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「ねぇ、君君!」

「足立さん
どうかしました?」


下校時間
校門を抜けた所で話しかけられた
彼の手には手帳
少し嫌な予感がした


「仕事だよ、仕事!
やってらんないよね〜
こんな田舎で事件とかさ」

「…また、何かあったんですか?」

「いやさぁ、天城雪子って知ってる?」

「天城さん?えぇ知ってますよ
彼女有名ですから」


天城旅館の次期女将である彼女は良くも悪くも有名だった
その肩書きだけでも十分すぎるのに天城越えなんて言葉が生まれ浸透している程度には有名人だ


「次はその子が行方不明
本当にやんなるよ…」


行方不明…
そういえば早紀も行方不明になってから…
当時何も協力出来ず自分の不甲斐なさを呪ったが今回もそれは同じだった
その感覚が薄れる暇もなくまた誰か居なくなった?
こんな事、今までなかったのに


「仕事、増えたんですね
お疲れさまです
お力になりたい所ですが、ごめんなさい
学年も違うし私天城さんについては噂程度にしか知らないんです」

「そっか、じゃあ他の子にも聞いて回るか…」

「本当に、すいません…」


…もしまた早紀のような事になったら私はまた自分を責めるのだろうか
何も出来ないというのは想像していたよりもずっと辛い事だと今更実感した

何か起きる度町が
学校が
空気が変わっていくのが怖かった


「あぁ、謝らなくても良いよ!
むしろ呼び止めちゃってごめんね!」

「いえ、私もなるべくお力添えしたいので
何かあったらこれからも話しかけて下さい」

「ご協力、感謝するよ」


そう言って敬礼した足立さんの姿が
失礼だけどなんだか不格好で面白くて
少しだけ肩の力が抜けた気がした


「あまり協力出来てる気もしませんけどね」

「そんな事無いよ
さて、と…
そろそろ仕事に戻るかな」

「頑張って下さい
あ、そうだ」

「ん?」

「私の名前、みょうじなまえって言います
まだ、名乗ってなかったから」

「ああ〜…そういえば」

「私だけ、足立さんの名前知ってるのも不公平なので」

「あはは、じゃあ改めてよろしくね
なまえちゃん」

「えぇ、こちらこそ」


願わくば
次に関わる時
彼は仕事ではない時だと良いな