第4話 心配と安心
〜稚彩希視点〜
日本で優義兄さんの小説、闇の男爵シリーズの
ミステリーツアーがあるとインターネットで知り、
申し込んでみたら当選した。
せっかくだから羽を伸ばそうか、と考えていた矢先に、
知らされた甥の身に起きた悲劇。
頭を殴られ毒薬を飲まされたという事態に背筋が凍り付いた。
電話での義兄の様子は落ち着いているように聴こえたが、
姉夫婦は甥を、時々悪戯を仕掛けておちょくってはいるが、
心から愛している。
そんな2人が、危険な状況にいる息子を1人、
日本に残してくることがやはり心配だったのだろう。
生まれた時から弟のように可愛がってきただけあって
甥のことが心配だった。
だから、この機会に違う視点で仕事をしても良いと思い、
義兄からの頼み事を請け負った。
だがな、新くん…。


お兄さんはこんな事態になっているなんて聞いてないぞ!!





食事を終え、闇の男爵突き止めようと小さな探偵が
レストランで聞き込みをしている最中を捕まえてラウンジへ向かった。
現在の保護者となっている小五郎くんには
久々の再会だから最上階のラウンジへ2人で行くと伝えた。
上条さんを口説くところだったから、
軽くあしらわれてしまったけれど。
「で?」
新くん、もといコナンくんが何の用だと言わんばかりに睨んでくる。
俺は首を傾げた。
「何だって、こんなところに稚彩希さんがいるんだよ。」
「何で、ってツアーに応募したら当選したからだよ。」
「父さんの差し金じゃねぇのかよ?」
「あぁ、確かに優義兄さんに君のフォローを頼まれたから
しばらくは日本に滞在するよ。」
「監視じゃねぇの?」
コナンくんは不機嫌そうに聞いて来た。
まぁ、監視なんて気持ちの良いものではないから仕方ないと苦笑いした。
「監視じゃないよ。
確かに君が1人で危ないことをしていないかとか
周囲の様子だとかを見て義兄さんたちに伝えるけれども、
主な役目は君のフォローだよ。」
「俺の?」
「そんな状態だと色々手助けが必要になるだろう?
義兄さんたちも新くんが心配なんだよ。」
コナンくんの頭を撫でると、少しばかり拗ねたようだった。
「まぁ、工藤邸に滞在する予定だからさ。いつでも帰っておいでよ。」
そう言うとコナンくんは驚いて顔を上げた。
「たまには家でのんびりしたいだろ?
無人だと危ないし。」
やはり自分の家が一番安心するのだろう。
いつでも家に帰れると分かると、
コナンくんは少し安心したように笑っていた。

2016.7.14



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