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「…足立さんだ」


放課後の商店街、警察とは思えないあの寝癖
間違いない、あの刑事だ


「やぁ、なまえちゃん発見伝」

「…新しい言葉を作らないでください」


相変わらずネクタイも曲がっている
この人は鏡を見ないのか
それともこれはわざと気を許しやすくする為の作戦なんだろうか


「そう?言葉ってのは日々変化してくものだと思うよ?」

「その言葉が世間に浸透する事はないと思いますけど
それよりお仕事は?」

「え〜…ほら、今なまえちゃんが来てくれたから
ちゃんと仕事してるよ」

「…つまりサボってたと」


定時にしてはまだ早い
明らかに仕事をしていた様子もないし
何より目が泳いでいた

恐らくサボりだろう


「そういう言い方しないでくれない?」

「他にどう言えと…本当に足立さん、警察っぽくないですよね」

「堂島さんみたいな人のほうが稀だと思うけどなぁ」


足立さんの相棒に当たるという堂島さんはまるでドラマにでも出て来そうな真面目な刑事さんだ

そんな足立さんとは対照的な人が相棒というのは少し不思議だけれど
相方というのはそれくらい正反対な人物の方がお互いの足りない所をフォロー出来るものなのだろうか


「評判は明らかに堂島さんの方が良いみたいですし、やっぱ職業柄真面目な方が印象は良いでしょ…
そんな訳で、ちょっと良いです?」

「ん?」

「気になるんですよ、これ」


距離を縮め
おもむろに赤いネクタイに手をかけた

…これ、結構良いネクタイじゃないの?
普段曲がってるせいで高級感を全く感じさせなかったがさわって初めて分かった
決して安くはないネクタイだ

折角良い物なのに勿体ない…ネクタイを真っ直ぐに直すと本来の価値が少しは分かりやすくなった気がする
あとは…身につける人間次第だろうか


「あぁ〜、ありがとう」

「一応私生徒会の人間なんで」


生徒の代表という立場上
身だしなみというのには人一倍気を付けなくてはいけなかった
そのせいか他人の身だしなみも気になってしまうようになったのだ

正直、あまり良い傾向ではなくお節介だとは承知してる


「生徒会かぁ、真面目だね」

「そうでもないですよ」

「ん?てか今気付いたけど
なまえちゃんなんか今日スカート短くない?」

「あ、気付きました?
そういえば先日は下校直後でしたもんね
私だって女子高生ですから
学校にいる時は校則守りますけど
学校出たらこんなものです」


校則上、極端な短さでなければ咎められる事もないのだが
スカートの短い生徒会長を支持したいか?と問われれば首を縦に振らない生徒も多いだろう
だからこそ学校内ではスカートは折らずにいるのだ

けれどあくまでそれは校内の話で
登下校中まで模範生でいるなんて息が詰まってしまう


「へぇ、生徒会なんてお堅い事してるのにねぇ」

「その言葉、生徒会の部分を警察に変えてお返しします」

「じゃあ僕たち似たもの同士だね」

「…一緒にしないで下さい」


人の目を気にせずにそんな格好を出来る人間と
人の目ばかり気にしてる私が同じな訳がないと

その時は思った