさらした液体は、身を起こす際にほとんど胸を流れサブの股間へと落ちてしまった。ので、今度は私が自分の身体と男を拭いてあげる。「さっきと逆だ」と笑いかけると大変に可愛い笑顔が返って来た。こんなに喜ばれると奉仕の甲斐もあるというものだ。
 うん、可愛がられる素質があるのに外道なのが不思議だよ。勿体無い。


 さて。男たちの気も済んだようだし、私もひとまず満足したし、いつまでも素っ裸というわけにもいかないな。
 そう思ってベッドの隅に置かれていたバスローブへと手を伸ばし、もぞもぞ羽織ろうとしているところでスプリングが軋んだ。嫌な予感に振り返るとすっかり傍観モードだったはずのゲンスルーがいた。
「なぁ……いいだろう?」
 勿論しっかりと欲情した瞳をしていらっしゃる。あーあ。そんなことを言われましても、私は今凄く満足していていい感じだというのに。どうせならさっきおいでよ。ちょっとあなた間が悪いですよ。
「おいゲン、今はさすがに無茶だろう」
「なまえも休ませてやろうぜ」
「んなこと言うなよ。あんなの見せられりゃ堪んねぇだろうがよ。なぁなまえ、お前もまだまだいけるだろ?」
 バラとサブの制止すらこの男は聞き入れない。駄々っ子かこいつは。とんだ俺様だ。さすがに身体が重い。できれば休みたい。だが……。

「ううぅ……。もういっぱいいっぱいなので、あんまり激しくしないでくださいね?」

 囚われの身としても、快楽の虜としても、断るという選択肢など存在しないのだ。


 ああ、なんてかわいそうなわたし!



(2014.01.12)
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