AM4:00




「あ!」
「どうしたの?」

 深夜3時。

 明日は悟くんも私もオフ、そのため今日は私の家に悟くんが泊りに来てくれていた。
お風呂も入り、その後お布団の上でイチャイチャした後まったりしているとき、スマホで何気なくネットニュースを流し見していたらそれが目に入った。
それは〇クド〇ルドの幸せセット、それに付属している物の記事だった。
悟くんが私のスマホを覗き込み首を傾げる。

「キミそのキャラクター好きだっけ? 明日から第2弾...第1弾はなにやら問題になってたよねぇ。え、なに明日あの列に並びに行くの?」
「ううん、違うよ。私が気になったのはこっち」

 記事を拡大して悟くんの目の前にもっていく。

「ん? 絵本と図鑑?」
「そう!」

 私が気になったのは話題のキャラクターではなく、おもちゃ以外に選べる絵本と図鑑。
絵本はもともと好きなのだが、クマさんがお料理をしているもので大変可愛らしい。
そして図鑑!その表紙はスナネコでその表情があまりにもツボだった。

「これほしい! ......悟くん私ちょっと行ってくる!」
「は⁉ 今から⁉ 何考えてんの!!」
「だって明日は久しぶりのお休みだけど絶対混む! そしたら次いつ買いに行けるか分からないもの! ドライブスルーで24時間空いてるとこ探せば外歩かなくてすむから危なくないよ?」
「いやいやいや、そういう問題じゃないでしょ? いま深夜2時だよ? 寝よ?」
「? 悟くんは寝ていいよ! 私だけ行ってくるし、うん、それにもうだめ。今欲しい欲がどうしても抑えられないの! それに幸せセットのこと考えてたら小腹が空いちゃった...」

 こうなるともう行くことしか考えられなくなってしまった。
スマホで店舗情報を検索して車で50分ほどのところに24時間ドライブスルーのお店を見つけ、それをベッドの上で固まってる悟くんに見せながら簡単な服に着替える。

「メイクは...マスク付ければいいかな! じゃあちょっと行ってくるね!」
「!! まってまって! 分かったから! 僕も行くからちょっとまってお願い」
「いいよ? 無理しなくて。悟くんも明日お休みだけど普段休めないんだからゆっくりして?」
「キミがいないとゆっくりできまっせん! それにそもそもこんな時間に車と言えど彼女1人送り出すような男になったつもりもありません〜」

 悟くんはちょっと拗ねたような、ちょっと違うような、何とも言えない顔をしながらTシャツの上に薄手のパーカーを羽織る。
どうやら本当に一緒に行ってくれるみたいだ。

「ごめんね」
「謝らない、それに僕もなんだかお腹空いてきちゃったしね」
「うん! ありがとう」
「ん、それじゃ行こうか。車の鍵頂戴」
「あ! そのね、運転は私がしても良いかな? この時間にドライブするの好きなの」
「そうなの? まぁいいけど...もし今後この時間に出かけたくなったら僕のいるときにしてね」
「うん! 次がお休みの日にたまに付き合ってくれると嬉しい」
「まかせなさい!」

 夜も遅いこともあり小声で話しながら玄関を出てしっかりカギをかける。
空はまだくらく人の気配も少ない、いつもは出かけない非日常の世界。
さぁ楽しいドライブの始まりだ。





ブウゥゥゥン......

「ねぇ悟くん、音楽かけてもいいかな?」
「いいよ〜」
「ありがと〜」

ピッ 〜♪

「お、結構ノリがいい系だね」
「うん、最近ハマってるの。この時間は静かだけどノリがいい曲が好き」
「時間によって違うんだ」
「そうだよ〜。あ、もし眠かったら遠慮しないで寝ていいからね」
「キミは助手席で寝ても気にしないタイプ?」
「あぁ、中には気にする人もいるみたいだよね。私は私の運転で安心して寝てくれるんだなーって全然気にしないタイプだよ。むしろ眠いなら寝て―って思う」
「僕もキミ相手なら同じタイプー、だから僕が運転するときも眠かったら遠慮しないでね。これが七海や硝子。あぁ、後輩の術師と同期なんだけどさ、とかだったら多分めっちゃ話しかけてからかうと思うけどね。きみは特別枠!」
「ふふ、ありがとー。七海さん? 術師さんならそのうち会うこともあるかもしれないかな」
「かもね、キミは窓だけど会わない可能性はゼロじゃないからね。でも七海のやつ一級だから、あいつが出てくる現場にキミが居合わせることはないほうが嬉しいかな」
「そっか〜、私もさすがに一級がでてくる場所は怖いかな」
「でしょ? まぁ腕は確かだから祓い損ねる心配はしてないけどね。少しでも危険な事にキミを合わせたくはないかな。まぁ! 僕がいるときなら危険なんてないから良いんだけどね!だって僕「最強だもんね」

 信号で止まったところで顔を見合わせ車の中なのに静かに笑いあう。
そのあとも時折会話をしていたが、そのうち返事が聞こえなくなりそっと隣を見るとそこには小さな寝息をたてる悟くん。

「...わがままに付き合ってくれてありがとう」

 目的地まではもう少し、今は音楽と小さな生きてる音を楽しみながら私はゆったりと車を走らせた。





 ポーン... 『目的地に近づきました、案内を終了します。』
車内に機械の音声が響く、無事お店に着いた。
一旦駐車場に停めてスマホを取り出す。

「何してるの?」

目的地に着く少し前に起きた悟くんが覗き込んでくる。

「クーポンだよー、〇クド〇ナルドに来るときはいつも使ってるの」
「へぇ、僕使ったことないかも。どうするの?」
「あぁ、確かに悟くんがクーポンとか使うイメージないね。このお店で使う方を押して、出てきた番号を言えばいいんだよ」
「なるほどね」

画面を見やすいようにもう少し悟くんの方に傾けながら説明する。
セットは2人共チーズの入ったバーガーにした。

「よし、じゃあ準備できたからドライブスルーに入ろう。あ、ドリンクは何がいい? 私は〇ァンタのメロンかなぁ」
「うーん、僕は無難にコーラにするよ。ゼロのほう」
「はーい」





「こちらご注文のお品物です、ありがとうございました!」
「ありがとうございます」

 無事品物を受け取った私たちは駐車場に一旦停め直し食べ物のセッティングすることにした。
その際図鑑と絵本が問題なく入っていることを確認する。

「良かった! 付き合ってありがとう! 嬉しい! 可愛い!!」
「どういたしまして、はいドリンク」
「あ、ありがとう! それにしても本当におもちゃ人気あるんだね。先にもうおもちゃが無くて過去に配ってたおもちゃになるって説明あったもんね」
「ね、僕たちの目的はおもちゃの方じゃないから問題ないんだけどね」
「ねー」
「これで目的は達成だね、バーガーとポテトどっちが先?」
「ポテトー、バーガーも受け取っとくね」

 セッティングが終わると再度車を走らせる。
今は午前3:50外が少しだけ藍色に染まってきていた。

「私さ」
「ん?」
「私、今の時間が一番好き。人の気配もなくて、そこまで空も明るいわけじゃないけど暗くもない。暁までまだちょっとあるこの時間、このなか車を走らせるの大好き」
「...そっか、この時間が好きなのは、ちょっと分かるかな」
「悟くんも? そっか、それなら嬉しいな。曲もね今みたいな時間の雰囲気の曲が好きなの」
「だからさっき店から出るとき選曲が変わったんだ、ドライブって曲選びも重要なんだねぇ」
「私は、そう思うよ」

ブウゥゥゥン...
〜♪

「あぁ、終わっちゃうね。この時間って10分から15分しかないから...ちょっと寂しいな」
「...僕はこの後の時間も好きだよ、だって今日もキミと朝を迎えられたからね」
「! うん......ありがとね」

 ばれてたのかな...
今日実はちょっと元気なくて、図鑑も絵本もほしいのは本当だったけどそれはただ車を走らせたいだけの口実だった。
何かあったわけじゃない、むしろ悟くんとも過ごせて幸せな日だった。
でも、それでも時折ふと無性に寂しく感じるときがある。贅沢な悩みだと思うけどそれでも止まらない感情がある。
でも、悟くんはそんな私の感情を見透かしてたのかな。

「さて、引き続き安全運転で頼むよ〜? 帰ったらお昼までゆっくり寝て午後は出かけよう。昼をどこかで食べるのもいいよね」
「うん、いいね。ご飯の後はアロマキャンドル見に行きたいかも」
「お気に入りのキャンドルそろそろなくなりそうだもんね、それじゃ買って帰ってきたらキャンドル着けてのんびりしよう」
「...悟くん、本当にありがとう」
「どういたしまして」

 外はもう先ほどまでの静けさがなくなり、鳥が鳴き車が走り出し、人が動き出す。
どこからかきた寂しさはもう私の中のどこにもなく、今日も1日が始まる気配を感じながら私たちを乗せた車は光の中をゆっくり走る。
今度はただ暖かな温度を心に宿しながら...


2025 05.24

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