第1話 未だ見ぬ『保護観察官』
〜コナン視点〜

数日前に起きた江戸川コナン誘拐事件。
それは、日本に一時帰国した両親が、
阿笠博士から事情を聞き俺のことを心配して
アメリカに連れ帰る為の芝居だった。
だが、俺はまだ日本を離れる訳にはいかない。
そう言った俺に父さんは1つの条件を出した。

それは、俺に保護者を付けること。

保護者と言っても、何も一緒に住む必要はない。
定期的に父さん達に俺の様子を報告してくれる人物が俺の近くにいること。
それが父さんの出した条件だった。
博士ではダメなのかと聞いたが、博士も忙しいだろうと却下された。
近々、そいつを寄越すと言った父さんの笑みに俺は何故か嫌な予感がしていた。





あれから数日が経過するが、俺の周囲にそれらしき人物が現れた様子はない。
そんな時、毛利探偵事務所に阿笠博士から1本の電話が入った。
「伊豆?」
「そうじゃ、伊豆のホテルに2泊3日、しかも宿泊費はタダ!」
「アハッ、行こう。行こうよ!」
「あぁ、タダってのが良い。」
電話口の博士の言葉を繰り返すと、蘭もおっちゃんも話に乗ってきた。
だが、うまい話には裏がある。
突然の伊豆旅行の話で盛り上がっている蘭とおっちゃんを横目に、
俺は博士に本当にタダなのか聞いた。
「あぁ、新一くんならタダ同然じゃ。」
「俺なら?」博士の言葉に俺は引っかかりを覚えた。
「まぁ聞け。
学者仲間の1人からあるツアーに申し込んでみないかと誘いがあってのう。
ツアー名は『伊豆ミステリーツアー』!」
「ミステリーツアー?」
「早速わしと奴と孫の3人で申し込んでみたら、見事当選!!
しかしそいつの孫娘が風邪をこじらせてしまってのう。
やむなく君らに譲ろうというわけじゃ。
参加者は君らも含めて7組11人、宿泊費は半額。
但し他の8人の中に紛れ込んでいる主催者を見事見つけ出すと
宿泊費はタダとなり、
おまけにあるプログラムが手に入る。
ま、君には必要のないプログラムじゃがな。」
「で?どうやって見つけ出すんだよ。その謎の主催者とやらは。」
「心配するな、参加者の名前と部屋番号は全員に知らされておる。
それにその主催者はある人物に扮してツアー中に何度か事件を起こすらしい。」
「ある人物?」
「そう、君もよく知っている小説の登場人物。その名は闇の男爵!」
「ふーん。それより博士。
俺、博士に聴きたいことがあるんだけど…。」
「何じゃ?」
「例の保護者とやらは、どうなっているんだよ。」
俺はちょうど良いと、『保護観察官』について
博士が何か知っているのでは、と考え聞いてみた。
「あぁ、仕事で予定を遅らせるそうだ。
日本で面白い企画があるから、それが終わってから米花町に引っ越してくると、
優作くんから聞いておるぞ。」
まぁ、そう焦るなと博士は言って電話を切った。
ちぇっ、俺の気も知らないで…。
だが、蘭とおっちゃんの嬉しそうな様子を見て、俺は伊豆旅行に思いを馳せた。

2016.6.26



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