プロローグ
Prrrrrr…Prrrrrr…
ニューヨークのマンションの一室で電話の着信音が鳴り響いた。シャワーを浴びた稚彩希は髪を拭きながら受話器を取った。
「もしもし?」
「やぁ、稚彩希。久し振り。」
電話を取った稚彩希は、掛かってきた電話の相手に驚いた。
「優義兄さん?!どうしたの?」
相手は姉の夫、優作だった。
「元気そうだね。」
「元気だよ。義兄さんは?調子はどう?」
「変わらないよ。有希子もね。」
「ホント?姉さんがイタズラして迷惑かけてない?」
「有希子のイタズラは可愛いものだよ。
迷惑だなんてとんでもない!」
「ホント?なら、良かった。それで?どうしたの?」
「実は稚彩希に頼みがあるんだ。聞いてくれるかい?」
「義兄さんが僕に頼みって珍しいなぁ。」
「実は新一のことを頼みたいんだ。」
「新くん?」
「少し厄介な事になっていてね…。」
「厄介な事?」
稚彩希は優作の話を詳しく聞いて眉を潜めた。
「ホントに厄介な事になっているね。」
「頼まれてくれるかい?」
マンションの窓から外を眺めながら稚彩希は答えた。
「良いよ。ちょうど日本に行く予定もあったし、そんな厄介事なら力になってくれる奴がいる。

………日本に帰るよ。」

2016.6.26



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