レイン・アーヴェルクライン
荒涼とした街にアラガミの叫び声が轟く。
巨体を揺らして叫びをあげたそのアラガミは地面に倒れた。
「よし、いっちょ上がりだな」
チェーンソーのような神機を手にした青年が、煙草を吹かす。
「レインの動き、良かったわ。そろそろ慣れてきたんじゃない?」
遠距離型銃を持ったボブ髪の女性が、アラガミのコアを取り出している銀髪の神機使いに声をかけた。
「やった! ありがとうございますサクヤさん、ソーマにも言ってやってくださいよ」
「あら、また喧嘩でもしたの?」
「まだ私のこと認めてくれないんですよ」
高く結った銀髪が不満気に揺れて、フードを被った少年を横目で見る。ソーマと呼ばれた少年と同い年の少女が神機を肩にかけて膨れっ面をした。
「あー、なんだ、仲が良いようでなによりだ」
フーっと煙を吐きながら適当にそう評する隊長に少年が直ぐさま否定すると、隊長の携帯端末に緊急の連絡が入った。
「あ? なんだって」
「どうしたの、リンドウ」
「外部居住区にアラガミの群れが突っ込んで来やがった」
端末をポケットに入れてまた煙草を吹かす。彼の言葉に他の三人は無言でなすべきことを理解した。
「さっさと戻ってビールでも飲みたいねぇ」
「当分お預けよ」
「ソーマ、今度こそ一緒にご飯食べようよ」
「断る」
各々神機を携えてヘリまで向かう。
助けを求める人々を救うために。
* * *
新型神機使いとして極東支部に配属された新米ゴッドイーター、空木レンカは唇を噛み締めた。
ここ、外部居住区を襲ったアラガミを倒すために周りを振り切って助けに来たはいいが、訓練生の彼にはあまりにも荷が大きすぎた。
負傷したゴッドイーターを庇いながら、真新しい神機を振るう。が、簡単に神機が吹き飛ばされて絶対絶命の状況に陥った。
「くそっ!!」
吹き飛ばされた神機に手を伸ばした瞬間、彼を狙って口を大きく開いたザイコードを上空から落ちてきた少年が叩き潰した。
少年が被ったフードが勢いで翻り、冷ややかな瞳と目が合う。次の瞬間飛んできたヘリから女性が勢いよく飛び降りて、辺りのアラガミを銃で吹き飛ばした。
「生きてる、新人君!?」
地面に着地したボブ髪の女性がトリガーを引く。助けられたレンカが新たなゴッドイーターに驚いていると、フードの少年が呟いた。
「ようこそ、クソッタレな職場へーー」
ぼさっとしてんなと言われて、レンカが顔をあげると少年の背後にコンゴウが大きな腕を振り上げていたーー。
「おいっーー!!」
「まーたそんなこと言ってソーマ、もしかして新人全員に言ってたの?」
頭上から銀色の光が落ちて、コンゴウの目に神機が突き刺さった。ヘリから降りてきた少女が引き抜いた神機でコンゴウを切り裂く。
「うるさい」
自分を襲ってきたコンゴウを、頭上から降ってきた少女が倒したことに驚きもしないで可愛げない言葉を少年が発する。
「歓迎するよ、後輩君!」
少年と少女が次々とアラガミを倒していくと、煙草を吸いながら神機を軽く振るう青年が現れた。
「ソーマ、お前は親友助けてやれ」
「親友じゃない」
そう言いながらも、腹部から血を流した赤髪のゴッドイーターを助けに行く少年に青年が「素直じゃねぇな」と呟く。
「レイン、その新人を任せた」
「りょーかいです、リンドウさん」
「リンドウ……!?」
少女の言葉にレンカがある部隊の名前を思い出す。生存率が高く、強大なアラガミの討伐記録も他部隊を上回るという。その部隊の名はーー。
「第一部隊……」
軽々とアラガミを倒していく第一部隊のメンバーを呆然と見つめる。と、雑魚を倒した銀髪の少女がレンカに振り向いた。
「後輩君は私の側から離れないでね」
そう言った瞬間に、剣状態の神機が変形して銃に変わる。
「!! 新型っ!?」
自分と同じ新型の神機にレンカが目を見開く。
「君も新型なんでしょ?」
レンカの神機を見た少女が微笑む。
「私の名前はレイン、レイン・アーヴェルクライン。足手まといになりたくないなら、私の戦いを見て吸収して」
風で銀色の髪が翻って真紅色の瞳が煌めく。
遠い背後から巨大なアラガミの咆哮が響いた。
親玉の登場にレンカは「嘘だろ」と呟き、少女を見る。
レインと名乗った少女の瞳に恐怖は無く、力強い瞳がアラガミを見据えた。
【レイン・アーヴェルクライン】
先輩新型神機使いにレンカは腹を据えるしかなかった。
真新しい神機を握りしめて、アラガミを睨むように見つめる。
少年と荒ぶる神々の戦いが始まる。
生きるか死ぬかの戦いの中で彼は何を見つけるのか、少女は彼を見て小さく笑った。
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