ねこににゃりまして




カァカァカァ

「ずいぶん可愛い姿になっちゃったね」
「にゃぁ……」


夕暮れ時、路地で1匹の猫が白髪の青年の腕の中で悲しげな声でないた





今から2時間前
私は車での移動中に急遽入った任務の説明を受けていた

「前任者が行方不明に?」
「はいっス、通話中『呪霊、呪詛師の姿はないが猫が異常に鳴いている』そう言った後音信不通に」
「それで現場にはその方のスマホだけが落ちていたんですね」
「そうっス、窓の簡単な事前調査のハズがそうは言ってられなくなったので呪術師の派遣となったっス」
「なるほど…分かりました、では私はその猫の声が関係してる可能性を元に調査、行方不明の方の捜索、呪霊、呪詛師の仕業ならその対処ですね」
「申し訳ないですが何も情報がないので無理はしない様に気をつけてくださいっス」
「はい!それではその路地に事故歴や何かないかだけ引き続きよろしくお願いします」
「了解っス!それじゃ一旦高専に戻るので何か分かれば連絡するっス!」

新田さんと話している間に現場近くまで着いていた
どの辺から関係しているかわからない、ここからは車を降りて件の路地まで歩いて確認しよう

「じゃあ新田さん、この辺で降ろしてください」
「はいっス、それでは夢路さんも何かあれば連絡してくださいっス」
「はい、それではまた後で」

キィ、バタンッ


車を降りて新田さんが見えなくなるのを確認してから私は現場まで歩き始めた
そこは静かな住宅街、猫の姿どころか微かな鳴き声も聞こえてこない
確かにこの中で猫が異常に鳴き出すのならなにかしら原因があるはず…
考えながら現場の周りを見て回ったが特に何も収穫はなかった
周囲には何も痕跡はない、これはその路地だけが何かあるのかな
私は気を引き締め問題の路地に向かった



「ここか、うーん確かにぱっと見はなにもないかな…ん?」

そこはなんの変哲もない路地だった
でも気になる物がひとつ、電信柱のすぐ下に何か黒い物が置かれていた

「なんだろう」

私は周囲を気にしつつ近づきその物を確認した

「…置き物かな、黒猫?うーん、猫に関係してる物ではあるけど…誰がこんな所に置いたんだろ、不法投棄かな」

残穢も特になくなんの気配も感じないただの置き物だった、今回のことと関係あるかはまだわからないが何故か惹かれる物がある、私はその置き物を気にしつつも他にも何かないか探してみることにした



30分後



「やっぱりこの置き物意外には何もない、でもこの子も特に何かある様に思えないのよね」


やはり置き物が気になって眺めていると目が光った様な気がする
何故か警戒しなくてはいけないはずなのに私はその子の頭を撫でていた

〜♪
連絡が入りハッとして手を離す
急いで通話の相手を確認した、新田さんだ

「もしもし新田さん?」
『もしもし、すみませんっス、そこの路地の事で連絡したっス』
「あ、何かわかりました?」
『それが申し訳ないっス、そこの路地に関しては事故歴もそれ以外にも特に何もなくて手詰まりっス』
「いえいえ大丈夫です!と言うことは呪霊の可能性も捨てきれませんが、誰かが故意に何かを起こしている可能性も高くなりますね、そういえば窓の方って何時ごろ通話をしたいんですか?もしかしたら時間も関係あるかも」
『えっと確か夕方ごろ、今とそう変わらない時間だったはずっス』
「わかりました、では今から日が暮れるまでここで待ってみたいと……あれ?」

ミャー…ミャー……

『夢路さん?どうしたっスか?』
「いえ、今猫の声が…」
『えっ』

ミャーミャー……ニャーニャー……ニャ–オニャ−オ……

猫の声が多くなってる…?
異常に気付いた私は急いで周囲を見渡す
でも何もない…?どこ、どこなの?

『大丈夫っスか!?』
「今のことろ何もないです、それどころか声以外何も…っ」

その瞬間呪力が爆発したかの様に急に現れた
発生源は…

「猫の置き物!」

私は急いで置き物と距離をとり様子を見る

『置き物?』
「はい、この路地に黒猫の置き物があったんですがさっきまで何もなかったのに急に呪力を帯びました!」
『もしかしてそれが!』
「おそらく原因です!」

ニャーニャー…ミャオ…!ミー!ニャオミャオ!

「っ!」
『〜〜さ!だい〜〜ス〜!!!』

頭に響く猫の声、脳内を反響し新田さんが何を言っているかもわからなくなってきた
そして置き物の目が光る、その瞳から目が離せない

ミャオ!ニャオ!ニャーミー!!

「ごめん悟くん、約束……」
そこで私は意識を失った…







「大丈夫っスか!聞こえるっスか!!……切れた」


高専の廊下を伊地知と歩いていると女性補助監督の大きな声が聞こえた
あれは確か…

「新田さんですね、なにかトラブルでしょうか」
「あーそうそうその子、ちょっと普通の状態じゃないね」
「すみません、少々確認して来ます」
「はいよ〜」

伊地知が近寄る
こう言う時は大抵呪術師に何かあって僕に流れてくるんだよね〜
今日久しぶりに夢子と夕飯食べに行く約束だったのにな
そう内心悲しんでいると聞き逃せない名前が聞こえた

「えっ!夢路さんと連絡が取れなくなった?!」
「ちょっとどういうこと」

すぐそばに行き聞き返す
殺気だった声に2人が怯えた顔をしたが今はそんな事どうでもいい

「夢子の名前が聞こえたけど説明」
「えっあっはいっス!それがっ」

状況を聞き場所を確認してすぐ伊地知を引っ張り来た道を引き返す

「伊地知今すぐ現場向かえ、10分で」
「じゅっ10分は無理です!」
「お願いしてるんじゃない、行けって言ってるんだ」
「ひぃ、わ、分かりました、できるだけ頑張りますっ!」

こんな時動線を引いておかないとすぐに飛べない移動手段に苛立ちを覚える
この世界は死に近い、そんな事誰よりも分かっている
でも今だけはただあの子の心配をさせてほしい

「無事でいろよ」






「にゃ…」

私…生きてる?
あの後気を失っていたのか、でもまだ日は出てるからそんなに時間は経っていない

「そうにゃ!置き物!!」

えっ?
猫の置き物を思い出しそっちに顔を向け声を出した
だか聞こえたのは猫の鳴き声…
そっと顔を下ろすと手元は丸いふわふわ、そしてお尻の方から揺れる長いもの、おまけに音が上の方から聞こ何故か動く耳………

「ニャー!私猫になってるにゃ?!」

信じられない状態に少し放心してしまったが原因であろう置き物を思い出し改めて確認する
そこには気絶する前と変わらない黒猫の置き物が鎮座していた

「どういう事にゃ?確かに何もなかったはずの置き物が今は呪力を帯びてるにゃ」

恐らくこれは呪物なのであろう
なんの効果があるのか分からないがとりあえず人を猫にする事は出来てしまうみたい
調べてもらいけれどこれじゃ連絡も取れない

「ニャー…」

困った状況と簡単に呪物に呪われた自分の身が情けないやらで悲しくなってきた…
その時だった

「いた!夢子!!」
「にゃっ!?」

悟くんが路地の角から現れた

「えっ猫!?………でもこの呪力間違いない、夢子?」
「そうにゃ…」
「なんでそんな姿に…と言うか話し方、ってそれが例の置物か」

そっと私を優しく抱き上げながら置き物を目隠しを外して確認する悟くん

「あーなるほどね、こいつが原因で間違いないわ」
「やっぱりそうにゃのね」
「夢子こついに触ったでしょ、撫でたやつを猫に変える呪具だね、声は身体が変わる時に聞こえるんだと思う」
「にゃるほど、ねぇ悟くん、私元に戻るのかにゃ…」
「問題なし!そんなに強い呪いじゃないから多分3日ぐらいで戻ると思うよ」
「よかったにゃ〜」

戻れるとの言葉に安堵のため息がでる
でもまだ問題は解決したわけじゃない

「それにしても誰がここにこんな物をおいたんだろうにゃ」
「それだね、呪物がそうほいほい落ちてるわけがないし故意にここに置いたと考えたほうがいい」
「それに窓の人もどこに行ったか探さなきゃだにゃ」
「とりあえずこいつを封印して持って帰ろう」

悟くんが呪物に封印を施し、私を抱える腕と反対側に持つ
そして私をまじまじと見てくる

「それにしても、ずいぶん可愛い姿になっちゃったね」
「にゃぁ…」

改めて自分の情けなさに悲しい声がもれた…



2025 03.03

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